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習近平経済学

2015年 9月 28日14:58

 9月の大半を中国への出張に費やした。まず政治問題が深刻な山西省へ赴き、省委員会書記の陳儒林氏と省長の李小鵬氏と会見し、その後南端にある貴州省へ行って「世界華文メディアシンポジュウム」に参加した。その後最北端の内蒙古自治区の大草原へ行き、次に北京で抗日戦争勝利70周年の閲兵式を取材した。南から北へ、中国を横断した。

 このように多くの地方を走り回っていると、中国経済の「脈」に触れることができたともいえる。全体的に見れば中国経済は不安定な状態にあり、経済の減速は明らかだ(当然この中には政府が主導した減速もある)。しかしこの背後には中国経済が、乱暴な投資から、入念でかつ自然な規模の発展に沿った「常態化」型へ変化する過程にあり、当然その過程の苦痛の段階にある。

 山西省は資源の多い省で、過去数十年間、石炭が経済の中心にあり、「石炭経済」が全体の70%を占めていた。言い換えれば石炭以外はだめだということだ。簡単な衣料工場すらない。彼らは一年に10トンの石炭があれば十分な富になると信じてきた。しかし現在国家は石炭の消費を抑制しており、石炭が売れなければ、石炭関連の機械、鉄鋼、建材などの産業もだめになる。そのため「非石炭経済」をどのように発展させるのか。産業や構想がないだけでなく、人材もないのだ。

 少数民族が集中する貴州省は、ここ数年の発展が全国各省(自治区)のトップグループにおり、今年上半期のGDP成長率は全国2位となった。貴州の発展はハイテクの発展、特にデータバンクだ。現在中国最大のデータバンク基地になっており、移動通信の大企業やアリババなどのデータバンクと顧客サービスセンターが貴州にある。貴州の至るところで建設工事をやっており、また各地から若者が集まっていた。「第二の深セン」ともいわれる。貴州がこのように発展できたのは、前省委員会書記が大きな役割を果たしたからだ。彼は現在習近平主席の「内閣官房長官」ともいうべき中国共産党中央弁公室主任となり、貴州経済を発展させ、中国西南経済科学技術の足掛かりとする構想を立て、習近平の大きな支持を得た。さらに習近平は、自分の信頼する部下の一人である浙江省員会書記、宣伝部長の陳敏尓氏を貴州の省委員会書記兼省長に任命した。そのため貴州は中国で最も注目を集める経済地区となったのである。

 今回中国で官僚や学者と交流した時、最も多く聞かれた言葉は、「習近平経済学」であった。すでに「李克強経済学」を話題にする人はいない。株式市場が大幅に下落し、中国経済が世界を不安に陥れたとしても、国家経済を司る国務院の李克強総理が公に意見を発表することはほとんどない。反対に習近平が主宰する政治局会議で経済問題を討論することがよくある。そのため「習近平経済学」の概念が登場する。中国経済の方針と戦略の制定は、李克強ではなく習近平が主導するからだ。他方、習近平にへつらってそのように言う人もいる。結局習近平が最高指導者として中国を8年間リードするのだから、習近平の功績をほめたたえれば、政治的利益を得ることもできるのではないかと考えるのだ。

 しかし北京の学者の一部は「習近平経済学」を憂慮する。というのは「一帯一路( シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」戦略やAIIB銀行の設立は中国経済発展の魅力的な将来を描くが、目下の経済の下落をどのように阻止するのか。実効的な良策はまだない。多くの官僚、多くの企業経営者は皆「習近平経済学」がカンフル剤、中国経済の再活力となることを待ち望んでいる。

実際この期待は中国だけでなく、日本や世界からもある。中国経済の発展と減速は世界経済に波及し、世界経済の動向に影響する。私は期待する。「習近平経済学」の成功を。