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安倍政権発足1年、広範な支持は得難く
2013年 12月 26日14:40 / 提供:人民網日本語版

12月5日の参議院国家安全保障特別委員会で中川雅治委員長(左)に詰め寄り、特定秘密保護法案の可決を阻止しようとする野党議員。 

 

日本の安倍晋三首相は26日、第2次政権発足から満1年を迎えた。毎日新聞が21、22両日に実施した全国世論調査では内閣支持率は49%にまで下がった。支持率が最高だった今年3月と比べると20ポイント余りの下落だ。安倍氏が過去1年間に経済、政治、外交分野で推し進めた各政策は、日本国民と国際社会に憂慮を抱かせた。

■「アベノミクス」の先行きは不透明

安倍氏は今年1月28日に衆議院本会議で行った所信表明演説で、大胆な金融緩和政策、機動的な財政政策、経済成長戦略を実施して、日本経済の回復に尽力すると表明。その後、安倍内閣は「アベノミクス」の「3本の矢」を次々に放った。円は安倍内閣発足時の1ドル85円から12月25日には1ドル104円にまで下落し、国内総生産(GDP)は4四半期連続でプラス成長を実現した。安倍氏は12月25日、発足後1年間の経済政策を振り返り「日本経済はまさにアベノミクスの3本の矢によって、マイナス成長からプラス成長への大きな転換を果たした」と強調した。

統計的には日本経済にはいくつか好転の兆しが生じているが、現在の景気は来年4月1日の消費増税前の「駆け込み需要」に支えられている面が大きいと懸念する経済学者が少なくない。人民日報記者は大分県や三重県などの日本の都市で取材した際、依然としてさびれた商店街が少なくなく、アベノミクスはまだ経済的活力をもたらしていないと地元市民が感じていることに注目した。

 大西広・慶応大学経済学部教授によると、日銀が11月に発表した統計では企業物価指数が前年比2.7%増加し、2%の目標を達成した。だがその最大の原因は円安による輸入物価の上昇だ。輸入物価は前年比16.9%上昇し、輸入品を購入する消費者、輸入飼料を使用する畜産業者、石油燃料を使用する輸送業者と漁師に大きな打撃を与えた。庶民と輸入業者の利益を犠牲にすると同時に、輸出企業は大きな利益を上げた。来年の消費増税後、一般市民の負担はさらに増え、消費はさらに落ち込むと見られる。

■強硬政策で支持率急落

安倍氏は就任当初は集団的自衛権行使の地ならしとして憲法9条改正をもくろんだが、国民の強い反対に遭って作戦を変更し、憲法解釈の変更による集団的自衛権の解禁を愚かにももくろみ始めた。12月17日には国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を閣議決定。これらは防衛・安保分野を全面的にカバーする綱領的政策文書であり、日本の今後5〜10年間の軍拡・戦争準備計画に明確な行動指針と政策保障を提供すると同時に、日本が平和憲法の制約を脱して、再び武力によって他国の領土を乗っ取るための地ならしをした。24日に閣議決定した2014年度予算案では、防衛費は前年度比1310億円増の4兆8848億円にも達し、2年連続の増加となった。

安倍氏は以前、侵略戦争と植民地支配について反省とおわびを表明した村山談話を見直す方針を表明。4月22日の参議院では「村山談話をそのまま継承しているわけではない」と表明し、翌日には「侵略の定義は、学界的にも国際的にも定まっていない」との荒唐無稽な発言をした。世論の大きな圧力を受けて、安倍氏は5月15日、村山談話について全体として受け継いでいくと述べたが、村山談話の核心である過去の侵略戦争と植民地支配に対する反省とおわびを継承するとは表明しなかった。しかも安倍氏は、日本がかつてアジア諸国に対して侵略と植民地支配を行った歴史をいまだに認めていない。

共同通信の分析によると、安倍氏は今年7月の参院選での圧倒的勝利を受けて政権掌握に対する「自信」を強め、経済立て直しとデフレ脱却を優先する当初の「安全運転」路線を変更して、「国家安全保障会議」創設や「特定秘密保護法」制定といった保守的色彩を帯びた強硬政策を推し進め始めた。特定秘密保護法に対して世論は安倍氏の想像を超える反発を示し、支持率は急落し、首相に返り咲いてから1年で状況には微妙な変化が生じつつある。

■遠交近攻は一方的願望

安倍氏は就任から1年で29カ国を訪問。ASEANの全加盟国だけでなく、米露など大国も訪問した。安倍氏はアベノミクスを売り込んで新市場と安定的エネルギーを探し求める一方で、「価値観外交」を大きく掲げて中国封じ込めに周辺諸国を引き込もうとした。アナリストによると、安倍氏の「遠交近攻」策略に国際社会は賛同していない。東南アジア諸国の大多数は日本の技術と投資には歓迎を表明するが、中国に共同対処するとの日本の「招待」に対しては「避けて語らず」だ。同盟国である米国でさえ、慰安婦や憲法改正の問題における安倍内閣の右傾化に繰り返し懸念を表明している。

天木直人・元駐レバノン日本大使は11月11日「アジア諸国との関係が悪ければ、たとえ1カ国との関係が良くても、日本に未来はない。アジア諸国との関係をきちんとできない安倍晋三氏は日本の首相として不適任だ」と表明した。

纐纈厚・山口大学副学長は人民日報の取材に「日本は憲法の原点に立ち返り、日米同盟と武力に頼るのではない真の平和外交を構築して、アジアの各隣国の信頼を得る必要がある。安倍氏は就任から1年間、最も重要な隣国である中韓と首脳会談を行っていない。こうした不均衡な外交政策は真の外交では決してない。首相に返り咲いてからはずっと外交『不在』状態にあると言っていい。この状態から脱するため、非同盟、全方位的外交の構築が喫緊の課題だ」と述べた。

大西氏も「安倍氏の政治的基盤は日本の衰退に我慢できず、中韓両国の台頭を憂慮するナショナリストにある。これが対等・互恵的な東アジア国際秩序の構築を妨げており、過去の侵略戦争の肯定にもつながる。中韓および米国を含む各国は共に安倍政権の外交姿勢を厳しく批判すべきだ」と表明した。

安倍氏の内外政策の右傾化は野党と専門家、学者の批判だけでなく、一般市民の反対も招いている。

藤田高景氏(64)は、安倍政権が村山談話改竄をもくろんでいることに鑑み、複数の学者やジャーナリストと共に、今年11月11日に「村山談話を継承し発展させる会」を設立した。藤田氏は人民日報に「安倍晋三氏は首相に返り咲いてから、歴史問題で誤った発言を繰り返して、日本国の運命を危機にさらさせた。再び戦争を発動しようと企てる安倍政権の行動を必ず阻止しなければならない。村山談話の意義を再確認し、村山談話の精神の後の代に伝え、非戦、平和国家を核心とする日本国憲法をめぐり様々な活動を展開して、国際社会の信頼を勝ち取らなければならない」と表明。「日本政治は全面対決の時代を迎えつつある。右傾化との闘争だ」と語った。(編集NA)