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「断捨離」の奥義(一)

2016年 12月 22日9:21 提供:東方ネット 編集者:兪静斐

  作者:銭 暁波

 「断捨離」と呼ばれているライフスタイルが世に流行っているようである。

 やましたひでこ女史が提唱したこの生活への新しい態度は世間の共感を呼び、その著書は三百万部も売れたという。2010年の日本の流行語にも選ばれ、一世風靡し、今もなおその影響力を発しつつあるようである。

 「断捨離」とは、入ってくるいらない物を断つ。また、家にあるいらない物を捨てる。しまいに、物への執着から離れていくとのことである。ゆき過ぎた「もったいない」精神の呪縛から背き離れようとするこの考え方は、最初、単なる家の片づけ術として紹介されていたが、やがて、その奥に潜んでいる哲学的な思想が徐々に受け入れられ、人間のあらゆる執着心から解き離されようとするものまでに発展した。

 やましたひでこ女史が提唱した生活術は新しい発案というより、伝統的な禅的精神をかたどったものといえよう。たとえば禅宗の言葉にある「知足(ちそく)」や「放下着(ほうげじゃく)」と同じように、あるいは「ゴミの重さは心の重さ」などの格言に内包されている精神の奥深さを実生活に反映させれば、「断捨離」が唱えている趣旨と非常に近いものになる。

 一方、この間終了したばかりの「11.11」、中国の「ネットショッピング·カーニバル」に目を転じてみよう。毎年のごとく、この日に限った半錯乱的な購買ぶりをみて思わず息をのんだ人も多いのではないかと思う。2016年の最新データによると、なんと零時をまわってわずか52秒で中国ネットショッピング最大手企業の消費額は10億元に達し、またまた記録更新となった(2015年は72秒で10億元)。その日丸一日の消費額は1207億元で、中国のみならず世界235の国と地域が地球規模のこのショッピング·カーニバルに加わったという。

 このネットショッピング·カーニバルは2009年からはじまり、毎年の11月11日に行われている。四つの「1」が並んでいるため、揶揄を込めて「独り者の日」と若者が勝手につくったものだが、いつの間にか「買い物の日」になってしまった。日本飴菓子工業協同組合が1980年から毎年3月14日を「ホワイトデー」として指定したのと同じように、消費者は常に「商法」に翻弄され、「商戦」の罠に陥れられてしまうのである。

 真冬の気温はどんどん下がっていっても、懐はますます暖かくなり、まことに結構な話である。経済の原動力である消費行為は人海戦術がくわわると、たちまち世界を驚かせてしまうほど不敵なものになる。エコノミストではなくても小生は「内需の拡大」や、「経済の活性化」など耳にタコができるぐらい聞かされたうたい文句の意味をちゃんと理解して、だんだん老化していくおつむに叩き込んでいるつもりである。しかしながら、夜通しでパソコンにへばり付き、クリックの速さを競い合い、目玉商品を奪い合うような乱痴気騒ぎぶり、あるいは、地球を丸ごと買ってしまいそうなこの勢いに対して、果たして私たちは心から喜ぶべきだろうか。

 さて、紙幅の関係で今回語りきれなかった「断捨離」の奥義については、次回、もう少し語っていきたい。