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円安は日本経済を押し上げるか
2013年 3月 3日10:22 / 提供:人民網日本語版

 安倍政権の強い勢いと圧力を前に、独立性を守ろうとしていた日本銀行はついに「屈服」した。今年初の金融政策決定会合で、日銀は無担保コールレートを0-0.1%で維持することのほか、インフレ目標を1%から2%に引き上げることを初めて明確にした。また、期限を設けずに国債などを買い続ける無期限緩和を2014年に導入する方針を表明した。これによって20年近くで最大の量的緩和の扉が開かれた。  

 日銀は2012年以来、すでに5回量的緩和を実施し、資産買入等の基金はすでに101兆円という空前の規模になっている。このため日銀が金融政策の「水門」を完全に開いた今、国際世論からの非難の声も当然小さくはない。だが翻って現実を見ると、「全世界の中央銀行の中央銀行」と称される米連邦準備制度理事会(FRB)はQE1からQE4まで量的緩和ツールの使用を隠し立てしていないし、欧州中央銀行(ECB)もLTROからSMP、そしてOMTと量的緩和を一歩一歩進めている。欧米は危機から脱して景気を刺激するためにしたい放題のことをしていいのに、日本が20年の長きにおよぶデフレから脱するために自分のやり方を通しては、なぜいけないのか?したがって、無制限の量的緩和を力強く推し進める安倍政権は、国際世論を前にしても全く堂々としていられる。無制限の量的緩和によって市場に潤沢な流動性をもたらし、円安へ誘導して輸出を刺激することが日本政府の最重要政策の1つだ。サブプライム危機以降、円高は30%も進行した。この影響で日本の貿易は2012年に6兆9200億円もの記録的赤字を計上した。貿易赤字は2年連続でもあった。国内市場が小さく、主に輸出に依存している日本にとって、こうした結果が破滅的なものであることは間違いない。このため日本政府は円安への転換を望んでいる。  

 円高による輸出の持続的衰退と比べ、日本政府にとって長期デフレは最も頭の痛い経済問題だ。このため日本政府はマネーサプライを増やすことで国内の物価上昇を刺激するとともに、インフレ期待の高まりによって国内の消費市場を刺激することを望んでいる。日本政府は、圧倒的多数の人がすでにインフレを予想しており、しかもインフレ期待の高まりの下での人々の消費行動には伝染性があるため、消費者は将来の物価リスクを回避するために必然的に消費を行い、企業の在庫減少を促すと同時に、物価上昇の力を借りて企業の利益を増やすことができると考えている。

 輸出と消費を量的緩和政策によって刺激すると同時に、日本政府は投資という経済の「エンジン」の役割も当然見落とさない。20兆円にも上る財政出動計画によって公共投資を強化する以外に、安倍内閣は直接日銀に介入し、資本市場への通貨供給を増やして株式市場を活性化すると同時に、企業が比較的低いコストでより多くの資金を得られるようにして、企業の透視能力を強化することを望んでいる。資本市場が十分な資金供給を受ければ、東南アジア地域を始めとする海外での日本企業の投資と拡張の歩みは明らかに加速し、本来強い海外での利益計上力が一段と発揮させるとの認識でアナリストは一致している。  

 しかしインフレ期待を高める無制限の量的緩和は結局は劇薬であり、しかも日本にとって過去20年間で最も大胆な経済改革計画だ。これによって将来直面しうるリスクと変数は大きくないとは言えない。国内的には、量的緩和の最大の後遺症は債務負担の急激な膨張だ。日本政府の債務はすでに対GDP比で世界最悪の230%に達している。  

 自らの債務状況の悪化に不安で気が気でない日本が大胆な量的緩和を行うことで、思いがけない外的リスクが招き寄せられる可能性もある。円安が進む中、関係国が輸出および経済への打撃を軽減するために為替介入によって自国通貨高を阻止することで、通貨安を競い合う「通貨戦争」が引き起されるというのが、基本的に予想されることだ。事実、日本が円安を目標とする無制限の量的緩和政策を打ち出して以降、ユーログループ議長はユーロ相場はひどく高いレベルにあると発言して、欧州の政策決定者にユーロ切り下げの考えがあることを示した。過去半年間に対円でユーロ高は30%も進行した。これはユーロ圏の輸出にとって厳しい試練であり、ユーロ圏全体の景気回復にとって足手まといとなるものだ。日本政府が為替相場問題で事を急ぎすぎたり、行き過ぎたりすれば、ユーロ圏諸国がいつでも「歯には歯を」で応じることが想像できる。  

 このほか、われわれが特に強調しておく必要があるのは、日本政府は無制限の量的緩和を行うにあたって、米国の顔色をうかがわなければならないということだ。米国は日本の金融政策について何ら声明を出していないが、これは円安がまだ米国の許容する範囲内にあることを示しているに過ぎない。円安が米国が受け入れられない段階まで進めば、ホワイトハウスが強い声を上げることは必至だ。この点において、日本政府は歴史的な「プラザ合意」と、それが日本経済に長くもたらした痛みを忘れるべきではない。

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