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ハート·カバー(一)

2016年 7月 20日17:05 編集者:兪静斐

  作者:銭暁波

 タイの空港で日本の小学生のグループがフライトを待っている間に、おしゃべりやゲームなどで騒ぎ立てることなく、みんな床に座り、本を取り出し、静かに書物を読み耽けている写真が中国のインターネットで話題になっている。

 秩序よく、一心不乱に本を読んでいる小学生たちの姿はみるものを感心させたが、それ以上に考えさせられるものがあった。携帯電話に内蔵されているAPPや電子ブックリーダーで本を読む風潮がますます盛んになっている世の中だが、日本の小学生たちの読書風景は古き良き時代を彷彿させるような、どこか素朴であたたかなイメージがあって、写真を見た小生は思わず感動した。

 日本人は読書好き。都会の一角で、仕事の合間に、好きな書物を読み耽ることはストレスのたまりやすい日本人にとって、心の静けさを取り戻す良き休憩の取り方である。また、移動距離の長い通勤タイムに、電車に揺られながら本を読むことも忙しい日本人の有効な時間利用法である。よくみると、公共の場で読書している日本人の特徴というと、読んでいる書物にはブックカバーがかけられていることである。

 ブックカバー、つまり本を包む包装紙のことである。もっとも多いのは紙製のもので、日本では本屋で新しい本を買うと、わざわざ注文しなくても店員はすばやく本に書店や出版社のオリジナルブックカバーをかけてくれる。お代済みのしるしとして、また本屋や出版社の宣伝も兼ねており、さらに大切な本を守ってくれる。このブックカバーはまさに一石二鳥、いや、一石三鳥、四鳥の役割を果たしてくれている。

 本屋から無料でもらうブックカバーは簡易なもので、デザインもそれほど凝っていないため、本をこよなく愛する読書家にとってはそれだけでは少々物足りない。そこでいろいろな個性的なブックカバーがうまれた。皮製、布製、ビニール製、さらに高価なブランド物も少なくない。また、本のサイズに合わせて、文庫本、新書、単行本用など多種多様である。ブックカバーというのはもはや本と一体となり、適度に読書家の趣味や品位をあらわしている。

 ちなみに、ブックカバーというのは和製英語のようである。英語で正しく表現すると「Book jacket」というらしい。ブックカバーを漢語表現に置き換えると「書皮」と称され、語源はやはり中国語ではないかと思う。

 では、何ゆえに日本人は読んでいる書物にカバーをかけたがるのだろう。ブックカバーは大事な本を守ってくれる。また、お洒落で知的な雰囲気をつくることもできる。ただ、それだけではない。実はこの日本人ならではの行為は、日本人の言動意識と大いに関係している。書物にカバーをかけることから、日本社会における人間関係、生活慣習、または日本人の深層心理をも見出せるのではないかと思う。

 その話、また次回、みなさんと一緒に考えていきたい。