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中国、児童虐待の刑事責任を求める声高まる
2012年 10月 29日17:14 / 提供:人民網日本語版

 中国浙江省温嶺市の幼稚園で、女性教師が園児の耳をつまんでつり上げる様子をほかの教師が撮影。最近、その動画がネットにアップされ「虐待だ」と批判が高まっている。近年、中国では幼稚園の教師が園児を虐待する事件が頻発しており、法律界の関係者は「中国は刑法に、独立した児童虐待罪の罪名を増設し、児童虐待罪の適用範囲を広めるようにしなければならない」と指摘。「死傷者が出るに至っていないものの、悪質な児童虐待行為を犯罪とするように」と呼びかけている。中国のタブロイド紙「新京報」が報じた。

 ▽これまでは刑法罪名の代わりに行政処罰で対応

 中国の「中華人民共和国憲法」や「中華人民共和国義務教育法」、「中華人民共和国未成年人保護法」などにも児童虐待を禁止する規定が数多くある。ただ、どのような行為を「児童虐待」と定めるかに関する基準がはっきりせず、その境界を理解していない人が多いため、児童をからかったり、侮辱したり、ないがしろにしたりすることを「虐待」と見なす人は少ないのが現実だ。

 中国予防青少年犯罪研究会の常務理事を務める姚建龍・上海市未成年人法研究会会長は「現在、中国の刑法の中には独立した児童虐待罪の罪名がない。児童虐待行為が死傷者を出すまでに至らなかった場合、たとえその行為が悪質であっても、現行の刑法では刑事責任を追及するのは難しい。過去の同様の事件で、司法機関は刑法罪名の代わりに行政処罰で対応していた。例えば、10月に山西省太原市の幼稚園で、女性教師が園児らに対し30分間に120発ものびんたを行うなどの体罰をしていた事件では、15日間の行政勾留の処置がとられた」と指摘している。

 ▽「警察が刑事責任追及のために積極的な行動」

 「温嶺市警察は慣例を破り、あてはまる罪名を積極的に探していることは評価できる。同事件が、死傷者が出ていない場合でも、児童虐待行為に対して刑事責任を追及できるという判例になることを期待している」と桃会長。「温嶺市の幼稚園で今回起こった事件は、故意に他人を殴打した際に適用される『尋釁滋事罪』が基本的に当てはまる。主観的には精神の刺激を追及する野蛮な動機が見られ、客観的にも故意に他人を殴打するという行為が認められる」と指摘。ただ▽殴打の対象が特定関係者である学生で、その行為が実施されたのが教室という密封された場所だったこと▽犯罪によって被害を受けたのは、児童の心であって、社会の管理秩序ではないこと---の2つが刑事責任を追及する壁になる可能性があるものの、「相対的に見て、最も適切な罪名で、罪名も基本的に成立する」と同罪名の適用を期待する。

 ▽問題点

 中国学前教育学会の前会長、馮暁霞氏は「現在、幼稚園の教師の役割は具体的に定められているものの、1つの幼稚園に従事する教師の数の基準はない。また、一部の地域の民間の幼稚園の教師の収入は、家政婦よりも低く、決して人気の職業とはならない。ここ数年、中国政府も幼児教育や民間の幼稚園の拡大を重視しているが、教師の育成がまったくついていっていない。以前はレベルの高い高校を卒業した学生が幼稚園の教師になることを選択していたが、現在は職業学校が幼稚園の教師志望の学生を取っており、そのハードルは非常に低い。そのような学生が教師の資格書をどうやって取れるというのか」と問題点を指摘している。

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