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漢方から見る養生音楽(後編)

2019年 3月 22日15:10 提供:中国国際放送局

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3月21日は暦の上では春分の日。本格的な春の訪れを感じる時期です。ポカポカと暖かな陽気に誘われ、お花見やピクニックを楽しむ人が多くなります。季節の変わり目でもあるこの時期は、体調を整えて養生するのが重要な時期とされています。今回の中国メロディーは前回に続いて、漢方薬の養生にまつわる音楽をご紹介します。

音楽は薬の祖先

「美しい音楽は人格を陶冶し、心身を癒すことができる」と言われています。実は音楽の誕生はそもそも病気を治すためのもので、伝説上の漢字の創造者・蒼頡が「薬」という字を作ったことからもうかがえます。「薬」という字は音楽の「楽」という字から生まれ、音楽は病気を治す薬の祖先と見られています。

漢字の創造者・蒼頡は古代中国の伝説の帝王「黄帝」に仕えた記録係です。音楽の「楽」という字は黄帝が敵である蚩尤と戦った時代(紀元前2000年代)に生まれました。古代の戦場では陣太鼓を打ちならす習わしがありました。当時、黄帝軍が蚩尤軍を打ち負かした際に、多くの蚩尤軍の兵士は陣太鼓の響きに脳を揺さぶられて、気絶してしまうほどだったと言われています。

黄帝は心の優しい君主で、負傷した兵士たちを癒すため、鐘のような楽器を制作しました。この鐘のような楽器は金属製で、両側を糸で飾り、下には木の板があります。旧字体の「楽」という字の真ん中は「白」という字で、白は金属を表し、五行の中で「金」は白に対応します。そして、「白」という字の両側にはそれぞれ二つの点があり、その下には「木」があります。これは楽器を糸で飾り、木製の台に置かれて演奏することを意味しています。

黄帝の史官だった蒼頡はこれを基に「楽」という字を作りました。これは兵士たちの魂を呼び戻すためのもので、魂が癒されてこそ、身体が回復すると考えられていました。「楽」という字の起源から見ると、音楽は病気を治すために作られたことがわかります。その後、草が病気を治す効果があることが発見され、「楽」という字に草冠をつけて、「薬」という字になりました。そのため、音楽は「薬の祖先」とも言われています。

美しい音楽は憂いを解く

中国の古代音楽はメロディーが緩やかで安心感をもたらし、聞く人の心と魂を癒すことができるとされています。また、中国で最も古い詩集『詩経』は中国最古の流行歌の歌集とも言われています。ここに収められた曲は人格を陶冶し、身を修めることを重んじて、聞く人を静かで穏やかな境地へ誘います。清の時代の名医・呉師机は「看花解悶、聴曲解憂(花を見て、気晴しをし、音楽を聴いて、憂いを解くことができる」と語っています。つまり、美しい音楽を通じて、気分を回復することができるということです。

五音は五臓に対応

そんな中国の伝統音楽は古来より、徴、角、宮、商、羽という五つの音階を使って構成されたもので、この五音はそれぞれ身体の心・肝・脾・肺・腎という5つの臓器に対応します。

肺臓~相補の官~

肺臓は「相補の官」と呼ばれ、呼吸器系の機能を司り、血液の酸素は肺臓を通じて、人体の各組織へ運ばれます。そんな肺臓は五音の中の「商」の調の音楽に属し、西洋音楽の「レ」に相当します。商の調の音楽は軽快でリズミカルな曲で、中国古代の名曲「陽春白雪」はその代表的な音楽です。曲は冬が過ぎ去った後に春が訪れて、万物が蘇り、草木が生い茂り、活気にあふれる様子を描き、肺臓を潤す効果があるとされています。

腎臓~作強の官~

腎臓は「作強の官」と呼ばれ、人体の生命活動を維持する基本的な栄養物質である精を貯蔵し、五臓六腑の要求に応じて随時供給するものと考えられています。腎臓は五音の中の「羽」の調の音楽に属し、西洋音楽の「ラ」に相当します。伝統音楽の名曲「梅花三弄」は羽の調の曲の代表曲で、梅の花の香りや寒さを耐えしのぐ様子を通じて、高尚な心を持つ人を讃えます。その清らかで美しくも悲しいメロディーは腎臓を潤す効果があると見られています。

番組の中でお送りした曲

1曲目陽春白雪(ようしゅんはくせつ)

この曲は冬が過ぎ去った後に春が訪れて、万物が蘇り、草木が生い茂り、活気にあふれる様子を描き、肺臓を潤す効果があるとされています。

2曲目梅花三弄(ばいかさんろう)

この曲は中国の伝統音楽の代表曲として知られているだけでなく、腎臓の養生に適する音楽とされています。