人工光源を照らしながら植物の生育条件をコントロール
中国では安全な農産物の確保が叫ばれている。又、日本と同じ様に農業従事者の高齢化による農産物の生産量確保、若者の農業離れが目立ち始めてきた。特に上海では今後の農業を発展させる上で安全な農産物の確保が避けては通れない課題になってきた。生活水準が向上してきた上海の富裕層たちは安全で、年中おいしい野菜、イチゴの需要が生まれてきているのだ。
こうした背景の中で既に日本国内で市場化されている葉物野菜·イチゴの生産方式、完全密閉型植物工場が最近になって上海周辺で話題になっている。
この度、日系企業の数社が上海進出を計画中である。これらの植物工場は都市近郊型で専用の建物やレストランの入り口に設置されて葉やさいが生産される。
レストラン前で
この栽培方法は土壌を使わずに培養液に苗を植え、人工光源を照らしながら植物の生育条件をコントロールしながら野菜類を育てていく。この最新式の「ハイテク植物工場」を紹介する。
第16回中国工業博覧会に出品していたアグリウエーブ(株)は長野県·信州大学の研究開発から生まれた完全閉鎖型植物工場として日本国内でこのシステムを販売している。これにはコンテナ型、室内型「大型施設」、レストラン向けの小型施設がある。この販売·技術サービスは今後、アジアをはじめ中国内で展開されていく。
このアグリウエーブ(株)は2年前、ベトナムに進出済み、中国では重慶から始まって、この完全密閉型植物工場の建設が進んでいる。
さて、中国内では低コストで生産している多くの園芸ハウス施設が既に沢山あるが、この「ハイテク植物工場」はこれらとは一線を画するものである。それは葉野菜·イチゴの生産効率を最大限に引き出すために、コンピュターで温度·湿度·炭酸ガス量などを自動制御している点である。この施設内では自然環境にはまったく左右されないので、周年の生産が可能になっているのだ。更に、農薬を一切使用していない為、洗わずに食べることもできる。たとえば、葉物野菜は冷蔵庫に入れておけば2週間後でもおいしく食べられる。
これまで、この施設の建設コスト·ランニングコスト·流通コストが高くて、なかなか思うようには中国内に普及してこなかったが、コンサルタント専門企業の上海ARIグループが現地化を進めていき、中国内の普及にもこの見通しがではじめてきた。
第16回中国工業博覧会に出品したアグリウエーブ(株)
中国の都市近郊型農業の技術は今日でも先進国との間には大きな差がある。 世界各国の農業を見るとハイテクへの応用が目立っている。これらの国々では工業技術、農業経営がかなり近代的になってきているのに対して、中国内での農業経営分野はまだまだ、たちおくれている。しかしながら、この種の「ハイテク植物工場」建設の普及は今後、先進国との農業技術·経営格差を縮めていく上でそのきっかけとなっていく事も期待されている。
更に、日本から技術導入してこのハイテク植物工場に先鞭をきった企業は葉野菜やイチゴの生産を通しながら、周辺地域に大きな影響を与えていくだろうし、従来型の農業経営者たちにも「ハイテク農業技術」の良さを紹介でき、農業生産の効率性、これらをアピールしながら現代農業技術の指導性を発揮できるものと思われる。
野菜の棚がある写真、この中国の都市近郊型農業の技術はどこでも良い
この結果、地域農業の発展が促がされ、各地の農村では都市近郊型農業のテンポまでもが速まっていくであろう。
この「ハイテク植物工場」にはこのような大きなポテンシャルがある。そして、今後の農業従事者はこれまでのように農産品の生産だけではなく、市場への参加をしはじめ、政府の補助金を基礎にしながら、この種の投資活動にも参加して、企業家へと結びつき、先進国のように、新たな「農業の金融システム化」が生まれてくることになるだろう。
(編集:章坤良)