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W杯はブラジル経済のカンフル剤になりにくい
2014年 6月 10日16:51 / 提供:新華社

 

 ブラジル経済の成長減速を受けて、国際格付機関スタンダード&プアーズは3月末に、ブラジルのソブリン債務の格付けをBBBからBBB-に下方修正した。ブラジル政府は、ワールドカップ(W杯)の開催は国家経済に活力を与えるよう期待しているが、W杯開催前のブラジル国内の準備状況の遅れは気がかりで、政府の期待もそう簡単に実現できるものではないだろう。

 ブラジルのエコノミストや政府当局は、W杯開催のメリットとして、外国人観光客の増加、経済総量の増加、空港利用者の倍増、中小企業の収益、雇用の増加、税収増、国際イメージアップなどを列挙している。

 一番恵まれているのは観光部門である。ブラジル観光省の推計では、6月と7月に、ブラジルを訪問する外国人は60万人に達し、平均消費もいつもより42%増え、68億5000万レアルに達する。外国人観光客の消費は昨年では118億レアルとなった。しかも、300万人のブラジル人観光客は183億5000万レアルの消費を実現している。

 W杯をを控え、試合が開催される12の都市の空港は増改築が行われた。W杯開催までに完成できない空港もあるが、サービス品質と運搬能力の改善が改善された。

 W杯の開催に恵まれて、ブラジルの中小企業の収益額は2010年から2億8000万レアルに達した。ブラジルの中小企業経営支援センターの推計では、W杯の閉幕までに収益額は5億レアルに達する。中小企業の収益はブラジルの国内総生産(GDP)の20%、雇用の創出は全国の60%を占める。

 スタンダード&プアーズによると、ブラジル財政の行き詰まりは現在だけではなく、今後数年も改善できないだろうとしている。しかも、10月の大統領選までに、政策不安など不確定要素が多々ある。大統領選後も、ブラジル信用格付け再引き下げの可能性はないわけではない。

 ムーディーズによると、一部の特殊部門はW杯の開催に恵まれて収益が増えるが、W杯は永遠にブラジル経済成長を潤すわけではない。外食産業、ホテル業界、レンタカー、広告業界、テレビ中継などは、W杯開催期間に一番多くの収益が得られる。32日間にわたるカーニバルで、しばらく売上高を伸ばすことができるが、利益に大きな影響を与えることはない。しかも、交通渋滞と労働力占用、稼働日の減少は対外貿易にも影響する。と示した。