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漢詩の美を伝える現代の歌声(後編)

2019年 1月 18日15:54 提供:中国国際放送局

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CCTV中央電視台の音楽番組「古代名詩を歌い継ぐ」は2018年から始まり、中高年をはじめ、若者の間でも話題となり、高い視聴率を誇っています。さらにこの番組をきっかけにして、中国全土で漢詩ブームを巻き起こしました。今回の中国メロディーは引き続き、テレビ番組「古代名詩を歌い継ぐ」に登場した音楽作品をお送りします。

千年にわたる絶唱、別れの痛みを訴える

中国では友人に別れを告げる時、話したいことはたくさんあるけれど、最後に伝える言葉としては、この漢詩の名句がぴったりかもしれません。「君に勧む 更に盡尽くせ一杯の酒を 西のかた陽関を出ずれば故人無からん」。

この詩句は1000年前の唐の詩人・王維の七言絶句「送元二使安西(元二の安西に使するを送る」)の中の名句で、CCTVの音楽番組「古代名詩を歌い継ぐ」の舞台で歌手・曹軒賓が琴やピアノの伴奏とともに陝西省の方言でこの漢詩を歌い、作品の中の別れの思いは千年の時を超えて多くの観客のこころを打ちました。

曹軒賓は陝西省西安市出身で、西安は唐の時代の中心地・長安でした。彼は陝西方言でこの離別情緒に溢れる絶唱を歌い、陝西方言の強固な気概はまさしく別れの時の痛みにぴったり合います。また、有名な琴の演奏家・趙家珍は、800年の歴史を持つ宋の時代の琴を奏でてこの歌を演奏し、澄みきった音色は曹軒賓の素朴で真摯な歌声と相まって、目の前に友人たちと別れを告げた後、一人で孤独に旅に出かけるさびしい姿が、陽関の風と砂の中に消えてしまうシーンが浮かんできます。

永遠の女性ヒーロー・ムーランを再現

「ムーランの詩」はラウル・シャンが南北時代の民謡「ムーランの詩」を元にアレンジした同じタイトルの歌です。ラウル・シャンの迫力ある歌声は女性ヒーロー・ムーランの凛々しい姿と女性の優しさを歌い上げました。ムーランは中国古代の女性の英雄で、彼女が父に代わり、男装して出征し、勲功を立てた物語は広く伝えられています。

この歌は歌手・ラウル・シャンが古代民謡をモチーフとして作曲し、歌ったもので、ムーランが女性英雄として戦場を駆け回る勇猛果敢な性格と女の子として親と家族を思う気持ちを生き生きと表現しました。ラウル・シャン自身が運命と戦う勇気という点で、ムーランと重なるところが多いことから、この歌には彼女の本当の感情が込められていると評価されました。

ラウル・シャンは幼いころ、両親が離婚した中で育ちましたが、彼女は病気がちだった父の面倒を見ながら、大きな志を立てて、優れた成績で名門の復旦大学に入学しました。そして、2006年、新人歌手のオーディション番組「超級女声(スーパーガールズ)」に出場して優勝し、歌手デビューを果たしました。ラウル・シャンは「ムーランは私のヒーローで、彼女の運命の中に私が成長する足跡と重なるところがあると思う」と話しています。

白髪の歌手、古代名詩の声を今に伝える

74歳の白髪の歌手ピーター・チェンは舞台の真ん中でギターを弾きながら、宋の名詩人・辛棄疾の詩作「青玉案・元夕」を歌いました。冒頭の詩句「東風夜放花千樹(春の風に咲き誇る花のように、花火が夜空に咲いては星の雨のごとく散り落ちてゆく)」を歌い始めると、すべての観客はその自由奔放なロック音楽に魅了され、嵐のような拍手を送りました。この年配の歌手はたちまち舞台の注目の的となり、スポットライトに照らされた彼の影の中には多くの語りきれない物語を感じさせました。

ピーター・チェンは1980年代、台湾ポップス音楽界において最も象徴的な存在のひとりで、多くの作品を作り、数え切れない人々の青春の歳月に美しい思い出を残しました。ここ十数年、彼は芸能界からからフェードアウトしていましたが、今、74歳の彼は800年前の辛棄疾と時空を越えて共同作品「青玉案・元夕」を持って、再び舞台に戻ってきました。その情熱溢れる歌声はいまなお、多くの人々の心を揺り動かしました。

番組でピーター・チェンは「この30年間、祖先が伝えてきた古代名詩がとても大事なものだと思っていた。まるではるか昔からの呼びかけが聞こえるようで、『これらの古代名詩を改めて編曲し、子々孫々に伝えてほしい』という声を耳にした。この呼びかけが聞こえたのは俺だけではない。みんな聞こえてくるだろう?」と語ると、会場のすべての観客たちは大きな声で「聞こえた、聞こえた」と答えました。

この年配のミュージシャンの祖国への愛は、きっと人々の心の中にある伝統文化への情熱を燃やすことができるものだと思います。

番組の中でお送りした曲

1曲目別君嘆(別れのため息)

この曲は歌手・曹軒賓が歌い、琴の演奏家・趙家珍が800年の歴史を持つ琴で演奏しています。

歌詞:

渭城の朝の雨が

軽く舞い上がる塵を潤している

旅館のそばの柳の木は

葉が青々として色も鮮やかだ

さあ 君に勧めよう

さらに もういっぱいの酒を飲もうではないか

西のほうにある関所の陽関を出てしまったら

親しい友人も もういなくなるだろうから

2曲目木蘭辞(ムーランの詩)

この曲はラウル・シャンが南北時代の民謡「ムーランの詩」を元にアレンジした同じタイトルの歌です。

歌詞:

多くの山を越え

多くの苦労を乗り越える

ムーランが出征し

勇ましい感情で胸を一杯にする

故郷を見渡す

悲しみが深くなる

3曲目青玉案・元夕

この曲はピーター・チェンが辛棄疾の名作「青玉案・元夕」を元にアレンジしたものです。

歌詞:

春の風に咲き誇る花のように

花火が夜空に咲いては星の雨のごとく散り落ちてゆく

香りを漂わせながら 通り過ぎてゆく豪華な馬車

奥ゆかしき笛の音 明かりを放つ灯篭が

泳いでいるようにも 踊っているようにも見える

きれいに飾り立て笑顔で話しながら

ほのかな香りを残して去ってゆく女性の群れ

しかし彼女の姿はどこにもない

ふと振り向いてみたら

なんと明かりがまばらなところに

彼女がいたではないか