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実験室の火花によって引き起こされた「技術のビッグバン」
2015年 1月 8日16:50 / 提供:文匯報

 上海のある研究機関がある医療機器に関する知的財産権を持っている。製品化に大きな期待をかけていたのに、企業と交渉したところ、1000万元しか出してくれないという残念な結果が出た。知的財産権の管理と製品化の業務を展開している盛知華社がこの取引に介入すると、発明者の腰を抜くほどの成果を上げた。ある企業がなんと5.4億元の使用許可料を出してくれるのだ。しかも、企業が開発費用を全額負担しただけでなく、後期の売り上げから割戻金も支払ってくれるという。
 技術仲介サービスによる価値発見の能力が、上海の各レベルの政府から注目を集めている。このほど開かれた中国共産党第10期上海委員会第7次全会において、研究開発の成果の製品化·市場化における技術仲介サービスの役割が何度も言及された。研究院や大学、企業が集中している徐匯区は、これまで技術のイノベーションにおいて多額の資金投入のわりに利益が少ないことに困っていた。しかし、盛知華をはじめとする技術仲介機関の働きによって状況が一変した。専門な技術仲介サービスが、より多くの実験室の「火花」を「技術のビッグバン」に化していく。

「驚くべき一躍」の裏には
 1000万元から5.4億元にジャンプさせたのはこのケースに限らない。盛知華は設立以来の4年間、特許権と技術の利用許可に関する取引を20件以上完成し、契約金額が12億元に上っている。そのうち、世界の大手製薬メーカーや農業企業に技術の使用許可を授与したり所有権を譲ったりしたケースがいくつもあった。

 「知的財産権の管理サービスは判子押しや書類の提出といったものではない」と盛知華の胡煒副社長が語った。胡副社長は囲い込みの例をもって説明した。「囲い込むときは、範囲が狭いと、その分市場の価値も低くなる。しかし、範囲を広げれば広げるで、隙ができてしまい、人に抜き取られることもある。」

 「囲い込み」の第一歩は発明に対する評価だ。ある発明が特許が取得できるか否かについて、世界規模で検索したうえ、その商業的な価値を評価するのだ。これによって、「団子」だけ残って、「花」が除外されてしまう。次に、特許の管理と育成を通してその価値を高める。これについて、同副社長は実例を挙げて説明した。ある機関がすばらしい発明を持っているけれども、提出した特許の適用範囲が肝がんのみになっていて、応用の価値が十分生かされていなかった。それで、盛知華は利便性のある実験を設計し、特許の応用範囲を肺がんや前立腺がんに拡大したうえで、もう一度特許権を申請し、一挙して国内市場の王座に君臨させた。

 最後の一環は市場開拓と取引価格の見積で、いわゆる「驚くべき一躍」だ。同副社長の話によると、1000万元から5.4億元への大躍進は専門かつ複雑な作業だ。そのうち、特に注意を払うべき点があった。この知的財産権には、まだ公開されていない重要な技術革新があった。盛知華はこの技術革新のために国際特許を取得し、それを切り札に企業と特許権利用の交渉を始めた。「発明者には特許のことはよくわからず、商売はできない。企業には技術がわからず、その価値が正しく把握できない。つまり、技術仲介サービスの専門業者がなければ、たとえ金のなる木のような発明でも埋もれてしまう」と同氏は語った。

値打ちのあるイノベーションこそ特許だ
 しかし、技術仲介サービスといっても、実はそれほど新しい産業ではない。この業界にはずいぶん前から特許権申請を手伝ってくれる代理人がたくさんいた。しかし、彼らの目当ては特許権の取得で、特許権が利益につながるかどうかは、彼らの関心ではない。それで、数多くの研究成果が放置されたまま、製品化も実用化もされていない。「役に立たない特許ばかりで、使えるものは少なすぎる」と同氏は嘆く。

 盛知華の悩みは、徐匯区の悩みでもある――区内には国家レベル、市レベルのハイテクパークや大手研究機関、医療機関、重点実験室が集まっているのに、資源優位のスピルオーバー効果が見られない。また、徐匯区の一部のハイテク企業は、コストの高騰と環境制限のため、技術系メーカーが中心市街地から撤退し、研究開発型の企業も多くの課題を抱えている。
 「産業と研究開発の力を合わせることなしには、新しい原動力が生まれない」と徐匯区王宏舟副区長が環境と成果のミスマッチに悩んでいる。区内の一人あたりの特許権取得件数が52.6件に達し、市の1位を占めているものの、高い資金投入にしては経済的利益が少ない。

 「専門な技術サービス産業が未熟であるところに問題がある」と同副区長が指摘した。技術仲介機関による「発掘」なしには、特許権の実用的な価値を軽んじ、その取得件数だけを求めるという事態になりやすい。税金の払い戻しを目当てに、特許権を申請する企業もある。「税金の払い戻しのためだけに特許権を申請するのなら、イノベーションは机上の空論になってもしかたがない」と王副区長は語った。

イノベーションにふさわしいプールを掘る

 「机上の空論」という事情を変えるためには、徐匯区は技術イノベーションサービスモデルエリアを構築し、特に知的財産権サービス、技術金融サービス、技術開発サービスなどの技術サービス産業の発展に力を入れた。現在、区内の各種の知的財産権サービス機関が130以上あるほか、いくつものエンジェル·ファンドやシード·ファンドが導入され、200近くのハイテクベンチャー機関が区内に集まっている。2013年、技術サービス産業の売り上げが515億元に達した。

 同区の莫負春区委書記は次のようにコメントした。技術サービス産業に強いテコ入れの機能があるので、企業のイノベーションを促し、新しい業態を生む働きがある。さらに重要なのは、技術サービスこそ市場を活性化させる要素であり、資源の配置の最適化を図る中堅産業だ。

 「企業が「足による投票」でイノベーション精神に満ちたエリアに集中してくるわけだから、政府としては、イノベーションにふさわしいプールを掘り、イノベーション精神にあふれる環境を作らなければならない。そうすれば、イノベーション能力のある人材が集まってきて、新業態も容易に生まれる」と王副区長は池·エリア·産業の関係について述べている。

 「池堀り」の重要な一環として、徐匯区は上海知的財産権サービス産業連盟を結成し、盛知華社、上海特許商標事務所、上海シリコン知的財産権取引センターなどの専門機関との連携を通して、より多くの知的財産権の製品化を推進しているという。