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上海道生:科学技術で伝統医学の発展に貢献

2019-4-19

By:王笑陽

 現代人にとって、血糖、血中脂質、血圧、超音波検査、心電図といった医学用語は、当たり前のように耳にする言葉である。昔の中国人にとって西洋医学は、カソリックの宣教師が西洋からもたらした不思議な知識という認識であったが、今の中国人にとっては、誕生から死まで信頼できる医療となっている。西洋医学は私たちの考え方から日常生活まで多大な影響を与えた。その精密な機器や直観的な影像とデータ、世界中に広く実践されている治療手段は、信頼性のあるものと認識されている。その一方で、中国伝統医学(以下「中医学」)には、医師の個人的な経験に基づく診察、わかりにくい処方箋、黒くて苦い薬というイメージがあり、多くの人々に信頼性に欠ける医学と思われるようになってしまった。

 中医学が衰える中で、これを引き続き研究し、発展させるのは非常に難しいことに違いない。だが、このような背景にもどうしても中医学を守りたいと考える人々がいる。上海道生医療科技有限公司(以下「道生」)の技術マネージャー·周会林がその一人だ。このほど、周氏は東方ネットの取材に応じ、道生が中医学研究·発展の道を拓いてきた貢献について語ってくれた。

 周会林によると、道生の企業理念は、現代の科学技術で伝統医学を発展させることにある。その主力製品は「四診儀」という医療診断機器だ。


「四診儀」とは


 中医学の伝統的な診断方法は、「望聞問切」の4文字にまとめることができる。「望」とは患者の顔や舌の色、精神状態などを目で観察すること。「聞」の字は中国語で「聞く」と「嗅ぐ」の2つの意味を持つので、聞診というのは患者の声を耳で聞く、その匂いを鼻で嗅ぐことだ。「問」は患者に言葉で尋ねること。「切」とは患者に触れて診断を行うことで、脈診、腹診などがある。中医学を起源とする日本の漢方では、今でも脈診や舌診などが広く行われている。

 「四診儀」は中医学のこの4つの伝統的な診断方法を、現代の技術で実現する機器だ。

 「四診儀」を初めて見た人は、これを中医学に関連付けることは難しいだろう。小型で移動可能な操作台の左側はモニターで、右側は舌·顔·脈の情報収集機器だ。舌·顔·脈の情報収集機器の構造は、眼科の検査機器に似ており、その機能は文字どおり、患者の顔の色、舌の色と形、脈に関する情報を収集·記録することだ。

 周会林は「四診儀」の開発者だ。彼によると、人の舌·顔·脈の情報を機器が識別·記録できるデータに転換するには、まず、中医学の曖昧な概念をはっきりと定義して、データ化しなければならない。例えば、中医学の古書には舌の色について基本的に「赤」、「薄赤」、「深紅」のような用語が使われているが、実はこれは非常に主観的な言い方であり、機器で判断させる場合には、より客観的な標準が必要となる。このため周氏のチームは、世界中で最も一般的に使用されている「Lab色空間」を、色彩の測定標準として最終的に採用することにした。

上海道生医療科技有限公司が研究·開発した「四診儀」

 だが、これはまだまだ第一歩だ。数値化された情報を分析して中医学の概念と突き合わせるのが次のステップ。

 脈診を例としてあげてみよう。中医学では脈を「浮脈」、「沈脈」、「遅脈」、「数脈」など数多くの状態に分けている。このような人の脈情報を波形データに転換し、機器に識別·記録させるのが第一歩で、異なった波形データを脈のさまざまな状態にひとつひとつ対応させるのが第二歩だ。

 これは決して簡単なことではない。「浮脈」というのはどのような感じか。中医師であれば触れればすぐ分かるが、言葉で表現しようとすれば比較的難しい。それに、同じ患者に対する診断が中医師によって異なる場合もある。

 この問題を解決するため、周氏のチームは脈のデータベースを作成した。まず複数の中医師を招いて同じ患者に対して脈診を行ってもらう。そして、多数を占めた判断結果を採用し、その患者の脈の波形データに対応させる。サンプルが多くなればなるほど、機器の判断が多数の医師の判断に近くなるわけだ。

 道生の舌·顔·脈のデータベースには、これまで十数万件にものぼるサンプルを蓄積してきたという。