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ネット上に登場した「e遺言状」 専門家「法的効力なし」
2013年 11月 29日10:13 / 提供:人民網日本語版
「生前に遺言状を作成することは高齢者のすること」というのは、中国の伝統的な考え方だ。しかし最近、30歳すぎの1980年代生まれも、この「遺言書作成者」の仲間入りをしている。一世代上の人々とは違い、1980年代生まれは、遺言状専門サイト、微博(ウェイボー:ミニブログ)、QQ空間などを利用して、電子版の「e遺言状」を作る傾向にある。弁護士は、「若い頃から遺言状を作るという姿勢は、法律意識の高まりを反映しており、大いに奨励されるべきだ。しかし、ネット上の遺言状に法的効力はない」と注意を呼び掛けている。中国江蘇網が伝えた。

○「e遺言状」作成に意欲的な1980年代生まれ

 インターネットの普及に伴い、遺言状専門サイト、QQ、微博などを利用して「遺言状」を作成する人が増加している。若者の遺言状の中身は、ほとんど財産に関することで、遺言状を作成する理由は、「自分に万一のことがあった場合」を心配して、という場合が多い。

 不動産関係の仕事をしている徐さん(31)は、いつも外を飛び回っているため、「自分の身に万が一何かあったら」と常々心配していた。そこで、ネット上で、「自宅と車は両親に、1万元(約16万8千円)以上相当の株券は婚約者に、それぞれ譲る」とする遺言状を作成した。

 ネットユーザー「@ニ子酷」さんは、「このような傾向は、我々若者のライフスタイルと関係がある。将来的に、紙版の遺言状を残す・残さないに関わらず、電子版の遺言状を作るとは良いことだ。だから、自分がQQ空間に遺言状を書くことは、何の問題も無いと思う」とコメントした。

○気運に乗って生まれた「遺言状サイト」
 
 QQ空間や微博に書かれる遺言状のほか、遺言状専門サイトも登場した。その一つに、「あなたの人生のブラックボックス」という名前のサイトがある。ネットユーザーは同サイトで、「オンライン遺言状保管ボックス」を59元(約1千円)で購入する。遺言状保管ボックスの使用期間は1年間。購入者は、各自の利用頻度に応じて、サインインの頻度をあらかじめ登録しておく。登録した時間内にサインインが行われない場合、サイト運営者は当人あるいは当人が指定連絡人にメールあるいはショートメッセージを発信する。もし当人が死亡していることが確認された場合、サイト側は保管ボックスに残された遺言状を指定連絡人に送る。同サイトの会員数は、すでに24万人以上に上っている。
 
 同サイトを創設した李佳氏は、「オンライン遺言状保管ボックスは、従来の正式な遺言状という訳ではなく、情報保管・情報伝達という役割を果たしている」と話した。

 中国のこの遺言状サイトの形式は、英国の「ラスト・メッセージ・クラブ」というサイトに非常に似ている。ユーザーが亡くなると、サイト側は、当人が指定した連絡人に、遺言状の内容や遺産情報などが盛り込まれたメールを送る。同クラブのゴールドメンバーは、入会時に250英ポンド(約4万2千円)の会費を支払う必要があり、中国の会費に比べかなり高い。
○専門家:「30歳での遺言状作成、早すぎることはない」

 30歳そこそこで遺言状を作成するなんて、あまりにも早すぎるのではないか?専門家は、「30歳過ぎは、肉体的・精神的にピークの時期だ。だが同時に、早すぎる『死』のリスクにも直面している。早いうちから遺言状を作成することは、法律に対する若者の意識の高まりを表している」との見方を示した。

 一部の若い人が、万が一の事について意識的に考えることによって、残された家族の間の揉め事を避けることができる。

 また、心理学の専門家は、「若い人が遺言状を作成する背景には、彼らが不安感を抱き、リスクが身近に迫っていると感じている現状がある。また、親心や愛情の表現でもあるのだろう。一部の1980年代生まれは、自分に万が一の事があった場合に、身内が勝手に自分の財産を処理することを心配しており、早めに手を打っておこうと考えている」と指摘した。

○弁護士:「e遺言状は法的効力なし」

 盈科弁護士事務所の蘇奕欣・弁護士は、次の通り説明した。

 中国の法律では、▽自筆による遺言 ▽代筆による遺言 ▽録音による遺言 ▽口頭による遺言 ▽公正証書による遺言、の5種類だけを、有効な遺言として認めている。

 e遺言状は、この5種類の遺言には属さないため、法的効力を持たない。また、ネットワークそのものがバーチャルの世界であり、遺言状を作成したのが本人かどうかを確かめる方法はなく、遺言状作成が民事行為として有効であるとは認められない。

 ネットワークには国境はない。ハッカーやウィルスがネット上に氾濫している今、どのウェブサイトも、「間違いは決して起こらない」との保証はない。銀行の口座番号や暗証番号など自分の財産関連情報を遺言状に書き込み、それをネット上で保管し、もし他人に解読されたら、遺言状を作成した本人は、深刻な財産上の損害を被る恐れがある。

 若い人が遺言状を作成する場合も、公証役場の利用など、正規のルートを選んだ方が安心だ。

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