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東京オリンピック開催を前に懸念される3つの悩み
2013年 10月 3日10:34 / 提供:チャイナネット

 2020年第32回夏季オリンピックの開催地に東京が選ばれた。2度目の開催はアジアで初めてである。日本の誇りであるだけでなく、アジアの誇りと言えるだろう。

 中国に住む多くのスポーツファンにとって、時差の少なさや距離の近さなどから、東京開催はメリットが数多い。一方で、日本の政治や経済、環境などの面で、果たして東京が素晴らしいオリンピック大会開催できるのか、懸念されることも少なくない。

 1.政治的な問題

 日本がオリンピック開催決定に沸いているとき、日本の右翼団体が大久保で嫌韓デモを行った。彼らは公然と「日韓断交」をスローガンにし、「在日韓国人問題を解決せよ」と政府を煽動した。世界各国の平和交流と公平な競争を旨とするオリンピック大会のはずが、日本の右翼勢力は韓国人排除の好機ととらえ、人々の注目を集めたのだ。

 「右翼たちはオリンピック招致成功によって、国際社会が日本の右傾化を容認、場合によっては賞賛していると捉えている」と懸念する専門家もいる。さらには、日本政府が右翼勢力と合流することで、2020年の東京オリンピックがナチス統治下の1936年ベルリンオリンピックの再来となると懸念する人すらいる。

 日本問題の専門家で、中国社会科学院日本研究所の副所長である王暁峰氏は、オリンピック招致の成功は日本の国際イメージを高め、国際的な影響力を高める最も直接的で最も容易な手段だと指摘する。PRすることはかまわないが、中国や韓国など周辺諸国の外交的立場が強硬であり続けるならば、その効果は限定的だろう。特に中日両国関係は釣魚島問題で膠着状態にあり、両国の争いを回避する余地が少ない。王暁峰氏は、オリンピック招致の成功によって日本政府の釣魚島問題に対する姿勢が軟化するかもしれないが、コントロール範囲内を維持するだろうと指摘。少なくともオリンピック前には武力衝突を回避し、戦争のない状態が保たれると述べる。

 現在、日本のオリンピック招致の成功で2つの発展方向が考えられる。ひとつは平和環境を作り上げ、周辺諸国を刺激する言行を減らすことである。それによって政治問題や軍事問題がオリンピック大会の妨げにならないようにするのだ。もうひとつは、経済成長に乗ってさらなる軍事拡大をもくろむことである。もし後者ならば、東京オリンピックに大きな影響を与えることになるだろう。

 2.開催費用

 これまでのニュースを見ると、東京オリンピックの予算はわずか33億ドルとまれにみる少なさである。北京オリンピックの10分の1でしかない。

 1964年の東京オリンピックでは、競技場建設などで3000億円の予算を投入している。また新幹線など交通機関の建設にも数兆円を投じた。これらの投資は当時のGDPの10%に当たる。しかし現在、日本政府は同様にやりたいと思っていても先立つものがない。債務が1000兆円ある状況では、大規模な予算を使ってオリンピック関連施設を建設することなど無理な話なのである。

 もちろん東京のインフラはすでにかなり整っており、初期投資は少なくて済む。しかしこの予算はさすがに少額に過ぎる。近年のオリンピック大会を見ると、予算と実際の金額が異なったケースが多い。アテネ大会の当初は56億ドルだったが、最終的には146億ドルに膨れ上がった。北京大会も当初予算は22億ドルだった。直近のロンドンオリンピックは93億ポンドを費やしたが、当初予算の24億ポンドを大きく上回った。

 2020年に行われる東京オリンピックは、経済停滞する日本で開催される。高度経済成長前夜だった1960年代の日本とは異なるのだ。

 現在、日本の債務は欧州のそれと比べても深刻である。2012年の日本の債務はGDPの214.3%に達する。ギリシャやイタリヤをはるかに超える世界一位だ。また安倍晋三氏が首相になって以降、新たな国債の発行は53兆円以上に上る。これは2012年のGDPの11.2%である。最新データによると、日本の債務総額はすでにGDPの250%を超えている。

 アテネ大会と比較すれば、ギリシャではオリンピック大会での出費がかさんだ上、短期的な経済成長をもたらすこともできなかったことから、その後債務危機の悪夢にうなされることになった。安倍首相がオリンピックを日本経済の停滞を救うものとみなせば、逆に日本はギリシャの二の舞になる可能性もある。

 3.放射能漏れのコントロール

 2011年に大津波があって以降、放射能問題が日本を悩ませ続けている。「放射能漏れ問題」は、東京開催の安全性を考える上で常に問題となってきた。招致検討段階において、東京は常に「放射能漏れ」の影から抜け出すことはできなかった。安倍首相は9月7日、国際オリンピック委員会(IOC)第125回総会において、この件についてコントロールできていることを「保証」し、オリンピック開催に影響しないことを訴えた。首相本人が責任を引き受けたのだ。

 しかし安倍首相の発言に対する疑義が、各方面から聞こえることになった。共同通信社は、日本政府は汚染水漏れ問題に対する完全な解決策を持たないと指摘している。日本政府による地下水処理の失策は、海洋汚染の長期化を招き、「海のチェルノブイリ事故」となっている。共同通信社の19日付記事によると、気象庁の気象研究所主任研究員である青山道夫氏がおととい、オーストリアのウィーンで開かれた国際原子力機構の科学フォーラムで発表し、福島第一原発北側の排水口から毎日、約600億ベクレルの放射性物質が流れ出していることを明かした。

 東京都知事の猪瀬直樹氏は9月20日、汚染水を完全にコントロールするためはまだ時間を要すると発言した。国際原子力機構の総幹事である天野之弥氏も先ごろ、福島原発事故が2020年の東京オリンピックに影響を与えるかどうかは現在判断できないと述べている。

 アナリストは、2020年の東京オリンピックがどんなものになるかは、「核問題」の解決にかかっているとの見方を示す。日本が原発事故の疑念を払拭できるかどうか、そして新エネルギー導入の見取り図が提示できるかどうかを、各界が注目している。安倍首相の「保証」は気休めにはなったが、それが本当かどうかを判断するには、まだ時間を要するようだ。

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