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中国独占禁止法の焦点=上海開澤
2012年 8月 28日13:35 / 提供:

ーー知的財産権分野の独占禁止法の原則が近日確定
 

 中国独占禁止法の公布に伴い、中国政府の独占禁止における法執行実績も蓄積され、各種実施細則、関連法規も徐々に完備されてきた。これらのうち、知的財産権分野における独占禁止法の具体的規定が近日中に公布されることは注目すべき焦点である。知的財産権を濫用した競争の制限を独占禁止法の規定で防止することを目指している。

 独占禁止法第55条では、「事業者が知的財産権に関する法律、行政法規の規定に基づき知的財産権を行使する行為に対しては本法を適用しない。但し、事業者が知的財産権を濫用して競争を排除、制限する行為に対しては本法を適用する」ことが規定されており、知的財産権濫用で競争を排除する行為が独占となる疑いのあることは明らかである。しかし、中国では知的財産権分野における独占禁止法の訴訟、行政事案が正式に受理されたことはない。その主な原因として、法律の規定が原則的過ぎて実務性を備えないことが挙げられる。また、これまで多国籍企業の中国投資は技術投資の割合が高く、中国としては世界的な先進技術を導入する目的から、国際投資関連の知的財産権に対して寛容な措置を取ることが多かった。

 外国企業、とりわけその先進技術が市場で影響力を持つ研究開発企業は、知的財産権分野の独占禁止法1が中国で正式に公布された時点から、企業における知的財産権の方針制定にも慎重になる必要があるため注意するべきである。

1. 市場において支配的地位にある知的財産権の権利人が(以下「権利人」という)その権利(特許商標、著作権等)の使用許諾を拒絶する場合、差別的、不公平等であってはならず、正常な競争を不正に制限してはならない。
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1 「知的財産権分野における独占禁止法の法執行に関するガイドライン」は国家工商行政管理総局が起草を担当、現在第五稿の審議中である(以下「ガイドライン」という)。
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ビジネス取引においては、権利人はもちろんその権利の使用を許諾するかどうかを決める権利がある。管轄当局は通常、権利人に対して、競争相手又は取引相手への知的財産権の使用許諾を強制することはない。しかし、相手の市場参入には当該知的財産権の使用が不可欠であり(使用しなければ正常な経営が行えない)、当該知的財産権の使用を許諾しなければ製品の創意工夫に不利となり、消費者のニーズを満たせない場合において知的財産権の使用許諾を拒絶した場合は、権利人は独占の疑いがあるとされる。
例えば、海外の権利人(A社)が某製品のコア技術に関する権利を保有しており、当該技術がなければ製品を生産することができないと仮定する。A社と中国の製造企業(B社)は以前に提携したことがあり、B社はA社の特許を利用して製品を生産していた。当該製品の中国市場におけるシェアは相当のレベルである。その後、A社はB社との提携を終了したため、B社は当該特許を利用して製品を生産できず、B社は当該製品の市場競争に参入できなくなり、その結果、中国消費者の合理的ニーズを満たすことができなくなった。
同事案におけるA社には、市場の支配的地位を利用した特許独占の疑いがある。ガイドラインの発効後、当局は以下措置を取る可能性がある。
􀂄 工商局
独占禁止法の調査に介入し、A社が市場の支配的地位を濫用したか否かを判断する。判断要点には以下を含む。
@ 当該特許を利用して生産する製品の長期間における市場シェア
A エンドユーザー(消費者)の当該製品のニーズ量、依存度
B 当該特許技術の使用禁止による同類製品の創意工夫への影響
􀂄 知的財産権局
当該特許が強制許諾の条件に該当するか否かを決める。必要に応じて、特許の存続期間等要素にも照らして強制許諾の決定を出す。
もちろん、A社とB社の使用許諾料については、当局といえでもそれほど介入することはできないため、A社は自身の技術的優位性を利用して高額の許諾料を獲得することが可能である。
ガイドライン発効後、以下業界が当局の重点監視対象となると思われる。
􀂄 ソフトウェア業界、特に、政府機関、国のインフラ(電力、石油施設)で使用されるソフトウェア
􀂄 製薬業界
􀂄 エネルギー業界
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2. 権利人が許諾するときには、取引について相手の意思に反する不合理な付加条件を出してはならない。
不合理な取引条件には以下を含む。
􀂄 相手が改良した技術に関する独占的グラントバックを要求すること(改良技術の第三者への使用許諾を認めない)
􀂄 知的財産権の存続期間終了後に、相手が競争力を有する製品を製造、販売することや技術を使用することを禁止すること
􀂄 相手の知的財産権の有効性に異議を申し立てること(特に特許許諾において)
実務においては技術的優位性を備える企業は技術許諾契約書において制限性の条項を設定して、相手との取引に関する付加条件とすることが多いが、相手は当該取引を実現したいために交渉がしにくくなる。ガイドラインの発効後は、相手が行政、民事訴訟を通じて契約書の相応する条項は独占であると主張してくる可能性もあるため、注意するべきである。
もちろん、純粋なビジネス取引として権利人が付加する取引条件は対等なものであり(相手への不公平性とはならない)、合理的な競争を制限することもないため、当局も干渉することはない。
ガイドラインの正式公布は2013年3月頃になると予想される。ガイドラインの公布には、中国知的財産権局、商標局、版権局などの各知的財産権管轄部門が後続して公布する関連の実施細則も含む。これにより、特許権、商標権、著作権の独占禁止行為が監視されるが、それらのうち、影響が最も大きいのが特許権の分野であると考える。

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