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『尺八·一声一世』プレミア上映 観客「温もり感じる作品」=北京

2019年 5月 24日19:10 提供:中国国際放送局

女性監督聿馨(ヘレン、秦瓊)さんが初演出し、プロデュースも手掛けた映画作品『尺八·一声一世』が23日夜、北京でプレミア上映されました。ヘレン監督個人の投資によるこの作品は、3年の年月をかけて日本と中国の間を往来しながら制作された90分のドキュメンタリー映画です。

ポスターを手掛けた黄海さんは、『となりのトトロ』中国公開でもポスターを担当

作品には、尺八に心酔した中国の若者、日本のプロ奏者と製管師、尺八に魅了され日本に定住することを決めたアメリカ人ミュージシャンらが登場。彼らの暮らしぶりや仕事、音楽に対する姿勢に焦点を当てているほか、この映画のために創作されたオリジナル楽曲が両国の風景を背景に響き渡っていました。

プレミア上映終了後の交流会には、ヘレン監督とともに出演者のき乃はちさん、小湊昭尚さん、台湾出身で6年前から武漢音楽学院で尺八のカリキュラムを設けている蔡鴻文さんなどが参加しました。ヘレン監督は、「尺八の音色に心を奪われた」ことが映画製作に取り込んだきっかけだったと振り返り、「お金儲けではなく、単純に中国の伝統文化とも深くかかわるこの古来の楽器をもっと多くの人に知ってもらい、好きになってもらいたかった」と、その思いを語りました。

上映後の交流会には、来場者向けの尺八演奏体験も実施

中国では「陰陽師」や「ナルト」のオリジナルサウンドトラックの演奏者として知られるき乃はちさんは、「これからの世代の尺八奏者にバトンタッチができるような映画だ」と言い、「尺八は中国から日本に伝わって、また中国に帰った楽器なので、ぜひ注目して、応援していただければ嬉しい」と思いを語りました。

映画では、き乃はちさんの演奏する作品『宙へ」を聞いて尺八に目覚め、学習意欲にかられながらも、家庭の経済事情の難しさから、自ら一生懸命アルバイトをし、ためたお金で樹脂製の尺八を買って練習を重ねていた河南省農村部の青年徐浩鵬君が紹介されています。き乃はちさんはこのくだりについて、「徐君が自分のサウンドを気に入ってくれたこと、尺八をやりたいという強い気持ちをもっていることをこの映画で知って、びっくりした。彼のような若者たちを尺八の世界にどう引っ張っていけるのかが、自分たちの力にかかっていると思う。頑張っていきたい」と語りました。

交流会で演奏する小湊昭尚さん

一方、福島県須賀川市出身の小湊昭尚さんは、母に民謡歌手、父には祖父から数えて2代目にあたる尺八奏者をもつ音楽一家です。作品には、小湊さんの長男の誕生や、父親と尺八の伝承をめぐって話し合うシーンなどが記録されています。小湊さんは、この作品を「中国全土と世界に尺八を知らしめる素晴らしい映画」と評価し、「自分自身も身を引き締めて、これからも尺八の道を続け、未来へとつなげていけるような演奏をできることを目指そうと改めて決心した」と、その意気込みを語りました。

日本での撮影に関して、ヘレン監督は、「尺八は今、日本でもそれほど目立った楽器でもないと聞いている。その尺八のために中国から映画のクルーが入ってきたことには、どの人もたいへん驚いたようだった。だが、撮影に入ってからは、その場にいた全員が、協力しなくてはという使命感のような思いで漲っていた」と日本の出演者たちの協力に感謝の言葉を述べました。

会場には、スクリーン一杯に奮闘する徐さんの姿を見て、「思わず自分自身のことをオーバーラップさせ、涙が出そうになった」と語る中国人の尺八学習者も多くいました。6年前から尺八の練習を始めたというCCTVのニュースキャスター厳於信さんは、「温もりを感じる作品」と評し、「里帰り」と「対話」の二つのメッセージが読み取れたと語りました。さらに、「尺八が里帰りすることにどんな意味があるのか、それを知りたければ、その生まれた場所を知り、また成長した場所についても知らなくてはならない。里帰りを果たしたからには、これをよりよく伝承し、発展させていくことがこれからの課題になる。『一声一世』という表現には、いくつもの時代と幾世代ものの生命の積み重ねが込められている。尺八はまた、自らの内心との対話ができる楽器であり、木々や潮騒の音、鳥のさえずり、ひいては生と死の思いをも聞き出すことができ、生命により豊かな色彩を添えてくれる楽器でもあると思う」と感想を語りました。

『尺八·一世一声』のシーンから

『尺八·一声一世』は、これまでにも2018年中国(広州)国際ドキュメンタリー映画祭のオープニング映画として上映されたことがあります。今年は、この31日から全国でロードショーが始まるということです。

(取材:王小燕)