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安倍首相のちらつかせる?平壌カード?、その意図は?
2014年 6月 6日16:47 / 提供:チャイナネット

「安倍首相が訪朝するかもしれない」という情報が世論に衝撃を与え、大きな関心を集めている。安倍首相は記者に対し、訪朝について「今、判断するのは早計だ」と語ったが、こうした曖昧な態度は、訪朝の可能性が高いことを示すものと受け止められている。中日関係や日韓関係など周辺外交に難題を抱えながら、安倍首相が突然「平壌カード」を切ったのにはどのような意図があるのか。

支持率を高める手段に

安倍首相訪朝の情報は、日朝両国が5月29日に発表した両国の合意にかかわる。この合意には、朝鮮側が日方人拉致問題についてできるだけ早く再調査することや、日本側がその見返りとして朝鮮に対する経済制裁を解除することが盛り込まれている。合意達成は、日本の主流メディアによって安倍外交の重大な成功として報道された。

日朝の急接近を促しているのは何か。ある日本メディアによると、消費税が4月1日に5%から8%に引き上げられたことで、4月と5月の消費は大幅に縮小し、市場には悲観的なムードが漂っている。さらに深刻なのは、企業や経済学者が「アベノミクス」とりわけその「第三の矢」とされる成長戦略に疑いの目を向け始めていることだ。こうした状況下で、安倍首相が拉致問題の交渉を利用し、外交上の「平壌カード」を切ることが、支持率を高めるための選択肢の一つとなった。

米国との協議なしには行動できず

安倍首相が訪朝するのか、その時期がいつになるかは、メディアの関心の高い重大問題となっている。だが安倍首相の訪朝は簡単な問題ではない。米国と協議することなしには、安倍首相は平壌を訪問できず、金正恩と会うこともできない。つまり安倍首相の訪朝は米国の態度にかかっている。

だが東北アジアの国際政治で、米国の最大の頭痛のタネになっているのが、朝鮮の「核保有」の問題だ。米国が朝鮮に圧力を加えて成果を得られていない状況で、朝鮮に対する経済制裁の解除を日本が突然宣言し、さらに安倍首相訪朝のニュースが伝わってくれば、米国人の目に安倍首相はどう映ることになるか。彼らが不愉快に感じることは間違いない。安倍首相が米国に先駆けて訪朝するためには、米国を説得するための十分な理由を見つける必要がある。

訪朝で成果を上げられるか

安倍首相が訪朝するかのカギとなるのが、安倍首相が朝鮮で、支持率の上昇につながるような十分な成果を上げられるかという問題だ。ある日本メディアによると、安倍首相は金正恩に好感を持っており、「オバマより金正恩の方が気が合う」と周囲にこぼしているという。こうした情報からも、安倍首相が訪朝に大きな期待をかけていることがわかる。

だが外界に対して敏感な朝鮮人の目に、安倍首相は信頼に足る人物として映っているのか。安倍首相の過去の態度は説得力に乏しいものと言わざるを得ない。安倍首相はかつて、小泉内閣の官房副長官として訪朝したが、強烈な反朝鮮の傾向を持ち、当時の日朝の取り決めの履行に反して、家族訪問のため日本に一時帰国した日本人拉致被害者を朝鮮に戻すことに断固として反対した。さらには拉致被害者の「全員生存、全員帰国」まで朝鮮との国交樹立はないと言い切っている。こうした過去を見る限り、安倍首相は「十分には信頼できない交渉対象」と判断されている可能性が高く、平壌訪問が成功したとしても、成果は限られたものとなる可能性が高い。(日本杏林大学教授 劉迪)