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中国の文字というのは奥深くてわかりにくい学問だと思われていないだろうか。 実際には、中国の漢字はけっして難しくはない。それだけでなく、世界でもっとも興味深く、美しく、論理的で、しかも科学的精神をそなえた文字なのである。一筆一角がどれもみな異なった意義を持っている。だから、漢字が初めにできた時の字の成り立ちの原則さえ理解すれば、たとえ難しい字であっても、一度見れば忘れることもなく、永久に書き間違えることもないのである。
漢字が初めて書き記されたのは、亀甲と獣骨の上で、それは絵文字に属した(いわゆる甲骨文字)。各国の文字学者や考古学者たちの研究発見によると、世界のどの民族も初期の文字はほとんど絵文字の時期を経てきているということだ。たとえば、初期のエジプト文字は、多くは絵で描かれた記号である。しかしその後、多くの民族がしだいに表音文字を使うようになっていった。そうしたなかで中国人だけが、記号文字を基礎として、引き続き文字の改良を重ね、のちに文字の構成と用法の六つの原則−「六書」を完成させた。これによっで、漢字という形?音?意味の全てを兼ね備えた完成度の高い文字を作りあげたのである。
「六書」とは、「象形」「指事」「会意」「形声」「転注」「仮借」という、文字の構成の六つの原則を指す。
「象形」は、ものの形や特徴に基づき、簡単な線で描き出した文字である。それには、「木」「山」「手」「龜」といった字がある。「木」は枝のある植物。もともとは「*」と書いて、「*」が木の枝を、「*」が木の根を、「|」が木の幹を表していた。のちに、木の根の重要性を強調するために「木」と書くようになったのである。「山」という字は山の形に基づいて作られた。山は高さの異なる多くの峰から成り立っている。中国人は昔からの習慣で「三」によって数の多さをあらわしていた。そこで、山の字を「*」から「山」にかえたのである。「手」は手の形を描き出したもので、本来は「*」と書いた。上向きの線は五つの指で、下の方へ垂れている直線は手のひらと腕を表している。後に書きやすいように「手」と書くようになった。「龜」の字は、見た目は書くのがとても難しそうだが、実は横から見た亀の四本の足と硬い甲羅を簡単な線で書き表したものだ。のちに、「*」から「龜」になった。書くのが難しくないだけでなく、実際は非常におもしろい字なのである。
「指事」は、抽象的な文字の構成法で、実体のないもの、あるいは貝体的な形で描きにくいものを、ある種の抽象的な符号で表す方法である。たとえば、「上」「下」「凶」などである。「上」「下」この二つの文字は、横線の「一」を境にしている。その上方に一点、あるいは比較的短い線を付けて上の位置であることを示し、「二」のように描いて「上」の字とした。逆に、横線の下の方に記号をかいて「*」としたのを「下」にしたのである。「凶」の字は、地面に深い穴があるのに歩いていた人が気づかず中に落ちてしまった状況を表す。「凵」は深い穴を意味し、真ん中の「×」の記号は人が穴の中に落ちて驚き困っている様子と危険な状況を表している。
「会意」というのは、二つあるいは二つ以上の字を組み合わせて一つの新しい字を作る方法で、「合わせてその意味を表す」ということである。「休」「尖」などがその例だ。人は疲れて休みたい時、自然と木のところへ行って寄りかかって休む。そこで、「人」と「木」が組み合わさって「休」という字になったのである。また、ものの上が小さくて下が大きかったら、必然的に尖った形になる。だから「小」の字を「大」の上に付けて「尖」という字をつくったのである。
「形声」は、「形」と「声」を組み合わせる構成法である。つまり、「睡」「娶」などのように、音を表す字と意味内容を示す字とを組み合わせてつくることだ。「睡」の字の音のもとは「垂」にあり、意味は「目」にある。まぶたが垂れ下がってくるのは眠っているからである。「娶」という字は「取」の字の音と「女」の字の意味を組み合わせたものだ。「娶」とは、他家の女性を取ってくるという意味だからである。ほとんどの形声文字は音の記号と文字の意味との間に関係がある。
「転注」に関する見解は、学者によって異なる。時間の推移とともに音の変わってしまった字が多いために、別に新しい字を作らなければならなくなったと考えている一派もある。たとえば、「開」は新しい字。新しい発音に合わせて、もとの「*」という字に取って代わったのだという。
「仮借」は、同音異義の字を借りてきて表すことを指す。たとえば「北」という字は、もともとは二人の人が背中合わせになっているのを描いたもので、「背」という意味だった。それがのちに借用されて方向を示す「北」になった。そこでやむなく「背」という字をつくり、「北」の字の本来の意味を表すことにした。だから「北」の字は「仮借字」といわれるのである。
「部首」は漢字の大きな特色である。文字の“へん”と“つくり”を指す。たとえば、「語」「説」「講」「訟」「議」「論」といった字は「言」べんという部首に属している。だから、いずれも話と関係がある。「朽」「杉」「松」「桃」「林」といった字は、すべて「木」へんに属するので、これらの字はいずれも樹木と関係がある。このように、部首を理解さえすれば、あらゆる文字の意味を簡単に理解することができるのである。
漢字は50,000字近くあるが、常用の文字は5,000にも満たない。常用の部首も540あるだけである。だから、漢字を読んだり書いたりするのはそれほど難しいことではないのだ。 漢字は筆画がわりと複雑そうに見える。しかし、絶対に勝手に簡略化してはいけない。なぜならば、簡略化したら、中国六書の文字の構成法に合わなくなるだけでなく、漢字の特性をも失ってしまうからである。
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