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「中日関係の冷え込み」 中国人記者が東京で実感
2012年 9月 22日13:39 / 提供:人民網日本語版

 日本政府による釣魚島(日本名・尖閣諸島)国有化宣言を受け、中日関係は急速に冷え込んだ。日本経済も、両国の関係悪化によってかなりのダメージを受けている。新華社記者は、銀座などの一等地での取材を通じ、中日関係の悪化によって日本の経済界に湧き起こった焦燥感を、身を持って感じると同時に、個人的にも将来に関する不安が胸をよぎった。新華社のウェブサイト「新華網」が伝えた。

 ▽銀座に中国人観光客の姿なし

 日本経済の低迷が続くなか、超一等地・銀座の大通りも、最盛期の賑わいはもはや昔のものとなった。それでも、ここ数年に急増した中国人観光客は、銀座復興の新しい活力となった。しかし、両国関係の悪化によって、最もダイレクトに危機に瀕したのは、ほかでもない銀座大通りだった。

 19日午後の銀座。普段なら、大通りを歩いていると、大勢の中国人観光客が話す中国語がひっきりなしに耳に入ってくる。しかし、この日、記者が取材した2時間あまりの間、中国人団体には一度も遭遇しなかった。

 某有名化粧品ブランドの銀座旗艦店に入ると、上品で優雅な物腰の中国人店員が、微笑みを浮かべて商品カウンターに立っていたが、接客の敏腕ぶりを発揮するチャンスはなかなか訪れない。普段なら、中国人店員が、店内で最も忙しく立ち働き、最も良く稼ぐ。しかしこの日、彼女らには、日本人店員から指示され、カウンターの上を拭くことしか仕事がなかった。

 店内では、中国人客が買い物しやすいように、さまざまな配慮がなされている。販売価格は全て中国語と日本語で表示されており、中国銀聯カードによる支払いが可能で、中国語で「歓迎光臨」と表示されている。さらに、中国人客への便宜を図るため、日本人店員は常に、中国語・日本語対照の販売マニュアル小冊子を携えている。

 ▽今後を憂い、涙を浮かべる日本人従業員

 同店の広報担当マネージャーは記者の取材に対し、「8月下旬には、まだ多くの中国人客の姿が見られた。しかし、8月下旬あたりから、中国人客がだんだん減り始め、特に団体客は激減した。ただ今のところ、中国人客の減少が経営状態に及ぼす影響は、それほど重大ではない」と説明。「各報道で中国国内での反日デモが各地で盛り上がっていることを知った。このような時期でも来店してくれる中国人のお客様には余計に感謝しなければならない」と語った。

 同マネージャーによると、中国人客は、知人や友人へのお土産にと、商品を大量に購入する。一回の買物での消費額は、日本人客の平均よりずっと多い。中国人客による消費額は、売り上げ全体の約6割を占めている。桜が満開になった4月には、8割にまで達した。この2、3年、中国の国慶節(建国記念日。10月1日)連休には、中国人客のために、店内にお祝いの掛け軸を飾り、小さな粗品を用意したという。この時期は多くの中国人客の来店が見込まれる国慶節連休のシーズンを控えているが、「今年は掛け軸を飾るかどうか、まだ決めかねている」と顔を曇らせる。

 中国人観光客が急激に増え始めたのは2008年で、2010年にピークに達した。しかし、同年9月に、釣魚島付近の海域で中国漁船と日本海上保安庁の巡視船の衝突事故が起こり、中国人客が激減した。その後、かなり持ち直したと思われた矢先、昨年3月11日に東日本大震災が起こった。そして今、釣魚島の国有化問題が起こり、政治問題が売り上げに直接影響している。「本当に難しい問題だ・・・」とため息を漏らす。

 今後の見通しについて尋ねると、これまで饒舌だった同マネージャーはしばらく黙り込み、「中国人のお客さんが一日も早く戻って来ることを願うしかない。両国間で主張が異なるのは仕方がないことだが、だからこそ相互理解を深めることが必要」と回答。目に涙を浮かべながら「両国国民は、お互いに相手を尊重しなければならない。私たちは日本で真面目に製品を作り、中国人客に買ってもらえるよう最大限努力している。毎日、中国人店員と一緒に働き、多くの中国人客が私どもの商品を買ってくれる。ある意味で、私たちは、中国人客に支えられて、ここまで成長できた。政治問題によって両国関係にヒビが入ることは、本当に心痛むことで、つらく苦しい。今回の問題がいつ頃収束するかは分からないが、一日も早く解決されるよう願っている。私たちは、心の奥底から、中国人と友好的な関係を保ちたいと思っている」と語った。

