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【安翊青コラム】一帯一路へ注力する日本通運へのクローズアップ

2017年 8月 2日13:34 提供:東方ネット 編集者:兪静斐

GUEST PROFILE

杉山龍雄 SUGIYAMATATSUO

1982年      拓殖大学外国語学部中国語学科卒業

1982年      日本通運株式会社入社

1994年~1997年  日本通運(株)北京駐在員事務所

         上海通運勤務

1997年~2004年  日本通運(株)本社国際輸送事業部勤務

2004年~2010年  日本通運(株)アジア·オセアニア地域総括室

         中国室勤務(上海駐在)

2010年~2014年  日本通運(株)台湾日通国際物流股份有限公司董事長

2014年~2017年·4月日本通運(株)執行役員東アジアブロック地域統括

         香港日本通運取締役会長兼日通国際物流(中国)董事長

2017年5月~現在 日本通運(株)常務執行役員東アジアブロック地域総括

         香港日本通運取締役会長兼日通国際物流(中国)董事長

(その他の役職)

中国倉庫協会保税倉庫分会副会長

北京物資学院客員教授、上海海事大学客員教授

 

杉山様は今回のご駐在は二回目の中国駐在だと聞いていますが、前回駐在時と現在を比べ、変化が大きいところを教えてください。

 「中国を愛しています」という言葉を常に口にしていますが、実は今回の中国駐在が三回目となりました。

 初めて中国に駐在したのは、1994年でした。この頃はちょうど日系企業が中国進出ブームでして、当社の多くのクライアントもこの時期から進出し始めました。当時は生産設備の輸送から現地生産にあたって、中国への部材や原材料の輸入、そして製品の日本への輸出といった日系企業向けの一連の輸出入物流サービスが物凄く忙しかった時期でした。当時の中国は発展が著しい時期でしたね。

 2回目の駐在は、2004年でした。当時は、中国へ進出している日系企業を含め、外資企業が成熟し、安定した時期でした。ちょうど中国も「世界の工場」から「世界の市場」になったタイミングで、当社の仕事の内容も一回目の赴任当初とはだいぶ変わりました。それまでは輸出入の仕事が多かったのですが、国内市場向けの販売物流のニーズや案件が多く出てきた時期でもありました。その後、リーマンショックもあり、物流業界にとってはもちろん、日系のメーカーにとっても大変厳しい時期でした。

 3回目の駐在で感じたのは、中国経済の成長スピードが緩やかになってきたことです。CHINA +ONEがきっかけに、日系企業の第二工場がアセアン諸国に移ったことにより、従来の国内物流だけでなく、クロスボーダー鉄道輸送やトラック輸送で中国にあるサプライヤーからの部材などを東南アジアへ輸送したり、或は越境ECといった新しいビジネスモデルも徐々に出てきました。

近年、中国経済が猛スピードで発展し、従来の「世界の工場」と呼ばれていた存在から現在の「消費大国」に変わり、国民は健康で安全な食品に着目し、外国産の食品、特に日本産の商品に対するニーズが高まりつつあります。それが背景に、日通様は中国最大手の通関·物流会社である中国外運グループと提携し、従来2カ月ほどかかっていた食品輸入手続きを20日~30日程度まで大幅に短縮する「NEXEA(ネックスイーエー)-美食特快(びしょくとっかい)」を2017年1月5日から販売し始めました。半年を通過していますが、現状はどうでしょうか。

 中国では現在、食の安全をとても重視し、その中で日本の食品はとても安全だというイメージを持つ方が多いようです。特に近年では、日本へ行く中国人が増えることにつれ、日本食に対する探究心も増しているようです。中国で日本の食品のニーズが高まる中、当社はスムーズに中国へ輸入出来る商品が作れたら、時勢にマッチするだろうと考え、美食特快という商品を作りました。現在の美食特快では日本食が多いのですが、華南地区では、中国で人気がある日本酒や吟醸酒というパータンもあるので、今後コールドチェーンのサービスも進めていきたいと考えています。

 また、中国は他の国や地域に比べ、食品輸入の規制がとても厳しく、日通グループでは日本の全ての都道府県に拠点を持っているので、その地方特定の名産品もたくさんあり、今後は美食特快のサービスの幅を広げ、日本の美味しいものを中国に広めていきたいと考えています。勿論、ビジネスだけではなく、日本と中国の良い関係作りにも効果があることなので、これからは、もっと美食特快に力を入れていきたいと考えています。

日通様は今年の5月より、中国欧州間クロスボーダー鉄道輸送サービスの取扱い可能な都市と輸送ルートを大幅に拡大したとお聞きしています。世界展開にあたり、また大きな一歩を踏み出したと考えますが、今後の経営ビジョンはどう考えますか。

