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中国の「台頭」は21世紀における最大の出来事(11)=成玉麟氏
2012年 6月 5日15:24 / 提供:掲載元:サーチナ
「全国主体機能区規画」のハイライトを代表するArabic numerals(アラビア数字)の符号

大国の戦略羅針盤が目指す「New World」

GDP世界第2位後の中国航海図(2011-2020)

第1章 初の陸海空の国土開発マスタープラン
第2節 暗号「4+3+2」、「9+1」とは何か

 これは決してミステリ『ダ・ヴィンチ・コード』(The Da Vinci Code)のような謎めいた暗号ではない。

 「4+3+2」、「9+1」とは、ほかならぬ、2011年に始動し、2012年に本格化する「全国主体機能区規画」のハイライトを代表するArabic numerals(アラビア数字)の符号である。

 まず、「4+3+2」に代表される国土開発戦略のConceptual framework(概観図)から見てみよう。

 図に示す如く、「4」とは、中国全土に4種類の地域開発方法によって、2020年までに「3大戦略的構図」と称する「機能空間」を構築することである。

 次に「3」とは、上記4地域開発方法によって構築される「3大機能空間」の「中身」である。

1.都市化地域
2.農産品主要生産地域
3.生態系機能重点構築地域

 尚、「全国主体機能区規画」の陸上国土開発戦略と共に、まもなく公表予定の「全国海洋主体機能区規画」の海洋国土開発戦略も今後一体化実施することとなっている為、「4大機能空間」となる「海洋地域」も付け加えられることになる。

 最後に「2」とは、上記「4+3」地域を「全国主体機能区規画」に沿って、地方版で拡大し、ブレークダウンした上で、国家と省レベルの2段階推進体制で実施することである。

 本節では、まず「Conceptual framework」にある最重要点に触れ、第3節以降は「4+3+2」の符号順で、上記の各地域が2020年まで目指す未来像を解説していく。「9+1」についての説明は、「4+3+2」の解説を終えた後のコラムで行う。

 1. 「Conceptual framework」にある最重要点

以下の各点にハイライトを当てたい。

・何故今「開発最適化地域」等を指定するのか?その狙いは何か? 中国近代化の十字路に立つ国家ジレンマの歴史的背景を理解し、現に世界第1位の製造、輸出大国の中国が、今後グローバルサプライチェーン並びに世界新産業文明にどんな影響を与えるか考える。

・生態系地域は、都市化(工業化)地域や農産品生産地域と並んで、国土開発の三大「中心的」機能空間に格付けした。これは「Green Growth」の新国家理念に対する「頂層設計」のもうひとつの典型例である。

・3主要機能欄の「ECO製品の提供」というカテゴリ−の中で、国民の為にきれいな空気と優しい気候の提供も、ECO製品概念の構成内容と見なされているのである。これは国家認識の大きな前進であり、ECO産業発展の必然性に大きな拍車を掛けるものである。

・2020年の数値目標で三大機能空間の国土構成比率を把握し、「両屏三帯」、「七区二十三帯」、「両横三縦」といった意表がつく地理学的別名を持つ「生態系安全保障戦略構造図」、「農業近代化戦略構造図」、「都市化戦略構造図」から10年後の中国近代化の「達観図」を読み取る。

 また、欧州大陸にほぼ匹敵する960万平方キロの国土を持つ世界第3位の中国は、2020年に緑の被覆率85%に達した時の「Global Implications」(グローバル的な意味合い)にも注目に値する。

・最後の点であるが、中央政府と省レベルの地方政府が、この「Conceptual framework」に関わる財政、土地、人口、資源環境等の関連政策の目標を今後どのようなロードマップで実現していくか、中国で論争を呼び、世界の主要メディアで話題となっている世銀2012年2月のレポート「China 2030」の6大新発展戦略の提案にも触れながら、以降のコラムで解説を加えていきたい。

 次回は、第3節 暗号の詳細解析。国家レベルの「開発最適化地域」とは、具体的にどういった地域を指し、その狙いは何かについて探る。乞う、ご期待を。(執筆者:成玉麟)

 

筆者紹介
成玉麟(せい ぎょくりん)

丸紅株式会社 市場業務部 課長 中国チーム
1958年上海生まれ。1983年上海外国語大学日本語科卒業。1983年中国郵政省入省。1992年丸紅株式会社入社。現在海外市場特に中国市場の地域戦略、産業分野戦略の企画立案担当。2008年米国California State University, East Bayの米国公認会計士(U.S.CPA)課程修了。中国戦略委員会事務局として、中部6省の地域戦略や中国西部地域戦略の企画に参画。

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