生活水準の向上を背景に、消費者のブランド志向が強まっている。このため、国産ブランドの育成と偽物対策が最重要課題となっている。
中国のアパレル市場ではまだ、国産ブランドが欧米や日本などの先進国と比べると極め少ない。しかし、改革・開放以来、生活水準が向上するのにつれて、消費者のブランド志向が徐々に高まってきている。
目先の課題としては、いかに中国のアパレル・ブランドを打つ出して、世界にも認めてもらうかを最重要課題と位置付けている。
デザイナー育成プロジェクト
中国服装設計師協会は杉杉グループ(浙江省寧波)とこのほど、「中国服装人材とブランド」プロジェクトをスタートさせた。同プロジェクトの狙いは国内の服飾デザイナーを育成し、国産ブランドを振興することにある。
杉杉グループは1,000万元(約1億5千万円)を出資し、「青年服装設計師創業ファンド」設立する。同ファンドは20代と30代の若いデザイナーの育成を対象にしている。
選抜の方法は以下の通りだ。杉杉グループは今年から、中国服装設計師協会と「新人賞」を共催する。@同受賞者の中から、有望なデザイナーを選抜する。A現在、資金不足に直面しているデザイナーに対して一人当たり300万〜800万元までの創業ファンドを与える。同資金をブランドの打つ出しに用いる。杜ト洲・中国服装協会会長は、こうした杉杉グループの計画を高く評価した。
偽者対策が課題
国産ブランドの成長が期待される一方、偽ブランド対策が大きな課題となっている。
ピエール・カルダンの場合、一部のアパレルメーカーが香港で「ピエール・カルダン」の文字を入れた会社を登録してから、同香港会社を通して偽ブランド品が持ち込まれるようになった。販売に当たっては商品のブランドマークをわざとぼかし、「ピエール・カルダン」という文字と図案だけを目立たせる。
あるいは、包装や商品名に直接「ピエール・カルダン」ブランドを採用し、全国各地に販売する。また、同偽ブランドを売り出す時にセールスマンは、「ピエール・カルダン」の「授権代理」とか「合弁企業」とか「傘下会社」などと自己紹介し、「当社の商品はピエール・カルダンだ」と堂々と発言するケースもあるという。
工商局も取り締まりに本腰
中国紙によると、中国国家工商局も偽ブランドがはびこっている事態を重く受け止めている。同局の関係部門はこのほど、広東省順徳へ赴き、不当競争を取り締まる会議を開いた。その後、広東、浙江、福建などの工商局部門が1ヵ月にわたって、全面的に取り締まりを行なった。
偽ブランドを抜本的に防ぐため、専門家は全国人民代表会議が新たな法律文書を作り、省クラス(日本の県に相当)以上のブランドは全国レベルで法律によって保護されるように提案している。また、機関部門が香港の登録機関と意思相通を強め、不正登記を未然に防ぐことなどが必要だと指摘している。
中国ではこれまで「不当競争の取締法」「マーク法」「消費者権益保護法」「生産品品質法」「企業名称管理規定」などの法律が発布されたが、法律同士の整合性や、各地域ごとの対応の違いなどで、抜け穴が残っている。したがって、偽ブランド問題を徹底的に解決するまでにはまだ、時間がかかりそうだ。
(作者:章坤良)
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