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第3回中日韓FTA交渉 実質的議論には至らない
2013年 11月 27日9:12 / 提供:人民網日本語版

 中国、日本、韓国の間の自由貿易協定(FTA)をめぐる第3回交渉が26日から日本の東京で行われる。4日間の交渉ではさまざまな議題について話し合いが行われる予定だ。ある専門家の指摘によると、交渉の可能性は大きいが、敏感な問題を抱えた産業や交渉に臨む各国の積極性といったさまざまな要因に制約されて、交渉の進展は引き続き緩やかなものになり、今回の交渉は交渉モデルをめぐる話し合いにとどまり、実質的な議論には至らないことが予想されるという。「経済参考報」が伝えた。

 今回の交渉で、3カ国は商品、サービス、投資、競争、知的財産権、電子商取引(eコマース)といった分野の作業チーム会議と、環境、政府調達、食品の各分野の専門家による対話を行う予定だ。韓国の産業通商資源部によると、現在、中日韓3カ国は交渉の初期の段階にあり、交渉の枠組と重点に的を絞って作業を進めているという。

 中日韓FTA交渉は東アジアの経済貿易の枠組を形作る重要な構成要素として、2012年11月に動き出し、今年3月に韓国のソウルで第1回交渉が、7月30日から8月2日にかけて上海で第2回交渉が行われた。過去2回の交渉で、3カ国は自由貿易協定のメカニズム配置、交渉の分野、交渉モデルなどについて話し合った。

 10月22日と23日に、3カ国はソウルで中日韓FTAの第3回交渉の準備会議を行い、商品貿易の交渉モデルと第3回交渉の具体的な段取りについて話し合った。日本の共同通信社の報道によると、3カ国は準備会議で、15年末までの交渉終了を目指す姿勢を明らかにした。これは中日韓が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に加盟する他の13カ国との合意達成を目指す期限でもある。

 中日韓はいずれも世界の重要な経済体であり、互いに重要な貿易パートナーであるとともに重要な輸出入市場でもある。世界の産業チェーンの分業体制では密接に協力しあっている。12年の3カ国の経済規模は14兆3千億ドルに達し、世界の経済規模の20%、アジアの経済規模の70%をそれぞれ占めた。また同年には3カ国の輸出入額が5兆4千億ドルに達して、世界全体の35%を占めた。韓国の連合ニュースによると、中日韓がFTAを締結すれば、北米自由貿易協定(NAFTA)と欧州連合(EU)に次ぐ世界3位の市場になるという。

 ある専門家は、3カ国の自由貿易圏が誕生すれば、3カ国の経済貿易の連携が強化され、東アジア地域の経済の融合を促進することができ、米国が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のプラットフォームを通じてアジア・太平洋地域に突きつける挑戦に対抗することもできるという見方を示す。

 可能性は大きいが、専門家の中には、中日韓自由貿易圏の構築は、敏感な産業の存在や政治的環境といったさまざまな要因に阻まれて、長く苦しい道のりになるという見方をする人もいる。

 中国商務部(商務省)国際経貿関係司の孫元江副司長によると、経済分野では、中日韓3カ国の水準の開きが大きく、産業の分業もバランスが悪い。経済発展レベルの開きは市場の容量、市場の構造、消費構造の差異を招き、製品の参入基準に対する要求の不一致を招き、ひいては貿易や投資などの各分野における障害と摩擦を増大させるという。

 孫副司長は次のように指摘する。3カ国の敏感な産業に対する関心が交渉を著しく困難なものにする。たとえば日本の敏感な産業には農業、鉄鋼産業、エネルギー産業、造船業、サービスや繊維などの加工産業がある。韓国は農業・水産業、エネルギー産業、衣類や繊維などの加工産業、中国は化学工業、自動車産業、電子情報産業、機械設備産業、金融業、小売産業、ミドルエンド・ハイエンド製造業だ。中でも農業は中日韓FTA交渉における難題の筆頭だ。

 また中日韓自由貿易圏の構築について、各国の思惑にはずれがある。全体としていえば、中韓の姿勢は積極的だ。中韓は中韓FTA交渉をすでにスタートしており、最近では第8回交渉が今月18日から22日にかけて韓国の仁川で行われ、双方は合意の草案と関税減免リストの内容について話し合った。

 一方、日本の中日韓FTA交渉推進の意欲は、TPP交渉参加の影響を受けるとみられる。日本は今年7月下旬、米国が主導するTPP交渉への参加を表明したが、中国と韓国はこの交渉には参加していない。

 中国社会科学院(社会科学アカデミー)世界経済・政治研究所国際貿易研究室の宋泓主任によると、現在の全体を覆うムードを考えると、日本の安倍政権の態度は中日韓FTA交渉の進展にとってマイナスだ。今の日本の戦略的な傾向は米国に追随するというもので、TPP交渉を優先させており、中日韓自由貿易圏への注目度は相対的に低いという。

 宋主任は、中日韓FTAの第3回交渉は3カ国の腹のさぐり合いや模索のプロセスとなり、交渉のモデルをめぐる話し合いが展開し、実質的な議論には至らないと予測する。

 また宋主任によると、FTA交渉はさまざまな駆け引きを経た長期的なプロセスになるという。中韓FTAは第8回交渉になってやっと双方が関税の減免を希望する、あるいは希望しない品目のリストを話し合う段階にたどり着いた。これからのプロセスはリストを対照し、対立する内容について長期にわたる苦しい駆け引きを行うものになるとみられる。交渉が価格について話し合う段階にたどり着かなければ、実質的な内容に言及することはできない。現在の中日韓FTA交渉はまだこのような段階には到達していない。(編集KS)