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高等教育機会の地域間格差と入学定員割当制度

2016年 5月 23日13:42 提供:東方ネット 編集者:兪静斐

  作者:竇 心浩

 先日、江蘇省、湖北省、上海市などの地域からより多くの大学入学定員を中西部地域に割り当てるという教育部の方針が発表され、あっという間にネットで炎上した。高等教育機会の地域間格差を縮小するための措置だという教育部の主張に対し、江蘇省や湖北省などの住民たちが納得できず、批判の矛先を教育部に向けた。高等教育機会の地域間格差はどこの国にも見られ、格差の是正が既に大義名分が得られている。にも関わらず、教育部の格差是正措置が批判の的となっているのは一体なぜだろう。

 こうした疑問を解くためには、中国における高等教育機会の地域間格差問題のユニークさに注目しなければならない。日本と異なっているのは、中国では「入学者地域割当て制度」という独特な大学入試制度が存在している。同制度の下で、各大学は入学定員を受験の前に各省に配分して、事前に定めた入学定員の枠に合わせて省別で進学者を選出する。すなわち、大学への進学率は各省の該当年齢人口と配分された定員の数によって決められている。各省の大学進学率は実際に受験前に既に決められているため、「計画型」入試制度とも言える。

 日本や欧米のような完全な自由競争による「市場型」入試制度と違い、「計画型」入試制度の下では、政府が高等教育機会の地域間格差をコントロールできる。市場経済体制の中で、高等教育機会の地域間格差の拡大を危惧して、「計画型」入試制度の存続は必要とされている。ところが、地域間格差の生まれが市場によるものなら仕方がないが、大学や政府のような組織による人為的な結果であれば、批判されるのは当たり前なことだ。

 中国は既に高等教育の大衆化時代に入ったので、大学進学が簡単になり、高等教育の機会均等問題は量から質へ転換した。日本と同様に、名門大学への進学機会は希少価値を持ち、それを巡る受験競争が熾烈に繰り広げられている。ここでは、各地域の名門大学進学率だけを取り上げてみよう。実際に計算してみると、中国において名門大学進学率の地域間格差は非常に大きい。各省の名門大学進学率(2011年現在)のジニ係数は0.25に達し、日本の0.18を上回っている。さらに、同進学率の最も高い天津市は最も低い河南省のおよそ6.7倍で、日本の4.8倍より大きい。こうした結果を見ると、「計画型」入試制度が高等教育機会の地域間格差の是正に果たした役割は疑わしく思われる。

 中国では最重点大学と呼ばれる名門大学の分布は一部の省に偏り、これらの省の名門大学進学率の平均はそれ以外の省の1.5倍に達している。また、統計分析によると、各省の名門大学進学率は省内の大学進学適齢人口の規模と名門大学の有無という二つのファクターによって影響されている。ただし、人口規模はマイナス的な影響なので、人口の多い省ほど、名門大学への進学が難しい。

 中国の「計画型」大学入試制度は機会均等を意図しているとは言え、期待された効果があまり見られていない。資源配分は数多くの要素に影響されるため、社会経済事情が大きく異なっている地域の間で、「計画」という単純な手段で高等教育機会を調整しようとしても、無理なところが多いだろう。