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立ち食いそば屋とフェミニズム(二)

2016年 7月 14日16:40 編集者:兪静斐

  作者:銭暁波

 前回の続きである。

 立ち食いそば屋のような飲食店は、かつては日本の男性社会の象徴的なものだといっても過言ではなかった。なぜそういえるかというと、ちょっと前までは、女性一人では立ち食いそば屋のようなところには入りづらかったのである。別に「女性入店禁止」という看板を掲げているわけではないのに、なぜ女性が入店しづらかったか。一口でいえば、やはり世間体の古い観念にとらわれているためではないかと思う。

 男性中心社会の日本では、いわゆる「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担意識は古くから根強く存在している。戦後の高度経済成長期においてこの意識はより固定化されたため、立ち食いそば屋のようなお店は勤め人である男性のために存在するものという意識が強く、家庭の世話をする女性が入ると、「だらしがない」「みっともない」とみられてしまい、女性は入るべからずという暗黙のルールとして女性の入店が封じられてしまうのであった。また、立ったままそそくさと食事を済ませてしまうという荒っぽい食べ方はやはり男性的なので、女性のお上品なイメージと合わないのである。このような風潮は立ち食いそば屋のみならず、牛丼チェーン店などの和風ファーストフード系のお店においては一般的であった。

 しかし、男女雇用機会均等法の施行やそのすぐ後のバブルの崩壊にともない、性別役割分担意識に変化が生じてきた。「女は家庭」という固定観念が徐々に薄れていき、各分野において女性は社会進出するようになった。女性は日本の経済を立て直すために重要な力と化したのである。社会の変化とともに、立ち食いそば屋にも変化がみられた。

 今の時代となって、立ち食いそば屋にはよく若いOL風の女性を見かけるようになった。牛丼チェーンのお店にも男性と肩を並べて座って、黙々と食事をする女性が増えてきた。この現象から日本は男女平等社会になったというのはまだ少し早いが、意識的には確実に変化があることは間違いないのである。

 前回にも話したが、日本では立ち食いそば屋のほかにも立ち飲み屋や、立ち食い寿司屋など、立って食べるお店が多数存在している。近年、立ち食い飲食業界では新しい旋風が巻き起こり、新たなジャンルのお店がどんどん登場し、人気を得ている。中でも特に立ち食いイタリアンや、立ち食いフレンチなど洋食グルメのお店が目立っている。洋食の立ち食いは欧米では盛んな立食パーティーなどのイメージを受け継いだもので、おやじくさい立ち食い飲食のイメージを払拭するように、おしゃれな感じを作り上げるこのようなお店は若い人や、女性をターゲットにしている。その狙いは大成功したようで、女性の利用客が急増し、いまでは新しいブームになっているという。

 今度、片手にシャンパングラスを持って、「君の瞳に乾杯」なんて、言ってみたいものだね、街角の立ち飲み屋で。(了)