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安倍首相の天皇パラオ派遣 ねらいは「対中外交」
2015年 2月 8日13:56 / 提供:チャイナネット

 パラオのレメンゲサウ大統領が昨年12月16日に日本を訪問した際、安倍首相は、今年4月に予定されている天皇夫妻の戦没者慰霊のパラオ訪問について、「戦後70周年の歴史に残るご訪問にして、両国関係の発展につなげたい」と語った。安倍首相はレメンゲサウ大統領と天皇夫婦の慰霊訪問の実現に向けて協力することを確認した。

 なぜ安倍首相は天皇夫婦のパラオ訪問を望んでいるのか。第二次世界大戦終結70周年にあたる今年、天皇夫婦がパラオを訪問する背景には、戦中の「封じられた記憶」がある。

 パラオ諸島の戦役は、日本にとって忘れがたい歴史の一つである。第一次世界大戦後、パラオは国際連盟によって日本の委任統治下に引き渡されていた。1944年9月から11月、米国はパラオ諸島への上陸作戦を行った。日本軍は当時、「外郭防衛線」のマーシャル諸島を失い、さらには「絶対国防圏」であるマリアナ諸島の内側の防衛線も突破され、太平洋の戦場において厳しい状況に追い込まれていた。日本軍はパラオ諸島を重点防衛の対象とし、日本軍で最強の戦力を誇ると言われた陸軍第14師団を派遣して防衛の任に当たらせた。だが米国の全体戦略ではパラオはすでに「捨て駒」となっており、マッカーサーはパラオを避けてフィリピンでの戦いを始めていた。

 だがパラオの日本軍は、追い詰められた獣のように死闘を繰り広げた。2日間で終わるはずの戦闘は2カ月にわたって引き伸ばされ、戦況をほとんど左右しない戦闘が死を賭した消耗戦となった。日本軍は昼間は岩穴に潜伏し、夜間に襲撃を行うことで、米軍に大きな代価を払わせた。死んだ戦友の敵を討つため、米軍は日本軍とこの「意義なき戦争」を続けざるを得なくなった。パラオのペリリュー島では、多くの日本兵が岩穴の中で焼け死んでも投降することを拒んだ。島には日本兵が約1万人、米兵が5万人近くいた。日本兵はほぼ全員が戦死し、戦後生き残ったのはわずか34人とも言われる。米兵は2000人近くが戦死し、8000人余りが負傷した上、戦役に参加した米兵数千人が精神疾患にかかった。日本軍の必死の戦闘にもかかわらず、戦況は悪化の一途をたどり、日本を揺るがす負け戦となった。天皇が戦後70年を記念してこの島を訪れる背景にはこうした過去がある。

 だがすでに高齢の天皇によるパラオ訪問には、歴史の回顧にはとどまらない、さらに深いレベルの戦略的なねらいがある。

日本は「第二列島線」によって中国を封じ込めようとしている。日本の統計によると、パラオの25%の人は日系の血統を持つ。パラオの激戦地となったパリリュー島には今も、「西太平洋戦没者の碑」があり、天皇夫婦もここを訪問することになっている。天皇訪問は戦没者の慰霊のためとされるが、安倍首相の目論見はこれにはとどまらない。冷戦後、米国は「3つの列島線」という区分を打ち出したが、パラオは「第二列島線」に位置し、中国に対する「C字型包囲圏」を形成している。中国海軍は2013年7月、日本を越えて西太平洋での訓練を行い、「第一列島線の突破行動」が成功したものとみなされた。米日軍事同盟の「封鎖」の陰謀は破綻しつつある。中国はさらにここ数年、太平洋の島国に急接近しており、フィジーなどとは特に密接な関係を結んでいる。

 安倍首相はこうした状況を前に、中国をよけた「自由と繁栄の弧」に続き、「第二列島線」の作用の発揮を急いでいる。そのため安倍首相は天皇を持ち出し、80歳を越えた天皇をパラオに派遣する措置に出たのである。日本が歴史問題に名を借りてパラオをことさら重視している裏には、パラオを米日同盟へと引きつけ、共同で中国に対抗し、中国の太平洋地区における活動をさらに制限するねらいがある。

 日本の「島国外交」戦略の展開にはさらに、「常任理事国入り」に道を整えるという意図もある。日本は最近、「島国外交」を集中的に展開している。天皇は1月、日本を訪れたミクロネシアのモリ大統領と会見した。日本とパラオはさらに、今年5月に福島県いわき市で開かれる「太平洋·島サミット」で共同議長を務める。両国は会談で、島サミットでの協力強化にも同意した。

 「太平洋·島サミット」は1997年に始まり、3年ごとに日本で開催されている。このサミットはこれまでほとんど注目を受けてこなかったが、その大きな原因の一つは、日本がこのサミットを「票田」として利用していることがある。日本は、経済や技術などを通じて太平洋の島国を支援し、常任理事国入りなどでの支持を取り付けようとしている。日本外務省のある高官は、「これらの島国は国連での投票によって日本を支持することができる」と語っており、これを利用しようとする意図は明らかだ。

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