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AIIB(アジアインフラ投資銀行)の最新情報 米トランプ新大統領下の加盟行方は焦点へ

2016年 11月 21日15:44 提供:東方ネット 編集者:範易成

上海国際問題研究院院外上席研究員/日本記者クラブ会員

丸紅株式会社市場業務部中国チーム課長 成玉麟

【要約】

·ここ4ヶ月間に、米トランプ新大統領下のAIIBへの加盟可能性を含む世界注目の同銀行関連出来事は6件程ある。何れもAIIBの今後の加盟国数、ADB等の既存国際金融機関との関係、現在の同銀行資本金引受状況、対アジア各国融資案件の実績、経営陣7人の顔ぶれ、今後の経営方針と中長期ビジョンとの関わりを持つ重要な事柄である。これらを通じて今後同行がもたらしうる新たな世界金融地殻変化の行方が焦点となる。

·AIIBの現時点の投票権構成から明らかにされた同行の特徴、域内外/発展途上·中進国と先進加盟国が担う各々の使命

·AIIBの2016年上半期と下半期融資案件の全容と評価(金額、案件概要と地域分布、それに協調融資先に関する知らざる事実)

·今年下半期以降のAIIBが注力する分野の中、特にガバナンス体制の3段構造における複数の多数決の仕組みについて、最大な投票権を有する最大の株主でもある中国は、今後「権限委譲」メカニズムなどを活用し、同行の意思決定効率化、透明化と経費削減を一層図ろうとしている。

·AIIBの最重要採決事項に対し、中国政府が持つ否決権は、どのような時に行使されそうなものか、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)、世界銀行(WB) などにおける両国の否決権との比較

·中国政府のAIIBに対する支援策

  1.直近の出来事

  現在進行中のものを含め、ここ4ヶ月間、AIIB 関連の注目すべき出来事が6件程あった。

  1つめは、フィリピンのAIIB資本金引受額1.96億米ドルの拠出の件(銀行協定書により5年間で毎年3,920万米ドルの分割払込可)。アキノ前政権時代では実施して来なかったが、現在のドゥテルテ新政権下で、同国財務省が2017年度関連予算案の議会への上程承認手続きを実施する為に、動き出したとのこと。

  2つめは、AIIBのBoard of Directors(董事会)での承認済(6件)、または承認待ち(7件)の案件数が、10月12日現在で、合計13件となった。下半期からは、スピードアップ感が強くなった。上記承認済と承認待ち案件のうち、金額が明確となった8案件の融資額合計は、16.3億米ドルとなっており、2016年度当初の年間融資目標額5~12億米ドルの上枠を上回る見通しとなった。(案件詳細は後述)。

  3つめは、Senior Management(総裁会)に於ける副総裁人事の入替えがあった。同行9月19日付の発表では、フランス出身の新副総裁であるThierry de Longuemar氏が、韓国出身の前副総裁Kyttack Hong氏(2016年6月27日まで在籍)と交替した。

  また、経営陣の構成メンバーである「General Counsel」(法規担当役員)というポストも新設した。同ポストにニュージーランド出身者が就任した。これにより、同行経営陣に占める先進国の国際金融専門家達が過半数となった(詳細は後述)。

  4つめは、総裁のアドバイザーを務める国際諮問委員会の11人の顔ぶれ。アジア、欧州、米州、アフリカ等の国·特別行政区で首相、行政長官、財務大臣、中央銀行総裁、外交官などの経験者、及び世銀などの国際金融機関でManaging DirectorやChief Economist等の経験者により構成されており、非加盟国である日米の出身者もメンバーとして任命を引受けている。グローバルな視点で銀行のオペレーションやガバナンスなどの面で助言をしてもらうというのが役目。10月19日に第1回目の公式諮問委を開催した。開かれた金融機関としての適材適所への国際経験豊富なトップクラスの人材を取り入れ、活用する枠組みが整えられつつある。          

  5つめは、特筆すべき事項。オバマ·安倍政権下での日米両国に現時点AIIBに加盟する意向はないものの、それぞれ主導するADB (アジア開発銀行)とWB(世界銀行)/EBRD(欧州復興開発銀行)を通じて、AIIBとの協調融資による案件の組成を開始しており、実務面に於いては、国際開発銀行同士としての協力関係が既に幕開けとなっている。

  6つめは、カナダの加盟申請である。