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(斎藤 彰)
上海への単身赴任を命じられる。「なぜ自分が上海に?」
化学製品メーカーに勤務する石井紀治さんが、家族を日本に残したまま、上海へ単身赴任することになったのは、一九九五年、五四歳のときでした。
海外への駐在経験はそれまでに何度もあったものの、アメリ力へ八年滞在するなど赴任先は欧米が主だったので、はじめは「なぜ自分が上海に?」と疑問に思ったそうです。
「推測すると、当時、日本企業の中国駐在員は、中国語のできる者がほとんどでした。しかし、中国語ができるからといって、必ずしも仕事ができるわけではありません。また、駐在員の間では、政府当局などにおもねる風潮が顕著にみられました。そこで、あえて、中国語はできなくても、当局の顔色をうかがうことをせず、欧米流に合理的に仕事を進められる者を派遣することにしたのかもしれません」。
石井さんは上海駐在中の二〇〇三年、六二歳で定年を迎えましたが、その後も引き続き「顧問」として化学製品の製造、販売、管理など従来の業務に携わっています。
トラブルがあっても中央突破を心がける
日本とは商慣習やビジネスのルールが異なる中国では、何かと問題が発生します。石井さんも、これまで数々のトラブルに直面してきましたが、欧米でそうしてきたように、あくまで「正論=中央突破」で臨んできたといいます。
すなわち、問題が起こっても、裏から手を回して解決するような方法は選ばず、あくまで正論を押し通し、決定権限をもつ「真の実力者」と折衝することを心がけてきました。
自らの主張を貫くために、石井さんは中国の行政を裁判で訴えたこともあります。そのときは、裁判官から「中国は三権分立ではないので「行政」には勝てませんよ」と言われたりもしましたが、最終的には、見事、勝訴を手にしました。
現地のスタッフのなかにはあくまでも正論を通すという石井さんの方針に難色を示す者もいるそうです。しかし、石井さんのそうした信念はいささかも揺らぐことがありません。
中国での生活はストレスが多いので健康が大切になる
石井さんは、中国でこれまで一〇年に及ぶ長い期間働き続けてきました。その経験から、背伸びや無理をせず働くことと健康の重要性を強調します。
「中国はストレスが多いので健康に自信のない人が働くことは無理かもしれません。毎年、現地で働いている日本人のうち五、六名が、特に心臓系統の病気で亡くなっています」。
確かに中国で働くうえで健康は大切です。このような話を聞くと、心臟関係に問題のある人は不安を抱くかもしれませんが、日本でゴルフのプレーをしていて心筋梗塞で倒れる人も少なくありません。
私個人は、病気になったときに備えて、同僚や近隣の人と良好な関係を築くようにしておけば、さほど心配することはないと思います。また、中国の病院は日本と異なり、休日がなく三六五日診療が可能なので、心配であれば日頃から病院とコンタクトをとり、ケアしてもらうことも可能です。
中国は遅れているという考えは捨てるべき
石井さんは、中国で働く場合、中国人の間の貧富、学歴の差が相当なものであることを意識しておく必要があると言います。
「中国は日本、欧米のように均一な社会ではありません。日本的なやり方は通用しないと心しておくべきでしょう」。
日本人として中国に過度の幻想や楽観、甘えをもつことは禁物だというわけです。さらに石井さんは言います。
「私は日本から代表で来ているとか、日本は優秀で中国は遅れているというような考えをもつ人は駄目です」。
中国で働く日本人がともすれば陥りがちな思い上がりを戒める石井さんのこの言葉、重く胸に残りました。
(実習編集:張雪蓮)
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