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ピーク過ぎた日本企業の対中投資 撤退開始ではない
2014年 5月 28日15:58 / 提供:人民網日本語版

株式会社国際協力銀行(JBIC)業務企画室調査課の阿由葉真司課長によると、同社の最新の調査結果をみると、日本企業が海外投資で最も潜在力があると考える国のランキングで、中国が初めて首位から脱落して4位になり、インドネシアが首位に浮上したという。「中国経済週刊」が伝えた。

JBICは政策系銀行で、日本政府が政府開発援助(ODA)を対外的に実施する際の主要執行機関の一つだ。過去20数年にわたり日本企業に一連の同じ質問をし、企業の回答から日本企業の投資の最新動向をくみ取っている。年度調査報告は業界でしばしば日本企業の海外投資をながめる重要な窓口とされ、日本政府が対外経済政策を制定する場合の有益な参考資料とされている。

最新の調査報告が完成した後、阿由葉課長は次のように述べた。2013年以降、日本の製造業の対中投資はピークを過ぎた。日本企業の20数年にわたる中国で生産し、海外に再輸出して販売するという対中投資モデルが重大な転換期を迎えている。

▽投資ピークを過ぎたことは撤退の始まりではない

阿由葉課長は次のように述べた。ここ数年、中国は労働力コストが上昇し、日本企業の予想の範囲を超えた。中国はもはや安価な労働力が豊富にある国ではない。調査結果によると、中国を第一の投資先と定めない日本企業が出てきた主な原因として、中国の労働力コストの上昇と労働力を確保することの難しさ(41.2%)、他社との競争の激化(20.6%)、中国経済の減速(26.0%)、中日の政治関係の動き(12.2%)などが挙げられる。

もう一つ重要な原因がある。JBICが調査した日本企業のうち、77.9%が中国に工場を1カ所以上建設しており、華東地域と華南地域に1カ所ずつ建設しているという企業も少なくない。実際、日本の企業で中国に投資できる力のあるところはほとんどがすでに投資を行っており、対中投資が新たに増える余地は徐々に小さくなっている。

日本企業の対中投資はピークを過ぎたが、これは撤退が始まったということではない。阿由葉課長によると、調査を行った企業のうち、中国業務を縮小する、あるいは中国から資本を引き上げるとしたところは3.5%にとどまった。「中国業務が縮小した」などと言われているが、調査対象になった日本企業によれば、最近の中国業務の調整・整頓の過程で、中国各地に分散していた工場を1カ所に集中させる計画があり、数字の上では中国業務の項目数は減少したようにみえるが、投資規模にはそれほど変化はない。労働力コストの上昇により最終的に中国から撤退するとした日本企業は、調査全体で1%もなかったという。

日本貿易振興機構(ジェトロ、貿易・投資の促進に取り組む日本の政府機関)の関係者はこのほど広東省などで調査研究を行い、日本企業が中国から東南アジアへと確かに移転していることを発見した。主として一部のアパレル産業が動いているという。また中国のアパレル産業の多くも東南アジアへの移転を開始しており、日本企業の変化は中国企業よりゆっくりだという。

阿由葉課長によると、調査対象となった日本の在中国企業のうち、52.7%が中国で現在の経営状況を維持すると答え、43.6%が引き続き中国業務の強化・拡大に備えるとした。中国は投資の潜在力が最も高い国ではないが、だからといって中国業務の規模が減少するとは限らないという。

▽日本企業の対中投資は「市場に接近」

中国業務を強化・拡大しようとしている日本企業は、中国の市場規模や消費力に期待を寄せている。現地で生産し、現地で販売するというスタイルは、過去20数年にわたり中国で生産し、再輸出して海外で販売するとしてきた対中投資モデルからの大きな転換だ。

三菱樹脂聚◆(「酉」に「旨」)膜有限公司は昨年7月、江蘇省蘇州市の国家ハイテク開発区で新たな生産ラインを稼働させ、液晶テレビやコンピューターのディスプレー、携帯電話の画面に使用する薄膜の生産をスタートした。同公司の志波博幸総経理(社長)によると、親会社の三菱ケミカルは世界各地で似たような生産工場をたくさん設立している。生産規模を拡大する理由は、市場に接近し、お客様の隣で技術改良を進めるためで、速やかに調整を行い、協力を進め、優位に立つことができているという。

また志波総経理によると、世界最大の液晶市場は東アジアだ。蘇州に工場を設立したのは、中国が徐々に液晶テレビ、パソコンディスプレー、携帯電話の世界的な主要生産基地になりつつあるためだという。こうした電子製品にはポリエステル膜を欠かすことができず、中国の液晶製品の需要が増加すれば、ポリエステル膜を取り扱う企業が中国に投資して工場を建設するのは当然のことだといえる。

日本の複数の年で取材してわかったことは、日本の労働者は系統だった職業訓練を受けており、流動性が低く、製造した製品の廃棄率は低く、給与は中国より高いが、計算してみると日本企業の実際の給与支出はそれほど多くない。また日本では政府との関係を処理するのが相対的に簡単だといえる。

志波総経理によると、唯一の違いは、中国が市場により近いことだ。川下の企業が使用する量によって生産する量を調節し、在庫ゼロを実現することが

できるのだ。日本で生産した製品を中国に輸出した場合、中国市場における企業の急速な需要の変化に対応することは難しい。

▽自動車は引き続き重要投資分野

日本企業は市場に接近するために中国で追加投資を行い、自動車メーカーは最もこうした傾向が強い。10数年前にトヨタの在中国トップは、トヨタが今後中国でどれくらい車を売れば成功とみなすかと質問された時、間髪を入れずに「5万台、市場シェア10%」と答えた。

今年2月にこのトップに再び質問した際は、「110万台、5%」となっていた。

今年4月、三菱化学(中国)商貿有限公司は1台のコンセプトカーを横浜から上海まで輸送し、会社のロビーでの常設展示とした。同公司の尾首貴士董事長(会長)は、「これから中国の自動車販売台数は2千万台以上を維持し、さらに拡大する可能性もある。同公司は自動車部品販売の面で、中国での生産と販売を拡大していく」と述べた。

専門家によると、今後しばらくのあいだ、日本企業は自動車をめぐって大きく進展する可能性があり、別の分野でも、たとえば液晶製品に用いられる薄膜などでも、相当大きな発展の可能性を抱いている。日本企業は今、家電の繁栄期は通り過ぎ、自動車分野で技術面やブランド面の強みを発揮し始めているという。

日本の経済産業省の田中英治・北京駐在員によると、日本には環境問題が非常に深刻だった時期があるが、そこを通り抜け、今は新エネルギー自動車、省エネ・環境保護などの面で、中国とよい協力を進めるチャンスを迎えているという。田中氏は現在、中日両国の新エネルギー方面での協力を積極的に推進している。

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