ようこそ、中国上海!
エコで未来を共有

Home >> 新着 >> 専門家 >> 莫邦富

【中日双语专栏】Suicaの進化に中国は追いつけない?

2016年 4月 22日17:22 提供:東方ネット 編集者:兪静斐

 中文请点击→下一页

  作者:莫邦富

 ここ1週間、日本の駅事情などを調査するために来日した中国視察団のアテンドに追われていた。視察団のメンバーは訪日が初めてなので、目にしたり、体験したいろいろなことに驚いている。

 Suicaもメンバーたちを感心させた「日本」の一つだった。駅ナカの店での買い物はもちろん、コンビニエンスストアでも、自動販売機でも使えるのを見て、感嘆していた。

 Suicaのようなカードは中国語では「交通カード」と呼ばれるが、交通関連の利用を考えて開発したこのプリペイドカードで駅ナカや駅周辺で靴や帽子、傘などを買えたりする体験をしたメンバーたちは新鮮なカルチャーショックを覚え、興奮していた。

 メンバーたちのこうした反応を目の当たりにした私はむしろ感慨深いものがこみ上げてきた。実は、この交通カードにおいては、かつて中国の方がリードした時期があったのだ。だが、いまや用途の広さにおいても便利さにおいても、日本に完全に追い抜かれた。

 私が書いたものの中でも、その日中の交通カードが追い抜いたり追い抜かれたりしてきた軌跡がはっきりと残っている。それをここに再現したい。

 上海の「交通カード」は

 Suicaのはるか先を行っていた

 2003年10月18日付朝日新聞に、私が「交通カードで先を行く」と題したものを書き、中国の交通カードの先行ぶりを紹介した。

 当時、関東の私鉄、地下鉄、バスの計43社が、06年春にも、JR東日本のカード「Suica(スイカ)」と相互利用できるようにする、と報じられたばかりだった。「カードの制度がばらばらなことの不便さが指摘されて久しい中、ようやく、という印象だ。この点で、上海はずっと先を行っている」と私は書いている。

 1999年に導入された上海の「交通カード」は、バス、地下鉄、タクシー、フェリー、水上バス、レンタカーなどの利用代金だけでなく、高速道路、ガソリンスタンド、駐車場、さらには家庭の水道代、ガス代、電気代などの支払いにも使える。短期間の傷害保険がついたり、使うほどポイントがたまる機能を持たせたりしたものもある。

 さらに2002年10月1日から、人気の観光地である無錫との間で、交通カードが相互に利用できるようになった。無錫では地元の交通カード利用者なら乗車料金が5%割引となるが、上海の交通カード所持者も同じ優遇を受けられる。

 無錫よりも上海に近い蘇州市では、先を越されたショックで、ただちにそれに加わると決め、すでに採用していたカードのシステムを、ためらいもなく上海や無錫と同じものに切り替えた。

 さらに03年5月には、浙江省の省都·杭州市でも、一部ながら上海の交通カードが使えるようになった。

 こうした当時の現状を把握した私は、「消費者の利便をよくすることは、より大きな商機につながる。投資環境もその分よくなるだろう。そうした判断が業界や都市間の壁を崩し、便利な交通カードをいち早く誕生させたのだ」と拍手を送った。

 その後もカード共通化の動きは止まず、現在は江蘇省の省都·南京市も合流を検討している。目標は、長江デルタの15都市間を交通カード一枚で自由に移動できることだ。

 上海カードにはない

 日本ならではの心遣い

 3年後の06年の年末に、私は朝日新聞のコラムに、再度、交通カードのことを取り上げた。見出しは「上海カードにないもの」となり、上海の交通カードの問題点を指摘した。

 「先日、JR東日本のカードSuica(スイカ)と見比べながら考えた。スイカも同じような機能を持っているが、上海のほうがはるかに便利だ。確かにスイカも買い物に使えるようになった。しかし、地下鉄や私鉄、バス、タクシーでの利用はようやく来年始まるところだ」

 「ただ、ふたつのカードを手にしているうちに、ある違いにふと気が付いた。スイカはカードの縁に切り込みがある。

 聞けば、切り込みは、目の不自由な人がチャージのために券売機にスイカを差し込む時、スイカの向きを判断できるようにつけてあるそうだ。ほとんどの利用者は気にしないが、この切り込みこそ、スイカの魅力と言えないだろうか。上海の交通カードは、こうした心遣いの面においては残念ながら負けている。

 さらによく観察すると、日本のいろいろなカードに、この切り込みがあることに気づく。テレホンカード、私鉄のプリペイドカードにもある。しかもそれぞれの位置が微妙に異なる。切り込みの形も、丸いものもあれば、ぎざぎざしたものもある。利用者にこれが何のカードなのかを教えるための仕組みでもあるのだろう」

 この発見に対して、私は当時、次のように感想を述べた。

 「経済発展の後発組である中国は、最新のハード、設備を導入し、便利なシステムを構築しやすい。半面、日本にはこれまでの経済発展で培ってきた魅力あふれるソフトがある。互いにライバル視する両国だが、視点を変えれば、刺激し合い学習し合う、いい相手かもしれない」

 しかし、上海の交通カードに遅れを取っていたSuicaはその後、目まぐるしい変化を遂げ、遥かに先を走るようになった。2014年3月の日経中文網(日本経済新聞の中国語サイト)に、私は新しい感想を書いた。

 「Suica一つで、大阪や京都に行っても現地の地下鉄や鉄道などをそのまま利用できる。クレジット機能も備えるようになった。上海の交通カードはとてもそこまで利用範囲を拡大しておらず、クレジット機能ももちろんない。10年前に先をリードしていた上海の交通カードはいまやSuicaに代表される日本の交通カードの後塵を拝するとしか言いようがない」

 しかし、これで日本の交通カードはもう安泰だと思うとすれば、話は違う。新しい競争は新しい舞台で起きている。機会があったら、日中交通カード競争物語の続編を書いてみたい。