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中国が世界じゅうにデフレを輸出したというのは大げさな結論
2003年 1月 9日11:42 / 提供:

 

 2002年10月中旬に、モルガン・スタンレー取締会の総支配人兼最高経済師のスチーフィン・ロッジ氏は最新分析レポートを発表し、次のように指摘した。現在世界経済のデフレリスクの深刻さは、70年来未曾有のものであり、その源はアジアにあり、そのうちアジア(日本は含めない)の輸出比率の約3分の1を占める中国の影響が最も大きく、さらには中国が世界にデフレをもたらす最も重要な要因であると断言した。

この結論は事の表象だけを見たものであり、つまり中国の輸出商品価格の競争力はきわめて強いが、それは重要な内在する要素をないがしろにしたものであり、商品価格に対する中国の要素のプレッシャーは国際市場価格と輸入国の物価全体のレベルを左右するものではない一方、他方では、中国が全世界の製造業転移の受益地となったのは、完全に全世界の低インフレ、デフレの現実によるものである。全世界の価格レベルに対する中国の影響力は局部的なものでしかなく、一部の商品のみに限られ、中国が全世界にデフレを輸出するという結論は明らかに大げさなものである。

事実は次のとおりである。

一、 中国はまだ全世界の市場価格に大きな影響を及ぼすことはできない。

その一、中国の国際市場におけるシェアから見て、世界の輸出に占める中国の完成品の比率は目に見えて上昇があり、いくつかの製品の面で更に全世界の重要な生産者となっているが、全体から見て、中国は依然として全世界の工場にはなっていない。工業生産から見て、中国は依然としてアメリカ、日本、ドイツの後に位置し、そしてギャップは依然としてかなり大きい。中国そのものは大きな市場であり、多くの完成品は本土の市場で販売されている。中国のGDPに占める輸入の比率は20%前後で、加工貿易を差し引けば、この比率は10%となる。言い換えれば、中国庶民が1元使うと、0.1だけで国外の製品を買い、残りの0.9の商品はみんな国内で生産したものであり、つまり、中国の製造業、特に一部の生産量の大きい製品は主に国内のニーズを満たすためのものである。WTOの統計データによると、2001年における中国製造品の輸出総額は全世界の製造品輸出総額の5.3%しか占めていない。

その二、輸出商品の構成から見て、90年代の中期から始まったこのラウンドの全世界的なデフレは主にIT製品の価格の下落によってもたらされたものである。中国の純輸出構成から見て、ここ数年、中国のハイテク製品の輸出が中国で成長が最も速い輸出商品の種類となっているが、中国は依然として労働集約型製品の純輸出国である。アメリカ、日本、ヨーロッパに対する中国の輸出の中で、労働集約型製品は輸出総額の70.3%を占め、中国の輸出商品の価格は依然として伝統的製造業商品価格によって決定されているのである。そのほか、中国の輸出製造品のかなりの部分は部品と資本財であり、消費物価に直接影響を及ぼすことはない。

二、輸入地の物価レベルに対する中国の要因の影響は非常に限られたものである。

中国はその輸出製品の生産者価格とFOB(本船渡し価格)に影響することしかできず、輸入国の価格転移および小売市場における最終定価に対して直接影響をもたらすことはない。そのため、輸出デフレの影響が存在しても、商品流通ルートの中間的な環に達することしかできないのである。例えば西側先進国の輸入商品代理店ルートは複雑で、仲介人が何度も値上げして、消費者は中国から輸入した商品に対して最後に払う代価は中国の生産者価格の数倍となる可能性があり、中国から輸出した商品価格が競争力を持っていても、消費者に転移できるものは依然として限られたものであり、その中の大きな部分がすでに代理店の利潤に転化しているからである。そのため、輸入地物価レベルに対する中国の要素の影響は非常に限られたものである。

三、中国は苦心して人件費コストを抑えているのではない。

中国の人件費コストが安いのは今起こったことではない、もしドルで計算すれば、アジア金融危機の前に、中国の人件費コストは恐らく更に低いものであった。中国の労働力の賃金レベルが比較的低いのは中国労働力市場の需給関係によって決定されたものである。人民元の為替レートが完全に開放されても問題を根本的に解決できない。もしわれわれが中国の貿易の弾力性を計算するならば、人民元の為替レートが10〜15%切り上げられ、中国の経常項目のバランスがゼロになり、もし人民元が直ちに自由交換できる通貨になるならば、10〜15%を切り上げ、つまり現在の1ドルで8.3元の交換レートから1ドルで7.3元になる。中国の人件費コストを15%高めても、依然としてアメリカ、日本、ヨーロッパより低く、アジアにおける競争相手の絶対多数よりも低い。

四、中国の要素が商品価格に対してプレッシャーを形成しているのは全世界の低インフレ、デフレの結果であり、原因ではない。

ここ数年、全世界の経済が衝撃にさらされているため、商品価格に対する消費者の敏感度がだんだん高まり、話し合いで値段を決める能力がだんだん強くなり、全世界において低インフレ、デフレのプレッシャーが形成され始めた。このような状況の下で、製造業が利潤を確保し、生存を求めるには、コストダウンを目指さなければならない。これは中国のコストの優位が現れ、全世界の製造業が中国へ次々とシフトする状況を招くことになる。つまり、中国の要素が商品価格に対してプレッシャーを形成しているのは全世界の低インフレ、デフレの結果であり、けっして直接の原因ではない。製造業の中国へのシフトの中で、コストの引き下げは20%ないし30%に達する可能性があり、それは逆に商品価格に対するプレッシャーをいっそう大きくし、ひとつのサイクルを形成するにすぎない。

以上の分析を見てもわかるように、世界にデフレがもたらされた原因を中国に転嫁するのは、明らかに大げさな結論である。

(作者 秦海菁 国家情報センター)

 

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