 ▽予想以上の深刻な影響

 ブランド化粧品店を後にした記者は、道路の向かい側にあるバッグ店に向かった。この店は、商品価格が手ごろであることから、中国人団体客に人気がある。以前に取材した時は、薄型の超大型スーツケースが、中国人に大変人気があり、すぐ品切れになるという話だった。しかしこの日、普段はめったに見られないほど大きなスーツケース2個が店の入り口付近にディスプレイされていたが、買っていく人はほとんどいないようだった。

 同店の三輪宏一店長は、「中国人客は、8月下旬から減り始めた。9月18日の売り上げは、前月比20%、翌19日は同40%、落ち込んだ。観光ガイドによると、中国人の訪日ツアーは、9月20日出発分から全面的に一時ストップという。国慶節連休で多くの中国人客の販売ピークを予想していたが、現状から見て、10月初旬に売上回復を見込むのは難しい。日本政府による釣魚島国有化宣言に抗議する反日デモが中国各地で頻発しているニュースを見て、中国人客の減少はやむを得ないことだとは思ったが、その減り具合は、予想をはるかに上回るものだ。中国人客が一日も早く戻って来ることを切に願っている」とコメントした。

 銀座で中国人観光客の姿が「消えた」現象は、訪日中国人観光客が減少している状況における「縮図」といえよう。日本国土交通省の羽田勇一郎大臣は、記者会見の席上で、「観光交流は、極めて重要である。釣魚島問題による影響が両国の観光業に及ぶことのないよう、最大限の外交努力を行う」と表明した。しかし、両国関係の悪化が観光業やその他交流活動に波紋を及ぼす事態は、すでに避けられなくなった。

 日本の時事通信社は、観光庁の統計データを引用して、100人規模の大型訪日観光団の多くが、ツアーをキャンセルしたと報じた。中国側も、日本旅行業協会(JATA)が主催する「国際観光フォーラム・旅博2012」への参加を取りやめた。

 全日空(ANA)と日本航空(JAL)の2社が運航する中国線フライトのキャンセルは、計2、3万席に上った。富士山に近い富ノ湖ホテルは、大勢の中国人観光客が利用するホテルだが、外川凱昭社長によると、9月13日から18日までの6日間で、中国人団体客約1千人の宿泊予約がキャンセルになったという。このほかにも、地方レベルでの交流イベントが中止になったというニュースは後を絶たない。

 ▽「政冷経熱」から「政冷経涼」に転換する中日関係

 中日関係の悪化に伴い、「脱中国化」を加速する日本企業も出始めた。産経新聞は大和証券総合研究所シニアエコノミストの熊谷亮丸氏の話として大和総研の熊谷亮丸(くまがい・みつまる)チーフエコノミストは「リスク分散のため、生産拠点を中国以外に移す動きが加速している。非製造業も中国進出には極めて慎重になるだろう」と指摘。一方、中国戦略を「現時点で方針に変更はない」とするユニクロ幹部の話を引用して「13億人を抱える市場としての中国の重要性は変わらない」との見方を示した。

 一部の中日問題研究家は、「中日関係における『政冷経熱(政治関係が冷めていても、経済関係は非常に緊密)』状態が、再び蘇ることはあり得ないだろう。それに取って代わるのは、『政冷経涼(政治関係が冷えると、経済関係も冷却化する)』だけではない。国民感情も淡泊化する可能性が高い」と予想している。

 日本の野田佳彦首相は19日、「外交ルートだけではなく、政界や経済界を含むさまざまなチャンネルを通じて、中国側とのコミュニケーションを強化していきたい」と述べた。日本の「経済界のドン」と称される日本経済団体連合会(経団連)の米倉弘昌会長も同日、「近いうちに訪中し、両国関係の修復に向けて努力したい」とコメントした。しかし、アナリストは、「特使による外交は、両国高層部のコミュニケーションを促す上で、一時的な効果をもたらすかもしれない。しかし、傷ついた国民感情を修復するには、かなり長い道のりを要するだろう」との見方を示した。

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