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中国・6次産業化の主役/ハイテク温室
2014年7月 21日15:31 乛 提供:
水気耕栽培型トマト生育の様子、一本の木から17,000個の実がなる

 最近の中国は国内・海外ともに旅行ブームになってきた。上海市では2015年にデズニ―ランドが開園。また、この上海周辺地域では大旅行ブームの到来は周知の事になってきている。週末ともなれば人びとは世界遺産訪問、大自然を誇る各観光地には人出でごった返し、どこも多くの観光客たちであふれだしてきたのが目につく。

 特に、自然風靡をたたえた各観光地の周辺地域では新たな道路の拡張工事、橋、トンネルなどインフラ整備工事が盛んにおこなわれている。これに並行してデベロパーをはじめ地方自治体でも大規模な観光地開発、その地域整備工事が続々と始まっている。

 上海から100km圏にある蘇州の太湖(中国三大湖の一つ、琵琶湖の3、4倍の面積)周辺では日帰りの観光型から滞在型観光地への開発プロジェクト計画が目白押しである。蘇州は上海市という大市場をかかえていて、これまでは農業生産基地として大きな役割を果たしてきたし、工業分野でも日系製造メーカーの進出が盛んにおこなわれてきたが、最近では、その湖の特性を活かして、これを観光資源として今後、大きく発展していこうとする意気込みがみてとれる。

 日本と似たその景観から一部の地域では、観光国である日本から開発プラン、運営ノウハウを導入していこうとする計画もあるのだ。すなわち、日本式のハイテク農業施設、工業〔食品の加工工場〕、サービス業を組み合わせた六次産業化計画モデル地域が生まれようとしている。日本からの投資/企業誘致もそのうち始まることだろう。

 具体的には、日本やオランダからハイテク農業施設、生産技術を導入して、トマトや葉物野菜の生産を中心にした太陽光型温室栽培、密閉型葉物野菜工場、日本独特の食品の加工方式を導入することで、これまでの日帰り観光とは違った、日本的な滞在型・体験式観光地開発プランが太湖から始まって、中国各地に浸透して繰り広げられていく勢いだ。

 大阪の協和株式会社と中国国有企業との合弁で設立した上海盛沢農業発展有限公司(松江)のハイテク水気耕栽培施設を見学した。この栽培方式は戦後、アメリカ軍が日本や太平洋の島々で当時としては、安全な野菜類を食べたいという目的にかなった最先端農業施設。

 協和株式会社ではトマトの生産法ハイポニカ〔水気耕栽培型〕を1963年からスタート。現在、日本全国には約2,000ヶ所にこの太陽光利用型ハイテク温室工場〔ハイポニカ〕が導入されており、この上海市のモデル工場、面積2,500平方のハイテク温室内ではトマト(1本から17,000個の実がなる:日本の実績)、この施設ではレタス・みず菜・ホウレンソウ・シソ等、フルーツでは日本製のメロンまでもが試験的に生産されていた。

 今日、中国の各地では土壌、水質の汚染が深刻化してきており、食品の安全性が大きな社会問題になっており、人々は安全な野菜に感心が高まりはじめている。安全第一に生産されるこの日本のハイテク農業生産技術が今後、中国に広く普及する日はそう遠くではなさそう。

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 左から酒井和昭氏、畑沢徹氏、盧佳勳氏

 このハイテク温室ではミニトマトの生産を水気耕栽培で生産しており、その最適条件、環境を保ちながら年間13トン/年間/1,000M2.これを管理者1名と3名の作業者で2,500M2のハイテク温室内で管理している。その秘密は日本から導入してきたハイテク技術が満載されている溶液や温室内の環境コントロール制御盤にある。

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 水質の制御盤を説明する総経理、酒井和昭氏

 今回の訪問時はトマトを作づけした直後の時期であった。この時期、温室内の温度がどうしても高くなり易くなるため、温室内の温度は制御盤で自動的に下げられる工夫がされていて、室内温度が均一になるようにファンで循環させていた。「写真参照」 土耕栽培とは違って、農薬の使用は無く、トマトの味、大きさなどにもばらつきが少なく、更に、少人数で大量のトマト生産が可能になっている。

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ハイテク温室内の様子

 現在はこの水気耕栽培は太陽光利用が中心だが、将来的には葉物野菜などは今以上に安定的な生産性をあげるべく、さらなる技術開発を進めていくと、総経理の酒井氏はその抱負を語ってくれた。

(文・畑沢徹)

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