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アジア太平洋で軍事基地の拡充を加速する米国
2012年 6月 28日10:56 / 提供:人民網日本語版

タイ内閣は26日の閣議で、ウタパオ軍用空港を「気象研究」のために使用したいとの米航空宇宙局(NASA)の借用申請について協議した。閣議は決定は出さず、各界からの懸念を払拭するために議会での審議に回す方針のみを示した。

 この計画についてタイ内閣は科学研究機関間の協力との立場を堅持している。タイ憲法では内閣に決定権があり、議会の承認を経る必要はないため、議会で採決が行われることはない。これについてタイのある民間団体は「政府の行動は計画の詳細の公開を迫る圧力を和らげ、後の法的紛糾を回避するためのものだ。時機が熟せば政府は必ず米国との協力を承認する」と指摘した。

 米国もこれまでの強硬姿勢を改め、タイの法的手続きの完了を辛抱強く待つ意向を表明している。米国の駐タイ大使は「空港借用の承認は6月末になっても遅くない。たとえ来年再交渉することになっても断念しない」と表明した。軍用空港借用への米国の執着が垣間見える。

 米国のウタパオ軍用空港借用について外部は中国の台頭の牽制、東南アジア諸国との軍事協力の強化と関係があるとの見方を次々に示している。タイのアピシット前首相は「米国は現在アジア太平洋回帰戦略を推し進めている。タイの空港を米国が使用する計画は周辺国に懸念を引き起こす恐れがある」と指摘した。タイの英字紙「The Nation」は「安全保障上の潜在的なリスクを多くの国が懸念している。プロジェクトの行動範囲をアジアの大部分、さらにはロシアの一部地域にまで拡大し、収集した情報を衛星を通じてアジア太平洋地域の米軍の基地や軍艦に送信することができるからだ」と指摘した。

 ■低予算で軍事網拡大を図る

 米国は軍事戦略の調整に伴い、さらに多くの軍事力をアジア太平洋地域に配備することになる。米軍は以前の軍事基地や潜在的な基地に関心を示している。米高官は集団で東南アジアへ押し寄せ、タイ、ベトナム、フィリピンなどをしきりに訪問している。

 米国はベトナムではカムラン湾に極めて大きな関心を示し、フィリピンでもスービック海軍基地やクラーク空軍基地を含むより大きな駐屯地を求めている。シンガポールはすでに米軍の沿海域戦闘艦4隻の配備に原則同意した。最初の戦闘艦は来年第2四半期に配備が始まる。

 米軍は東南アジア以外にオーストラリアや日本でも新たな基地を求めている。米日両国は在沖縄米軍の人数削減ですでに合意したが、米軍は沖縄の基地に海軍数千人を増員し、冷戦終結後最多水準にすることも計画している。北東アジア地域について長年研究しているブルース・クリングナー氏は「在沖縄米軍の再増強は不思議なことではない。米軍にとって沖縄は依然として太平洋の鍵を握る存在だ」と指摘した。

 米軍にとって日本以外に太平洋におけるもう1つの重要な支えとなるのがオーストラリアだ。オーストラリアは2016-17年に米軍将兵2500人を同国に配置するほか、ココス諸島を無人偵察機の配備可能な米軍基地にすることも検討している。パースのスターリング海軍基地を拡充し、アジア太平洋地域における米軍艦の活動に便宜を図ることも検討している。

 シンガポール国立大学東アジア研究所の薄智躍シニア・フェローは「米国は軍事力の重点をアジア太平洋地域にシフトし、アジア太平洋地域に軍事力を配備してネットワークを拡大することを望んでいる。低予算で軍事力を全世界に配備できるのなら、喜んでそうするはずだ。米国が中国の周辺国で多くの軍事基地を再開するのは、アジア太平洋地域における軍事力の回復・強化のためだけではない。中国周辺の東南アジア諸国と軍事同盟を結ぶことがより大きな狙いだ。真の意図は別のところにあるということだ」と述べた。(編集NA)