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【CRI時評】8月15日に思うこと・歴史に向き合ってこそ未来が描ける

2019年 8月 15日10:18 提供:中国国際放送局

先日、CRI日本語放送宛に一冊の報告書が届いた。タイトルは「第11回日中学生手話交流・南京事業」。今年5月、手話を媒介に南京で交流活動を展開した日本人留学生10人の実体験が写真と共に記録されている。2009年にスタートした同交流事業は、オムロン社を定年後、国際交流基金北京事務所所長などを歴任した藤田安彦さんの呼びかけで始まった。初回は四川大震災被災地での活動だったが、二回目以降は場所を南京に移して毎年実施し続けている。11年間の参加人数は延べ122人を数える。学生たちは一学期を丸々使って、中国の手話や手話による歌を覚え、南京の聾唖学校や高齢者福祉施設を訪れて交流公演を行う。南京大虐殺被害者記念館をはじめ、戦争の爪あとが残されている歴史の跡地を訪ね歩く日程も必ず組まれている。今年は記念館副館長との座談会も実現した。また、協賛には日系企業の名が連なり、産業界の支持も得ていることが見て取れる。

報告書表紙

交流事業に参加した学生たちと関係者、南京市内の老人公寓での記念写真

届いたリポートを開くと、若者の感性の豊かさに驚かされる。「人に対して、歴史に対して、敬意を払うこと、そして知ろうとする姿勢が大切だと改めて感じた」、「大虐殺犠牲者記念館を訪れて、一番強く感じたのは“比較的良好な日中関係を築くことができているこの時代だからこそ、歴史問題について理解し考え直す必要がある”ということだった」、「個人レベルで関係が密接になる現代だからこそ、歴史問題に向き合い、解決の糸口を見つける必要がある」、そして、「その役割を担う人物こそが日中友好に貢献したいと考える青年である」と続く。若者らしい意気込みに、「あっぱれ」と拍手を送りたい。

参加者がイラストでまとめた「日中手話の違い」

南京市聾唖学校にて、C-POP「陽光総在風雨後」を披露する様子

南京は、日本軍の侵略行為を象徴する虐殺事件の起きた都市だ。その南京で、この9月、日本国民の被害の歴史を再現する舞台劇が上演される。北京電影学院の留学生だった女優小林千恵さんと、その指導教官で演出の王乃真さんが自力で企画した舞台だ。二人は、これまでに7年の月日を費やし、日本の敗戦によって中国に取り残された13歳以上の女性たち(「残留婦人」、日本厚生労働省の発表では、2019年7月31日現在、帰国した人数だけでも4,167人に上る)の人生を追いかけたドキュメンタリー「戦後中国残留婦人考」(中国語題『戦後遺華日本女性考』)を撮影、制作している。今回はその中の3人の生き様をとりあげ、小林さんが自ら脚本を手がけ、自ら演じる。「生き地獄から命を永らえたおばあちゃんたちの人生には深く心打たれるものがあり、彼女たちが体験したことが繰り返されないよう、歴史を伝えていきたい」と、小林さんは創作の動機を語る。翻訳や演出担当の王監督も、「とりわけ若い人たちに見に来てほしい。両国の国民が手を執り合って、いつまでも平和な世の中を一緒に作りたい」と、制作に取り組む。

CRIスタジオで取材を受ける小林千恵さん(右)、王乃真監督(左)

今年も8月15日を迎えた。この夏も、中日のより良い未来のために、汗を流す人たちがいる。9月下旬の南京公演が、出演者と来場者がともに歴史に向き合い、未来に思いを馳せる素敵な場になることを祈りたい。(王小燕)