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中国の「台頭」は21世紀における最大の出来事(10)=成玉麟氏
2012年 5月 29日13:44 / 提供:掲載元:サーチナ
「中国の未来国家像」を映し出す「Crystal Ball」

大国の戦略羅針盤が目指す「New World」

GDP世界第2位後の中国航海図(2011-2020)

第1章 初の陸海空の国土開発マスタープラン
第1節 これは「最上級の国家戦略図」!

 2011年6月8日に、中国中央政府のホームベージに、2020年までの「中国の航海図」ともいうべき公文書、「全国主体機能区規画」という最上級の国土開発戦略のマスタープランを公開した。

 国家理念・構造を再構築する戦略的政策立案のことを中国では「頂層設計」と呼ぶ。この「頂層設計」した「航海図」は、正に「中国の未来国家像」を映し出す「Crystal Ball」である。その参考価値の高さは、長年中国の国家発展戦略を研究してきた筆者にとっても、驚くばかりのものであった。

 まず、この規画書では1949年の新中国誕生以来、国家として初めてGDP成長率を主要地域開発目標、地方政府の主要人事評価指標としないことを宣言した。

 その代りに人間、経済、環境資源等の協調を謳える6つの「新国家発展理念」と5つの「新開発戦略目標」を発表した。更にそれらを実現する9項目の包括的な政策を打ち出し、その実行成果を基準とする地方政府の新人事評価制度も明記した。

 役人の人事評価制度と基準をも、国土開発戦略書に「明示した」のは、「前代未聞」の出来事であり、中国政府の並々ならぬ決意の証である。

 次に、個々の省・地域という従来の行政区域単位の開発概念を覆した。

 4種類の機能区域別に国土全域を横断的に開発、管理し、更に衛星による「天体」からの陸上、海上、気候上の管理観測手法も動員する、言わば陸海空の「三位一体」の新総合開発システムの発表。これによって生態環境・資源と人間社会・地域経済の立体空間上の協調性、効率化、及び持続発展を実現していく。

 上記のような「機能空間概念」の包括的開発目標と管理手法によって、将来、中国経済行政上の地図を大きく塗り変えることにもなるのではないかと想像に走る。

 2003年から、この広大な国土を主要機能区域別に改造する発案があって以降、基礎調査から対応する政策立案まで、8年間という歳月がかかった。特に「新国家発展理念」の根幹をなす「開発制限地域」を設けることに対し、開発を優先させたい地方政府の激しい抵抗があった。結局、「異例」ともいうべく、公表時には一部の地域実施計画の作成が未完のまま、中国国務院が、この規画書を地方政府に通達した2010年12月21日の6ヶ月後に、公表に踏み切った。

 中国では、現在この規画書を2011-2020年の中期国家計画として、経済社会発展の5ヵ年計画や東部、中西部及び東北部の地域総合開発戦略計画、都市化計画等に対し、「基礎的」、「戦略的」、「拘束力」を持つ優先順位度の最高ランクに位置けており、国土開発の「憲法」とも呼ばれているものである。

 本章では、約7万文字以上もあるこの国土発展戦略書の「航海図」を「4+3+2」、「9+1」といった暗号解析のようなキーワードで、ハイライトを分析解説し、また、同「航海図」の添付図表を使って、今後10年間の航行先である「中国国土の未来パビリオン」をご案内する。次回は「第2節 暗号「4+3+2」、「9+1」とは何か」。(執筆者:成玉麟)

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