中国では都市部近郊における農産物の作付け面積は拡大傾向にあり、この数年をみると内陸遠隔地の省·自治区などでも野菜の生産基地は増えてきている。今の中国の政策は自国内の食糧生産を安定的かつ膨大な供給力へと積極的に押し進めているのだ。
これまで、日本側から見た場合、中国の農産品ポイントは、①労働力は豊富にあるのだが、上海周辺ではこのコストが昨年度比、約13%も上昇。②日本からの大手食品企業·商社が現地農家と生産、冷凍技術体制を整えてきていて、その輸出体制もできている。種苗会社の進出も目立つ。③最近、中国政府は積極的に外資導入政策を活発化している。この結果、中国内の野菜生産量は伸びていて、対日輸出にも大きな成長が期待される。
中国の場合、野菜の需給量·価格に関しては市場に委ねられ、各企業でそれぞれの戦略もあって、その動向は日本のように一概に語ることが出来ない。中国の野菜産地は長江デルタ地帯の上海市周辺、浙江省、江蘇省、そして広東省、山東省などが有名である。 さらに内陸部のインフラ整備が進展してきたので、最近では輸出向け野菜の産地はさらに内陸部へと拡大傾向にある。
雨水をためた池からの水を日本の最先端のろ過紙説を取り入れた実験をしながら野菜に供給
2015年、年明けとともに日本人が経営している上海の中国農業生産企業を見学した。
ここでは元メーカー勤務をしていた佐々木祐輔氏(依思凱農業科技(上海)有限公司)が6万平米の土地に、ガラスハウスが2棟(5千平米)、ビニールハウスが90 棟(2万平米)。有機栽培法にこだわりをもって栽培していた。ここで出来た野菜は日本のようなJA組織を通さず都市部の高額所得者層向けに高品質、安全野菜類を大量にvegetabeのブランド名で生産しているのだ。其の品目は葉もの野菜,にんじん、大根、白菜、たまねぎなどの多岐に渡っている。
この時期はイチゴが旬であり、ハウス内で摘み取ったばかりのイチゴを味わった。上海市中で一般向けに売られているイチゴとは違って、日本のイチゴのように美味しかった。
入り口正面のガラスハウス
現在、ここでの生産品は中国国内の消費者を対象にしているが、その販売量の60%もの野菜類が供給不足気味で生産が追いつかず、また季節商品の問題から山東省、桂林などの契約農家からも調達している成長企業。その為、年内には現農場を2倍に拡大する計画をもっている。
施設の正面にはガラスハウス施設があり、さらにはビニールハウスが何十棟もあって、特に、このハウス農場では年間を通じて幼稚園·小中高学生、一般人に至るまでの見学者で絶えない。夏休みには、この農場で取り立てた野菜を使ってBBQも出来る広場が用意されていた。
佐々木祐輔氏(=右=依思凱農業科技(上海)有限公司)と筆者
日中関係がいろいろと取りださされてはいるが、中国社会の中で悪戦奮闘しながら、ひとりの日本人がバイタリテイーを持ち、正月も返上しながら中国人の従業員を雇用して、単独で農業経営をしている彼の姿を見れば多くの人びとは感動するであろう。今後の日本の農業人材の行方は、国内で起こっているような保守傾向の今を見るか?彼のように将来を見ていくか?
2015年、これは日本人農業従事者にとってこの傾向がひろがりはじまりだす新たな時代の幕開けともなった。
(文:上海ari グループ畑沢 徹 )