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日本での就活、厳格な服装要求に中国人留学生が戸惑い
2015年 8月 30日10:21 / 提供:チャイナネット

  日本の華字紙「新華僑報」のウェブサイトによると、日本の地下鉄駅や街角、レストランなどで、もし黒いスーツに黒い髪を束ね、黒い鞄を持ち、黒い革靴を履いている若い女性――白シャツ以外は全て黒色――がいたら、その人は就活中の学生だとほぼ断定できるという。この若者を見る全ての人は、彼女がこれから何をしに行くのか知っている。何者かが一目で見抜かれてしまうような感覚もまた、社会の一員になるための関門なのだろう。

  1980年前後、日本の百貨店とファッション業界は、就職活動期間に着る服を「リクルートスーツ」と定義した。その後、日本のファッション雑誌や就活サイトでは、就活学生の化粧の仕方や、髪型の処理の仕方などの文章が載ることになった。切り下げ髪はどの位置で分けるか、ポニーテールは頭のどこでしばるか、口紅は何色がいいかなどさえ、全て決まりがある。これら就活関連の「攻略」は他にもスーツやシャツ、ネクタイ、靴、バッグの選び方がある。

  かつて就職活動をする者は、職種の特徴に応じて服装には濃淡の選択があった。2006年より「黒色」が就活中の服装の主流色となった。就活過程で、髪の毛は必ず黒に染めなければならない。控えめなブラウンの髪ですら、面接では大きな減点の対象となる。多すぎる決まりに中国人留学生は困惑の色を隠せない。ある中国人留学生は冗談で、「私のかわいいブラウンの髪を黒色に染めたくない。面接官に“その髪どうしたの”と言われたら、“栄養不良だから”と言ってやる」と言っていた。

  筆者は留学生のための大型就活セミナーを見に行ったことがある。誰もが黒いスーツ、白いシャツを着ていたが、細かい部分では日本の学生と違っていた。普段使いそうなバッグ、黒色だが装飾の多いハイヒール、頭の高い位置でしばったポニーテール、化粧をしない顔……。おそらく中国人留学生たちは、日本の就活習慣を尊重し、この文化に溶け込もうと努力しているのだが、心の中で少しだけ自我を残しているのだ。この種の「抵抗」は、おそらく日本の高度に格式化された社会においては理解に苦しむものだろう。

  そして日本の学生は知っている。就職活動というのは個性を表現する場所ではない。見た目よりも自分の内面を通じて試験官の公平な判断を得たいと考えている。求職者は見た目ではほとんど同じという状況にあればこそ、面接官の注意力は“対話の内容”に集中することができる。さらにいえば、衣服を選択する時間や高い服を買うお金を節約することもできる。

  しかし中国人留学生はこのような考えに共感できない。27歳の中国人留学生は、「服装がうまくコーディネートできているなら、それも得点に入れて欲しい。面接のときに自分が何を着てくるか、それも教養のひとつだから。それに服装というのは個人の人格の表現。面接官もそこから人を判断してもいいと思う」と言う。

  また他の中国人留学生は、「着るスーツに決まりがあることについては理解できるにしても、どうしてカバンや靴、髪型や化粧にまで規定があるの? これらの決まりに沿って服を着ると、鏡を見るたびに、逆に自信がなくなる。鏡の向こうの人が誰なのか分からないくらい。面接時に実力を発揮できない」と言う。

  さらに他の中国人留学生は、「黒一色の服を着るのは本当に嫌。特に大型就活セミナーのとき。誰もが自分が着ているのと同じ服を着て、同じバッグを持っているのはすごく不気味。一面真っ黒で、後ろから見るとカラスの群れみたい」と話す。

  こうしてみると、中国人留学生が日本で就活する際、我々の気づかない「服装の悩み」があることが分かる。これは一種の文化の衝突と言えるし、文化の融合とも言えるだろう。この衝突と融合は、簡単に批評できるものではないが、ある意味、深い次元での相互理解と認識を促進させるものである。おそらく、海外留学の意義はそこにあるのだと思う。

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