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パリ―アートを楽しんだ旅―(3)
2014年 9月 24日10:26 / 提供:

ヴェルサイユ宮殿

  パリ市内の建物は築百年以上のものが多いというが、古いながらもきれいに保たれている。歳月を重ねたその佇まいには、現代の建築物にはない重厚さがある。中には、フランス租界だった上海の徐匯区辺りを彷彿させるようなところもあって、幾分か親しみを感じた。

  街には至るところに彫刻があり、路地をぶらりと散歩するだけでも楽しい。

  もちろん最も豪華な建築物では、世界一華麗と言われるヴェルサイユ宮殿の右に出るものはない。

  そこである日、観光バスを利用して、「ヴェルサイユ」を観に行った。 

ヴェルサイユ宮殿の庭園

  当時の最高の建築家、宮廷画家、造園家を動員し、ルイ14世が財力と労力を傾けたこのバロック様式の宮殿は、まさに豪華極まるもの。どの部屋にも、目もくらむような華麗な装飾が施されている。当時の王の権力と栄光の極致を感じることと共に、フランス貴族の贅沢な生活ぶりも垣間見ることができた。一番輝かしい「鏡の回廊」には観光客が溢れていた。かつてここは儀式や外国の賓客を謁見するために使われていた場所だ。壁に嵌め込まれた巨大な鏡に、わが身を見た観光客は、その自分の姿を撮ろうと、みんなシャッターを切るのに忙しい。天井を仰ぎ見ると、素敵な天井画と一列に吊り下げられたシャンデリアが輝いていて、その煌びやかさには思わずため息が出る。 

鏡の回廊

 「鏡の回廊」の大きな窓からは素晴らしい眺望が広がり、壮大な庭園が一望できる。フランス式の庭園は左右対称で、幾何学的な池や植栽が配置されていて、冬でも緑が見られる。

   当時この辺りに水源がなかったが、「水なき地に水を引く」とルイ14世の号令がかかったため、10kmも離れたセーヌ川から水を引き、苦労してこれらの池や噴水が作られたそうだ。しかも噴水の仕掛けは今も300年前と同じからくりを使っているという。

 

ノートルダム大聖堂外観

 池の周りに彫刻が置かれていて、また長方形の池は、鏡のようで宮殿の姿がくっきり映り、光と影の演出が迫る。むかし、この庭園は、民衆にも開放されていて、庭園の見方を教えるガイドブックまで発行されていたことがある。庭園を鑑賞してもらうことによって、王の偉大さをアピールし、民衆の心をつかもうとしたルイ14世の魂胆があったようだ。それはともかく、この素晴らしい宮殿はフランス王朝の美意識の集大成だ。 

ノートルダム大聖堂内

  セーヌ川の中洲であるシテ島はパリ発祥の地。ここで一番見たいのはやはり あの有名なノートルダム大聖堂。その昔上海で、V·ユーゴーの「ノートルダム·ド·パリ」の小説や映画を通して、この大伽藍の荘厳さを知ったからだ。 1330年に完成したこの大聖堂は、聖母マリアに捧げるために建立された初期ゴシック建築の傑作。見学に行った時は、ちょうどミサの最中だった。

  中に入って側廊に沿って静かに回る。バラ窓をはじめ、空間を満たすステンドグラスの窓は実に繊細で美しい。窓はその外の世俗と堂内とを隔離し、ステンドグラスから発せられた深く鮮やかな色彩は、この「地上における神の国」に神秘な雰囲気を醸し出している。フランス語のミサの内容は皆目分からないが、神父の抑揚のある声が高い天井に響き、とても神々しく聞こえたのは確かだった。

(文:陸燕萌  写真:馮学敏)

名詞解釈:

租界(そかい)とは、清国(のちに中華民国)内の外国人居留地である。阿片戦争後の不平等条約により中国大陸各地の条約港に設けられた。最も有名なものに上海の共同租界やフランス租界があるが、天津にも多数存在し、その他の開港場にも設けられた。20世紀の近代中国における列強の半植民地支配の拠点であった。

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