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社会

是枝裕和「なぜ僕の作品がそんなに好きなのか中国人に聞いてみたい」

2017年4月26日 9:35
 提供:新華網日本語

日本の映画監督、テレビドキュメンタリー演出家である是枝裕和は、ポスト小津安二郎と言われている。その監督作品には、「そして父になる」、「誰も知らない」、「幻の光」、「海街diary」、「歩いても 歩いても」、「花よりもなほ」などがあり、カンヌ国際映画祭審査員賞・エキュメニカル賞特別表彰を受賞したこともある。彼の作品は社会に対する思いがテーマになっていることが多く、ヒューマニズムの色が濃く、素朴な作風で、内省的な作品が多い。(文:袁雲児。北京日報掲載)

記者:今年の北京国際映画祭では8作品が上映され、どれも大きな人気を集めましたが、これほど人気になっているのはご存知でしたか?

是枝:本当に知らないので、びっくりしている。ここ数日、中国でとても盛りあがっているようだが、私の作品のどの部分に興味を持ってくれているのか、中国の方に聞いてみたいと思っていた。

記者:是枝さんの映画作品は商業的にも芸術的にも大きな成功を収めていますが、その秘訣は何ですか?

是枝:実際には全てが売れたわけではない。「幻の光」、「誰も知らない」、「ワンダフルライフ」の興行収入はあまり伸びなかった。黒字になったのは最近の3作品ぐらいで、出資者や配給会社も満足している。興行収入も確かに重要で、それが良ければ次の作品を作るチャンスをもらえる。でも、僕は映画を作る時は興行収入をそれほど重視しておらず、そのために映画を作ることはない。僕が重視しているのは周囲の人物や物語で、一般の観客を対象にして映画を作っている。これも僕の作品の価値と魅力だと思っている。

記者:是枝さんの作品は家庭、特に離婚や新生児取り違えなどの問題を抱えた家庭をテーマにしていることが多いですよね。

是枝:子供と親の間にすでに絆ができているのに、その子供が自分の産んだ子供ではなかったとしたら、本当の血縁関係とは一体何なのだろう?血縁関係が絶対なのだろうか?これは僕が父親になってから考えていること。作品を作る際、意識的に一つのテーマに絞ることはないが、現状はそうなっているのだろう。

記者:是枝さんの作品は、生活の中での苦しみや問題から逃避することはないものの、人間味にあふれ、見る人を温かい気持ちにさせてくれます。

是枝:もしそう感じてもらえているなら、映画を作ってきて本当に良かった。映画を作る時はいつも物事の二面性を考えるようにしている。幸せな物語だけを書くというのは、僕にはできない。幸せの背後にも暗いものがあるはずで、その反対も同じ。例えば、「誰も知らない」に出てくる子供の運命は悲惨だが、そのような子供の生活の中に差し込む太陽の光はないのかと考える。このように考えることが僕が映画を作る時の習慣となっている。

記者:是枝さんの作品は生活感が濃く、とても現実味があります。それは、多くの中国映画に欠けている部分ですが、そのことに対して何か提案はありますか?

是枝:日本では、「細かい所が勝敗を分ける」と言われている。僕が脚本を書く時は、デッサンと同じように、意識的に細かい所にまで注意を払う。人を観察したり描写したりするというのも、細かい所から始まる。

記者:中国の映画館での上映も考えていますか?

是枝:もちろん。だた、今のところはその計画はない。もし本当に上映されても、ドラえもんほどヒットしないだろう。

(人民網日本語版)