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第十一回 平日の午後の過ごし方
2003 -9 - 10   10:35

中村拓朗

37度のうだるような暑さの中、中国人パートナーと外回りをしていたある日の午後、次のアポまでに1時間ほどぽっかり時間が空いた。どこかでコーヒーでも飲んで休憩しましょう、ということになり、もう歩く元気もなかったので、すぐそばにあった喫茶店のドアを押した。クーラーの涼しい風がすーっと私の身体を包み、やっとまともな呼吸ができた気がした。
店内はほぼ満席で、奥の一番隅っこにやっと2人分の席が空いていた。席についてとりあえず一服しようと煙草を取り出すと、ウエイトレスが灰皿を持ってやってきた。なかなか気がきくなあ、と思いながら差し出されたメニューをみると、中国語だらけ。中国語を解さない私は、注文はパートナーに任せて店内を見回した。
入ってくるときはまだ暑さで頭がボーッとしていて気付かなかったが、よく見ると、自分が坐っているような二人がけの席は他にはなく、6人ぐらい坐れる大きなテーブル席が多い。そして、テーブルの上には飲み干したあとのグラスが人数分よりもずっと多く置いてある。なんでかな〜?なんとなくフツーのカフェとは雰囲気が違うなあ、などど不思議に思っていると、パートナーが私の名前を呼んでいる。「中村さん、この店は一人18元で何を頼んでもいいです。メニューの中のもの、全部注文しますか?」と冗談か本気か分からないようなことを言っている。何を注文しても同じ値段なわけがないだろう、と疑いの目で私もメニューを見ると、メニューのどこにも値段の表記がなく、表紙に18元/位とある。中国語が分からないとはいえ、メニューを見ているうちに彼の言っていることはどうも本当らしいことがわかってきた。とりあえず私はアイスコーヒーをたのむことにした。すると彼はメニューの中の5つを指差してその場でウエイトレスにお金を払った。渡したのは50元札1枚。しばらくすると、私の注文したアイスコーヒーとともに、カラフルなドリンク3杯とアイスクリーム2種類と、そしてちゃんとお釣り14元(50−18×2=14)がやってきた。「へえーっ??」と驚いていると、彼はちょっと得意げに、「上海ではこういう店はめずらしくないです。」と言った。
そこでさっき疑問に思っていたことの答えがわかった。18元で飲み放題だから、一人で何杯も注文するため、空っぽのグラスがテーブルをいっぱいにしているのだ。「こんなことで儲けはあるのだろうか???」
もうひとつ、不思議に思うことがった。平日の午後(時計の針は2時をさしている)、大人なら仕事をしている時間帯だ。なぜ40〜50歳の働き盛りの男性が、大勢でトランプに興じているのだろうか?テーブルの上の5つの灰皿が吸殻で山盛りになっているところからみて、午前中からずっとこの調子なのだろう。似たようなグループが3つ4つみられる。みんな常連客のようだ。日本なら考えられないことだが、これもお国柄ということか。私はスーツにネクタイで営業にまわっているというのに???。
いろんな午後の過ごし方があるものだ。ちょっとうらやましい。
 
 
 

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