松井冬子氏(40歳)は美貌と知恵が共存する日本画家である。作品には、傷んだ皮膚や内臓、幽霊などが描かれ、一見グロテスクな絵画とも見られる。しかし、その作品が今、美術界内外で注目を集めている。死に対する現実感の希薄化、喪失化が、現代社会の大きな問題であると捉えている。
異なる文化元素を融和して理性ある狂気の世界を作り出した。
こんな綺麗な美人だが、作品は恐怖だ
「切断された長期の実験」:食べ物を捜している大きな犬を描く
「浄相の持続」:内臓露出する女を描く
「夜盲症」:怖い女の鬼を描く
「切断された長期の実験」
「浄相の持続」
「夜盲症」
「あたしは幽霊なんかに興味を持てない。日常生活中の恐怖や怒りを理解しやすい方式で表すだけだ」と、松井氏は語った。1994年、女子美術大学短期大学部造形学科油彩画専攻卒業。就職、4年を経て、6度目の受験で東京藝術大学美術学部入学。2002年に東京芸術大学美術学部日本画専攻卒業。2007年、東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画研究領域修了。博士論文「知覚神経としての視覚によって覚醒される痛覚の不可避」を、東京芸術大学へ提出し博士 の学位を取得。
「九想図」
作品は仏教の九想観に大きく影響されている。鎌倉時代の「九相詩絵巻」の影響で、「九想図」を創作してある美人の死体の変遷を九の場面にわけて描く。死体の変貌の様子を見て観想することを九想観というが、これは修行僧の悟りの妨げとなる煩悩を払い、現世の肉体を不浄なもの・無常なものと知るための修行である。
松井氏の作品がどんな美しいことにも汚い面があり、誰でも最後は死に至るという思想を表す。別の視点から見ると新たな世界を発見するかもしれない。
(編集:範易成)