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日本製造業の「生産性ジレンマ」
2010年 2月 4日16:50 / 提供:

作者:黄雅南

 トヨタ自動車は、アメリカ市場での成功は揺るぎない不思議な伝説となるところだった。もし、重大な問題が出てこなければ、トヨタ自動車にそれなりの生産方式を諦めさせることは、夢の中での話に違いない。これまでに、自動車は電子製品ではなく、1種の輸送用の機械製品とされている。そして、機械製品の生産領域では、トヨタ自動車はトヨタ生産方式という優位性を徹底的に発揮した。トヨタ自動車が、トヨタ生産方式を改善するのに力を注ぐことは、誰でも疑うことはないだろう。

 しかし、自動車の電子化は急速に発展している。何年も経たないうちに、自動車もテレビ、パソコンと同じような電子製品になる。問題はそこにある。電子製品の生産領域では、トヨタ生産方式とまったく違うモジュール生産方式が必要とされているからだ。トヨタ生産方式は、役に立たないだけでなく、企業発展の道を邪魔する可能性もある。

 実は、これはトヨタ自動車だけが面する問題ではなく、多くの産業に存在している「生産性ジレンマ」(Productivity Dilemma)という問題である。つまり、生産技術の成長に従い、生産効率も適切に向上し、企業の利益も安定的になる。それゆえ、多くの技術革新は、排斥されるようになる。これらの技術革新は、産業革命をもたらすことができるが、初めの段階では、生産効率も良いとはいえないし、生じた利益も非常に限られている。

 日本の製造業は、世界的な成功を獲得した。しかし、日本のベテラン経営学者の伊丹敬之教授はかつてこう批判した。巨大な成功を前にして、日本の企業はだんだん怖気づくようになった。当時、60万円の資本金の小さな会社だったものが、4億5千万円の巨額な自動車生産設備を輸入する、トヨタ自動車のその気骨はまったくなくなったと。日本企業の成功は、逆に自らを束縛した。実は、より多くの日本製造業は、生産効率のジレンマに陥っていく。これは日本製造業が危機に落ち込む深層的な原因であろう。これも、我が国の製造業の参考になると思う。

 

(編集 孫バイ)