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ドラマのセリフから読み解く日本人の国民性
2014年 5月 17日10:21 / 提供:人民網日本語版

  2011年に東日本大震災が発生したのを機に、人間のより暗い部分を見せることが多かった映画監督・園子温監督の作風がソフトになった。例えば、「ヒミズ」(12年)では、ヒロインの茶沢景子が住田祐一と走りながら「住田がんばれ」と何度も叫ぶラストシーンが、127分にわたるどんよりとした空気を一変させた。新京報が報じた。

 日本の映画やドラマで、人を励ます時によく使われる言葉が「がんばれ」だ。女性作家・新井一二三は、日本人の特徴に関して、「重要な事ほど、言葉で表現しようとしない。日本には互いの心から心に伝わるという意味の『以心伝心』という言葉がある通りだ。これは武士道の精神の影響だろう。『沈黙は金なり』は、今でも日本人が最も好きなことわざの一つだ」と指摘している。そのため、窮地に陥った時でも、「がんばれ」の一言で、全ての思いを伝えようとするのだ。 

 しかし、時代によって「がんばれ」の意味も異なる。1983年に放送されたNHK連続テレビ小説「おしん」の田中裕子演じる田倉しんのセリフ「がんばれ」は、角度を変えて考えると、戦後に日本経済が急速に発展したことへの称賛が含まれる一方、2012年の映画「ALWAYS 三丁目の夕日'64」(山崎貴監督) で、吉岡秀隆演じる茶川竜之介が叫ぶ「がんばれ」は、バブル経済崩壊を経験した日本への「なぐさめ」が含まれている。簡単な一言「がんばれ」も、時代や経済の状況によって、威勢のいい励ましの言葉から、低迷する現実を受け入れ自信を取り戻すための言葉へと変化するのだ。

 地震が発生した11年の世相を表す漢字として、「絆」が選ばれた。「癒し系」が流行するにつれ、日本の映画やドラマに、「絆」の温かさを感じることが多くなった。「絆」の意味を、13年のドラマ「リミット」中のセリフ「人はちっぽけな存在で、一人になることを恐れる。それでも、他の人と助け合い、励まし合う絆の中で、評価してもらうことができる」を使って考えてみよう。「ちっぽけ」と「絆」の対比に、日本人が心の奥底で終始感じている危機感を見ることができる。自然災害の多い島国である日本では、「絆」がどれほど貴重かは言うまでもない。経済の低迷や東日本大震災が長期にわたって大きな影響を及ぼしている日本で、「絆」はさらに重要になっている。

 06年のスペシャルドラマ「氷点」でも、「絆があるから、生きていける」というセリフがあった。また、10年のドラマ「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」でも、IQ201の天才捜査官・当麻紗綾の「私がこれから生きていきたい人生は、未詳の仲間との人生。その絆が壊れるくらいなら、何もいらない」という名台詞があった。

 そのほか、日本のドラマの中で、長年最も癒し系の言葉になっているのは「幸せにね」だろう。「幸せにね」は、恋人の別れのシーンでも良く耳にする。例えば、08年のドラマ「ラスト・フレンズ」で、自身が暴力を振るっていた恋人の美知留の支えにはなれないことを悟った及川宗佑は、自殺を決意し、遺書に「さよなら。美知留。幸せにね」と書いた。また、11年の香取慎吾主演のドラマは主題が「幸せになろうよ」だった。「幸せにね」は、「絆」と同じく、将来に期待すると同時に、将来への不安を暗示している。これは、平和な時にも困難や危機に備える日本人の国民性とマッチしている。(編集KN)