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中国の経済をどう見れば良いでしょうか

2015年 9月 28日13:01

 5月下旬から6月上旬にかけて、北京の人民日報社主催のフォーラムと鳳凰テレビの番組に出演するため北京を訪れた。そのついでに浙江省と江蘇省に行き、中国の民営企業と日本の企業8社を訪問した。

 北京の一部の官僚と学者で問題になっているのは、「中国経済はいったい誰が主導しているのか」ということだ。李克強なのか、習近平なのか。

 なぜこのような論争が起こるのだろうか。今年の中国経済は下降が激しいが、政府はこの趨勢を止める有力な措置をとることがなかった。

 地方政府を訪問した時、官僚や企業家は次のように言っていた。東京の株式市場が2万円の大台を突破したのは、大企業が利益を上げているからだ。しかし中国経済の各指数が景気の良さを示していないにもかかわらず、上海の株式市場は高騰している。その理由がわからないという。実は実体経済が利潤を上げていないため、多くの企業が手持ちの流動資金を株式につぎ込み、一攫千金を狙っているのがその理由だ。しかしいったん株式が暴落すれば、企業の倒産を招くリスクが大きい。これは現在、地方政府が最も憂慮している問題である。

 習近平政権はこの2年半、空前規模の反腐敗運動を展開してきた。前政治局常務委員の周永康、中央軍事委員会副主席の徐才厚など4万名余りの役人が逮捕された。この運動で中国の官界を浄化し、自分たちは何ができて何ができないのか、役人たちに知らしめた。しかし同時に二つの弊害が生まれた。一つは、やってもやらなくても同じだから、間違いを起こさないことが一番重要だと仕事を怠ける現象が起こっていること。第二は、役人たちが高級なレストランや娯楽の場に出入りせず、高級品も買い控えて、消費市場に影響を与えていることである。

 習近平政権の反腐敗運動は、周永康より高い地位の前国家指導者にまで及ぶことはできなかったため、運動が「常態化」し始めていると北京の政治関係者は考えている。そして習近平と李克強も経済問題の解決に集中することができるという。今後数か月間、中国政府は『第十三次五か年計画』の制定に全力を注ぎ、10月に開催される中央委員会全体会議での審議を通じて、今後5年間の中国経済と社会の発展の計画と目標を確定する予定だ。そのためこの数か月中に、中国政府は経済の下降を防ぐ政策を出す可能性がある。

 拙書『2023年の中国』の出版後、朝日新聞や立花隆氏から「中国と商売をするために良い参考書だ」との書評をいただいた。また鳩山由紀夫元首相のご厚意で、8日の夜、鳩山先生、評論家の高野孟先生と、「習近平と中国」と題し一時間半のテレビ対談が実現した。種々の原因で、鳩山先生が首相就任中に提出した、「東南アジア共同体」構想が実現しなかったのは残念だ。しかし現在中国がアジアインフラ投資銀行の設立を提案し、同時に「アジア運命共同体」構想を構築したことで、「アジア共同体」の幕が切って落とされた。中国経済は困難に直面しているが、日本市場も内需の市場規模が減少しているなどの問題を抱えている。しかし日中両国が対立から合作へ向かうことができれば、「アジア共同体」建設の歩調を速め、日中両国とアジア地区の安定と発展に寄与することは間違いない。

 中国には資金があり、日本には技術がある。対立を減らして合作を増やし、共同でアジア市場を開拓すれば未来は無限に広がる。