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【中日双语专栏】横浜中華街が色あせた今、中華料理は“銀座”が熱い

2016年 3月 30日13:21 提供:東方ネット 編集者:兪静斐

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  作者 莫邦富

 中華料理と言えば、横浜中華街のことを思い起こす方が多いだろうと思う。しかし、実際、中華料理の発信地としての役割を横浜中華街がどうも背負えなくなってしまったようだ。

 中華料理といえば横浜中華街と言われていたが…

 ランチタイムの横浜中華街に行くと、固定料金の食べ放題がほとんどだ。基本メニューは似たり寄ったりしている。麻婆豆腐にチンジャオロースー、エビチリにふかひれ、さらにチャーハン、小籠包、ギョーザ、杏仁豆腐。夏になっても冬が来てもメニューはあまり変わらない。そしてどこの店頭でも巨大な肉まんを売っている。

 値段の安さに経営の重きを置いたせいか、肝心な味はとても評価できない。2007年の時点で、私はすでに全国紙に、「日本最大のチャイナタウン·横浜中華街に行くたびに、ある不満が膨らむ」とその味への不満をぶつけた。

 もうひとつの不満は中華料理の発信地としての役割を放棄してしまったことにある。「小籠包、刀削麺、火鍋……。近年、日本で認知されつつある新中華料理のどれを見ても、横浜が発信地にはなっていない」と切り込んだ。

 

横浜中華街の失墜を横目に

 

銀座が新たな発信地に

 中秋の節句が近づいたこの頃、在日中国人社会では、「鮮肉月餅」と呼ばれるお肉の月餅が人気を呼んでいる。日本人にとっては馴染みが薄い商品かもしれないが、在日中国人のなかでは郷愁を覚える対象となっている。

 こうした市場ニーズを目ざとく見出した東京都内の一部の中華レストランがその焼きたての鮮肉月餅を中秋の節句のお祝いとして常連客に配ったりする動きも見られる。

 しかし、こういった中華料理をめぐる新しい動きに、横浜中華街はついていけず、情報発信において完全に遅れてしまった。

 こうした問題を目にした私はついに堪忍袋の緒が切れてしまい、かなり前から横浜中華街に消費者としての不満をぶつけてきたのだ。

 一方、横浜中華街の失墜ぶりを横目にして、新しい中華料理の発信地の地位を固めつつあるエリアがある。池袋と銀座だ。多国籍的雑踏さを特徴とする池袋の中華料理については、また別途、機会を設けて語りたいが、今日は私の個人体験を中心に銀座の最新中華料理事情に触れてみたい。

 世界でもっとも知られている日本の繁華街と言えば、言うまでもなく銀座が推される。その銀座に近年、多くの中華レストランの有名店が出店している。

 北京ダックで名高い全聚徳、雲南料理を売り所にしている御膳房、上海では一世を風靡した小南国、羊肉などを主な食材にする火鍋料理の小肥羊などはその代表例と見ていいだろう。

 落ち着いてエレガントな雰囲気に開放感たっぷりの空間という食事の環境を提供できる御膳房銀座店では、雲南省からの天然のキノコ、漢方素材と日本国産の有機野菜などの食材を使用した雲南キノコ火鍋をはじめ、雲南省の代表料理や薬膳料理も楽しめる。

 余計な話だが、個人的には、雲南省由来の麺料理の一種とされる「過橋米線」が好きだ。過橋米線とは、煮えたぎったスープと油が入った土鍋などの容器を、お客さんの目の前で米線と呼ばれる雲南省の麺と野菜や中国ハムなど生の食材を入れ、スープの熱で具を加熱調理して食べるものを言う。

 中華しゃぶしゃぶと理解すればまず間違いない小肥羊銀座店も内装がシックで、凝っている。同社の幹部によれば、お客さんからの評価もよく、繁盛している、という。

 その銀座に進出したニューフェースと言えば、七丁目のビルの9階に店舗を構える「上海料理 四季·陸氏厨房」だ。開店してまだ2ヵ月だが、すでに知る人ぞ知る穴場の店になっている。

 オーナーがもともと新橋の中華料理店「味上海」を経営していた方だ。味上海は事前に予約しないと、席が取れないということで知られている店なので、多くのお客さんがそのまま四季·陸氏厨房に付いてきたのだ。

  

日本産の安心できる食材と伝統的な中華料理のコラボ

 味上海路線を受け継いだ四季·陸氏厨房の人気の理由は上海本場の味、あるいは上海でもすでに求めにくい本来の味の上海料理が手頃な料金で食べられるからだ。食材にも、上海出身の新華僑や上海滞在経験をもつ日本人に郷愁を呼び起こすものが多く使われている。たとえば、真菰(まこも)、上海蟹などだ。

 中国人顧客に親しまれる太刀魚や中国で「石斑魚」と訳され高級魚と知られるハタの蒸し料理(清蒸帯魚または清蒸石斑)や、醤油煮のダック(醤鴨)、上海や紹興を含む江南地方の名物料理と見られる冷製の蒸し鶏·白斬鶏(バイジャンジー)、豚のももの最上部にあたる蹄胖(ティパン)の角煮·紅焼蹄胖、ボタン海老などを紹興酒に漬けた酔蝦、一夜塩漬けした太刀魚を揚げた香煎帯魚、濃厚にしてあっさりとした庶民の味で喜ばれる高菜とイシモチのスープ·咸菜黄魚湯などが人気のメニューとなっている。

 中国の北方では水餃子が好まれているが、上海などの南方では、ワンタン、特に大き目のワンタンを指す大ワンタンというのは不動の人気を誇っている。四季·陸氏厨房の大ワンタンは食事を終えたお客さんの多くが持ち帰りにするほど人気を呼んでいる。

 日本の地方食材を積極的に使用していることも、私がこれらの中華レストランを評価しているもうひとつの理由だ。

 たとえば、御膳房では、自然に育った岩手の短角牛、仙台の黒豚、地鶏などを使用している。小肥羊は山梨県小淵沢の高原野菜を時々、仕入れている。開店したばかりの四季·陸氏厨房も日本地方の珍味やスイーツなどをメニューに導入しようと、意欲的に北海道や高知県との接触を始めている。

 これらの動きは、日本に生活の基盤を築いた新華僑経営者の視野の広さを示している。伝統的な中華料理のメニューに、日本の安全かつ健康的な地方産の食材が加われ、新しい味として消費者に評価されるのではないか、と期待されている。

 もちろん、ビジネスは市場の試練を受けなければならない。実際、銀座に進出したものの、鳴かず飛ばずで店をたたんでしまったケースもある。

 しかし、高級中華レストランが銀座に集まるその傾向は変わらないだろうと思う。近い将来に、銀座は日本における新しい中華料理の重要な情報発信地になるかもしれない。その期待を胸に抱きながら、銀座の中華レストランをこれからもチェックしていきたいと思う。


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