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震災後転換期を迎える日本 困難と活力
2012年 3月 13日10:43 / 提供:チャイナネット
東京での大規模反核デモ

東北地方には今なお震災の傷あとが鮮明に残っている。東京電力福島第一原発の崩壊した建屋は、米軍が原爆を投下した広島の原爆ドームを想起させる。震災によって倒壊したのはそれだけではない。テレビや半導体企業の巨大な損失、続く円高、国家財政の巨額の赤字、未だにきちんと機能していない民主党政権、これら様々な難題が日本を公開に導いている。

第二次世界大戦後、多くの工業都市が焼け野原と化したが、10年もしないうちに日本は高度経済成長期に突入した。

2011年の震災は東北地域に様々な損害をもたらした。被害を受けた地域は広いが、被災地が日本の経済総量に占める割合は2%に満たず、経済自体に深刻な影響を及ぼしたわけではない。原発事故による打撃は大きいが、日本は原子力発電がなくとも、火力発電で経済に必要なエネルギー需要を十分賄う事が可能だ。

また、日本の国家、企業は今新たな転換期にあることがわかる。第2次世界大戦によって日本は軍国主義から民主主義へと転換したとすれば、地震による原発事故は、日本を大量生産・大量消費(大量輸出)の経済発展モデルから、スマート・エコの新たな経済発展モデルへと転換させるきっかけとなった。日本もまたこのような新しいモデルの中でこそ長期的な安定した成長を望める。

「大量生産」は時代遅れ

中国・ロシア・インド・ブラジル・南アフリカなどのBRICs諸国の出現によって、大量消費が世界で一種のブームとなり、消費ブームは何年も持続することができる。しかし、世界で最も重要な消費財の生産国である日本は、このブームでは大きく出遅れている。

2012年3月、日本の家電企業の年度決算からもわかるように、パナソニックは7800億円の赤字、シャープは2900億円、他にもソニーが2200億円、NECが1000億円の赤字決算だった。自動車メーカーでは、マツダが1000億円の赤字となり、トヨタやホンダなどの営業利益も大幅に下落した。これに対し、韓国は電子製品、アメリカは自動車の販売において回復を見せ、好調な業績を上げている。

これらの元凶を何もかも地震や原発事故、タイの大洪水、円高のせいにすることはできない。大量の消費財を生産し、消費革命を巻き起こした日本経済の発展モデルは、地震が来る前から跡形もなく衰えていた。赤字決算だった企業は地震がなくても、利益を伸ばすことはできなかっただろう。

大量生産、大量消費のための大量の電力を提供する原子力発電所は、事故後によって再び入念な検査が必要になった。東京電力だけでなく、2012年4月には、日本中の原子力発電所が操業を一時中断する必要がある。

日本では深刻な電力不足は発生していないが、過去60年余り、日本が一心不乱に推し進めてきた大量生産、人々が全力で追い求めてきた大量消費は地震発生前には節目を迎えていたことに人々は気付いたはずだ。消費が有り余る日本にはこれ以上の消費財は必要ないため、これ以上のエネルギーも必要ない。日本国内の電化製品市場が衰退し、自動車市場が冷え込んでいるのもそのためである。

長期の保守的姿勢が長年の損失招く

コラムニスト・陳言 「日本スケッチ」

政治改革を推し進めるという動きも、民主党政権の度重なる失態により、今や見る影もなくなっている。

54年間続いた自民党政権への失望、まだ若い民主党政権への不安が、日本国民の政治への不信感を助長した。野田政権が外交で続けているのは自民党時代の日米同盟であり、日本国民の約80%が中国に反感を抱いている中、野田政権は中国を孤立させる価値観を持った外交を推し進めている。地方の自治体の中にも、中日関係を悪化させて知名度を上げようとする政治家がいる。日本経済の発展モデルが転換期を迎える中、リードするべき政治・外交は却って経済に大きく後れを取り、日本とアジア諸国の距離をどんどん引き離している。日本の政治は今後、長い年月をかけて対外関係を調整していかなければいけない。

生産技術の面から見ると、日本は1980年代既に東南アジアや中国で投資を始め、非常に早いグローバル化のステップを歩んでいた。しかし、21世紀になると、日本はトップランナーとしての座を明け渡してしまった。

その大きな要因となるのが、生産技術の変化である。日本が行なっているには、企業内部、グループ内部の技術の閉鎖的なシステムである。メーカーは単独体制で戦い、部品には通用性がない。日本企業の内部競争は、過去に多くの有名な企業を排出した。しかし、グローバル化の競争においては、過剰な内部競争はメーカーの市場でのシェアを下げてしまい、研究開発に多大な投資をしても、効果があまり得られず、日本企業は自滅してしまう。特にデジタルビデオカメラや一眼デジタルカメラの開発に力を入れていたあまり、その他の分野の研究開発が滞ってしまうという状況は10年余りも続いていた。

社会の安定が日本の活力を取り戻す

コラムニスト・陳言 「日本スケッチ」

1945年の戦後に比べ、今日の日本国民は、国民総生産(GDP)3年分に相当する1400億円の貯蓄を持っており、安定し、満たされている。つまり、日本には新しい日本を造るための十分な力があると言うことだ。

日本の大企業の50%がグローバル化を進めており、日本国内での生産に見切りをつけ、製品の国外での販売を推し進めている。中国では、民間企業が1000億元の赤字を出すなど考えられないことであるが、日本企業は損失を挽回できるだけでなく、発展し続ける力を持っている。2009年、日立は7880億円の赤字を出した。損失額だけを見ると前年度のパナソニックとさして変わらないが、2011年に日立は1年間で2000億円の売上を出し、赤字による打撃を微塵も感じさせない好調ぶりを見せている。

日本企業の活力は、日本が長年培ってきた大量の技術であり、インフラ設備(鉄道、市政、電力事業、医療設備など)においても大きな製造力、構築力や補修・整備力を持っている。環境保全・エコ技術に関しても、日本は世界で最も多くの特許を持っている。社会インフラとエコ分野での技術をオープンにし、他国の政府や企業と協力することで、日本企業は今後も好調な経営状態を長期的に保つ事ができる。

そして、社会面から見ると、日本国民には皆、健康保険や年金があり、正社員には失業保険もある。アメリカ国民がお金持ちは益々お金持ちになるとデモを行い、欧州の市民が、政府が福祉支出を削減したと抗議していたころ、日本は変わらず非常に安定していた。

安定した社会がある日本は、新たに活力に満ちた国家を築き上げていくことができる。

コラムニスト・陳言 「日本スケッチ」

 

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