 日通としては、中国欧州鉄道輸送にとても期待をしています。何故なら、鉄道輸送は海上輸送より早く、海上輸送であれば、上海からヨーロッパの主要港まで大体40日間必要でしたが、鉄道輸送では14日間まで短縮できます。これまでのフォワーディングでは、海運と空運が中心でしたが、上海と欧州間の鉄道輸送インフラが整備されたことで、鉄道輸送も今後は更に利用が進むと感じています。また、日本通運という社名の「通運」は、「鉄道輸送」を意味しています。当社は元々トラック輸送などが無い時代に「通運」から始まった、鉄道輸送が祖業の会社です。そのため、今でも日本では鉄道コンテナ輸送における当社のシェアは40%を占め、日本最大シェアとなります。そのため、中国においても、上海を含む中国各都市と欧州間の鉄道輸送インフラが整備されたことに伴い、欧州の拠点とうまく連携し、更に中国欧州間鉄道輸送を強化していきたいと考えています。現状では、鉄道輸送ビジネスは毎年約50%の伸び率で伸びています。

 また、当社としては、中国国内の鉄道にも大変興味を持っていますし、実際ビジネスも増えてきています。その理由として考えられるのは、現在、中国では環境問題が深刻となっています。そのため、中国でも排出ガス削減対策が進んだため、鉄道輸送に置き換えて、CO2を減らす、モーダルシフトと呼ばれる動きに注目が集まっています。加えて、今年から交通規制が厳しくなり、大型車両が削減されたことで、自動車輸送から鉄道輸送への切り替えが進みました。当社としては、これを機に、鉄道輸送を祖業とする当社がどんどんビジネスを拡大していきたいと考えています。

直近のロイター企業調査によると、日本企業にとって最も商機が拡大する貿易協定は日米自由貿易協定(FTA)との回答が32%を占め、米国抜き環太平洋連携協定(TPP)の25%を上回った。ロシアとの経済協力のメリットに期待する日本企業は14%だった。ただ、中国の「一帯一路」計画に関心が薄く、中国インフラ投資計画への期待は6%にとどまった。これについて、ご見解をお聞かせください。

 中国の「一帯一路」は65か国を巻き込んでいる大変大きなプロジェクトであり、日本政府としては6月に安倍首相が協力の意向を表明し、これからもっと拡大していく可能性があると認識しています。「一帯一路」の沿線では、まずインフラ建設が進むため、建設重機メーカーなどは業績的にも大変好調と聞いています。また、インフラが整備され、生産企業の誘致が進むと、部材や原材料の調達や、製品の輸出が増加し、物流に対するニーズも増えると考えています。

 当社としては、鉄道輸送に関するこの「一帯一路」の沿線には大変興味を持っています。「一帯一路」に関するビジネスは、日本の企業は中国の企業ともっと協力していくべきです。日本の企業は、カザフスタンやウズベキスタン、中東諸国などの「一帯一路」沿線の国々に対する取り組みが弱いと感じていますが、中国の企業と手を組めば、ビジネスが拡大するチャンスも増えるし、今以上に大きな市場になる可能性もあるので、日系企業にとっても良い機会になると考えています。

中国のコスト増などの問題に伴い、日本企業の対中投資が大幅に減り、チャイナ·プラス·ワンが本格的に動きはじめ、日本企業の多くは東南アジアに進出し始めていましたが、東南アジアで成功している日系がほとんどなく、これから撤退したい、若しくは再び中国に戻りたいとお聞きしています。これについて、ご見解をお聞かせください。

 当社のクライアントの多くが東南アジアに進出しているので、当社としても東南アジアは重点地域として、投資を含めて力を入れています。

 東南アジアは国が多いので、全ての国でのビジネスが成功しているとは思いません。人口が多いフィリピンやインドネシアは経済成長率も高いですが、物づくりの品質からみると、やはり東南アジアよりも中国のレベルの方が高いため、安い製品は東南アジアで作りますが、それ以外はやはり中国で作ることになるだろうと考えています。

座右の銘もしあれば、教えてください。

 拓殖大学出身なので、拓大の校歌にある一句を座右の銘にしています。それは、「人種の色と地の境我が立つ前に差別なし」という言葉です。拓殖大学では、国内は勿論のこと、アジアや世界へ羽ばたき、社会へ貢献できる真の国際人を育成していこう、というのを建学の精神·理念にしています。これは企業においても全く同じことが言えると思います。人種や国籍など関係なく、お互いに尊重し合うことが出来れば、企業は絶対にうまくいきます。当社東アジアブロック地域総括室では、現在7か国の人材が揃っています。ただし、カルチャーや言葉が違っても、お互い理解し合えれば、企業にとってはプラスになることは間違いないと考えています。


COMPANY PROFILE

 日本通運は1937年に設立され、現在では陸上輸送、海上輸送、航空輸送を軸に、重機建設輸送や現金輸送などの警備輸送、美術品輸送なども行う日本最大の総合物流企業である。海外進出は1958年に米国ニューヨークに初代駐在員事務所を設立後、現在では42か国、267都市に現地法人および拠点を設置し、海外だけでも2万名を超える社員を有する世界規模の海外ネットワークを展開している。