見えない弊害その三:
家族をのふりをし、医療秩序を混乱させる
好奇心で張さんは介護者に「闇救急車」について尋ねたことがある。「絶対に信じないで、料金も高いし、危険だし」という返事だった。介護者たちは「闇」の車の危険さが知っているが、配られる名刺に対し、やはり対応する方法がないという。「今日きれいに捨てても、明日また出てくる」と文句を言った。たまに名刺を配る人を見ていても、報復が怖いため、非難する勇気がないという。
張さんが入院した病院の他、黄浦区のもう一つの医院でも、同じ悩みに出合った。医院の関係者によると、家族の見舞いの時間になると、「闇」の車の運転手が患者の家族のふりをし、病室にこっそり入り、パンフレットを配るという。その場で捕まえていても、病室を離れれば、処罰もできないのだ。うっかりすると、患者の物を持ち去ることもある。
その後、医院がこういうパンフレットを没収し始め、患者にも宣伝を信じないように忠告した。しかし、医院が没収すると同時に、配るのがより頻繁になってきた。1カ月前に、医院が新しく公募した50人の警備員にとって、主要の任務は「闇」の車の「さくら」を防ぐことだった。
見えない弊害その四:
その場で救急できず 治療時間遅延
上海市衛生局の宋国梵氏は、「闇」の車のことを聞き、「これはひどい犯罪行為であり、患者の健康・生命に非常に責任感のないことだ」と、とても驚いていた。
上海市医療救急センターにスタッフによると、120番救急車は患者を速く運送する他、その場で救急を実施することもでき、医院での処置にも貴重な時間も取れる。現在、上海市中心部の救急車には、すべて2級医院の救急治療室にしかない救急設備も備えたという。
ある統計データーによると、救急設備を更新して以来、医院救急以前の心臓・肺臓の回復成功率が15.23%高まり、脳血管・気絶への救急成功率も高まったという。救急車にはまた骨折固定機械も付いているため、交通事故で起きた複合性の外傷に対し、固定もできるし、医院での救急に非常に役に立っている。
しかし、「闇救急車」はこうした設備を備える能力もなく、患者に必要な救急もできず、逆に患者の最良の救急タイミングを遅延することになるという。宋氏は、衛生部門は「闇」の車の運営に対する処罰権がないため、医院らが宣伝に力を入れ、患者とその家族が自覚的に「闇」の車を排するよう求めている。
見えない弊害その五:
不法運営 賠償難
「私人の車で患者を運送し、料金を受けることは不法運営となる」。上海市都市交通行政執行総隊弁公室の関係者によると、「闇」の車は相手が病気にかかった患者だから、いったん運送途中で事故が起こり、乗客が死亡したら、賠償も難しくなり、社会にとっての危険性は大きいという。
同関係者は、これまでマスコミで地方の「闇」の車が不法に患者を運送することを見たことがあるが、上海ではまだこういう事例を見たことはない。「運転手は大体慎重で、調査・処分にも困難がある」と語った。もし市民がこういう情況を見たら、都市交通行政執行総隊に報告してほしいと加えた。
反省
120番救急車だけで長距離運送の需要を満足させない
「闇」の車事件 市場の需要を反映
「闇」の車の運転手の陳の話によると、陳はすでにこの仕事を5年間やってきて、いつも人気がある。基本的に回復した後、地元の病院へ転院し、あるいは家で治療を続ける考えの患者が少なくない。しかし、120番では、このような需要は満足させることはできないのだという。
上海市医療救急センター弁公室によると、現在、大部分の救急車は市内の使用しか使われず、2省にまたがる救急車は4、5両しかない。その他、緊急処置を受けたが、病状が完全に治らない重症の患者は、経済・風習が原因で、家に帰りたいという希望がある。そこで「闇」の車が、このような要求を叶えている、という現状が分かった。
ある医院のスタッフの意見によると、患者の要求が満たされない限り、政府部門の力で調査・処分するだけでは問題を解決できない。関係部門がこのことについて、研究し、正規の120番救急車を増やすべきだ。もしそのコストが高すぎ、一時的に長距離運送が実現できないなら、正規な会社を作り、こうした長距離搬送業務を運営させるか、あるいは関連法規・保険によって、もともと非合法に運営されている「闇救急車」を監督するようにすれば、患者も安心でき、「闇」の車で起きる賠償の難問も解決できるようになるという。
(実習編集:王 燕華)
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