Home > ニュース > 国際評論  > 日本で深刻化する「無縁社会」
日本で深刻化する「無縁社会」
2012年 11月 27日9:31 / 提供:人民網日本語版

 米心理学者スタンレー・ミルグラムは1967年、「世間は狭い」ということを証明するために「スモールワールド実験」を実施。ネブラスカ州オマハの住人160人を無作為に選び、「同封した写真の人物はボストン在住の株式仲買人です。この顔と名前の人物をご存知でしたらその人の元へこの手紙をお送り下さい。この人を知らない場合は貴方の住所氏名を書き加えた上で、貴方の友人の中で知っていそうな人にこの手紙を送って下さい」という文面の手紙をそれぞれに送った。その結果42通 (26.25%) が株式仲買人の元に実際に届き、42通が届くまでに経た人数の平均は5.83人であった。この実験は、人は自分の知り合いを6人以上介すと世界中の人々と間接的な知り合いになれるという「六次の隔たり」の実証実験として知られる。日本の華字紙「日本新華僑報」のウェブサイトが報じた。

 同実験は、中国や日本でもよく言われる「縁」を科学的に説明し、社会の中で人と人は必然的に「つながっている」ということを教えてくれる。

 しかし、日本の社会では今や「六次の隔たり」が成立しなくなっている。単身世帯が増え、人と人とのつながりが希薄、しいてはほとんどゼロに。このような現象をNHKの番組は「無縁社会」と呼ぶ。

 では、「無縁社会」とは一体どんな社会のことなのだろう。まず社会の「単身化」だ。国立社会保障・人口問題研究所の推計よると、今、日本の社会では自ら、または強いられて単身の生活を送る人が急増しており、1980年に20%にも満たなかった単身世帯が、2030年には40%近くに上ると見られている。東京・葛飾区の都営高砂団地を例にすると、およそ900世帯のうち、1人で暮らす人は、既に30%に到達。うち85%が65歳以上の高齢者だ。

 同団地で1人暮らしをするある90歳の高齢者はNHKの取材に対して、「足や腰が悪く、外出するのが怖い。生活用品などはすべて電話で注文し、家まで届けてもらっている」と訴え、80歳の女性も「家にいても、誰からも電話がかかってこず、誰も訪ねて来ない」と寂しさを語る。

 現在、日本のコンビニやクリーニング店、ファーストフード店などは、配達や荷物引き取りサービスを提供している。パソコンを使ってワンクリックで、または電話1本で、生活に必要なものをすぐに家まで届けてくれ、一層1人暮らしの人に優しい社会になっているのだ。しかし、その一方、人と人のつながりが希薄になり孤独な人が増加。結果、「孤独死」の予備軍の増加をも招いている。

 次に日本の社会では「独身化」も進んでいる。50歳の時点で、結婚していない人のことを日本では「生涯未婚者」と呼んでいる。日本内閣府が公布したデータによると、2012年7月の時点で、男性の生涯未婚率が20%に達し、1980年の7倍に増加した。前出研究所の推計によると、その割合は今後急増し、20年後には50歳の男性のおよそ3人に1人が結婚していない社会になると見られている。日本の独身者が急増する原因として2つ考えられる。その1つは上記でも取り上げた、1人暮らしの人に優しい社会的インフラが整備されたことだ。もう1つに、経済的原因が挙げられる。中国には「着る物にも食べ物にも困らないために男に嫁ぐ」という言葉がある。経済の低迷が続く日本の社会は現在、女性の労働力に再び目を向けており、女性にも就職や出世の幅広い機会があるようになっている。そのため、働く女性にも選択肢が増え、ある程度の年齢になったら結婚しなくてはいけないという概念もなくなり、「食べていくために結婚」は必要なくなっているのだ。

 最後に、現代社会の人々は親友さえ必要としなくなっていることが挙げられる。近年、日本の社会では、人生の新たな門出となる結婚式の代理出席サービス業者が出現している。もちろん新郎、新婦の代わりではない。新郎や新婦の友人として披露宴に出席するのだ。

 現在、このようなサービスを提供する業者は、日本で30社以上存在する。東京で代理出席サービスを行っているある業者はNHKの取材に対して、「開業から1年の間に100件以上の依頼を受けた」と語る。さらに取材当日、「喫茶店で来月、披露宴を予定している20代の女性と打ち合わせ」とし、「女性は大学時代の友人役4人を依頼。実際は、学校を中退してしまったため、当時の友人と疎遠になった」という。また、「会社の同僚や上司役およそ30人の依頼を受けたケース」を紹介し、「新しい会社の中で、親しい関係ができていないため」とした。この業者は、結婚式までに、依頼者と打ち合わせを重ね、設定やスピーチの内容などを決めるという。自分の結婚式でこのサービスを利用したある男性は、「両親と妹、それにおじ・おばの親族5人全員を依頼した」といい、理由について「親と仲違いしていることを、新婦の親族に知られたくないから」と語った。

 結婚のような人生において重要な行事にさえ、自分の友人や両親が出席しなくてもいい社会、これこそが「無縁社会」だ。(編集KN)