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近現代の中国を日本人に紹介するのは上海にいる私の使命 =在上海日本人イラストレーター宇山紡

2022年 8月 4日15:02 提供:東方網

  上海の古い住宅に住み、大きな花模様の綿入れを着て、痰つぼをおやつ入れにして昔の魔法瓶やほうろう引きの洗面器を使う......。今の上海でこのような生活をしている人はほとんどいないだろう。だが、日本人の女性である宇山紡は、中国らしさに溢れるこういったモノを使い、それをイラストで表現することで人々の注目を浴びている。中国人タレントの賈玲と似ているので「日本の賈玲」と呼ばれることもあり、これが彼女の第一印象となっている。東方網の記者はそんな彼女をより理解しようと、このたび話を聞いた。そしてこれは彼女にとって生活スタイルであるという以上に、近現代の中国、本当の中国を日本人に伝えたいという夢を彼女が持っていることを知った。 

  ロックダウンの最大の成果は創作料理が上手になったこと 

  宇山紡という名前が聞かれるようになったのは、上海がロックダウンに入ってから。彼女のイラストは、ロックダウン中の生活で経験した様々なできごとを書いた文章とともに、人々の注目を集めるようになった。宇山紡はロックダウン中にたくさんのイラストを描いて、この特別な時期を記録した。ロックダウンの前は食事をいつもデリバリーに頼っていたが、ロックダウンに入ってからそれがほとんど止まってしまったので、自分で料理を始めた。だから、ロックダウン中の最大の成長と言えば料理が上手になったこと。いろいろなメニューを考案した。たとえば、茎レタスを最初にもらった時はどうしたらいいか分からなくて、ニンニクと一緒にぐちゃぐちゃに揉んでから醬油とコーラを入れ、つけものにして美味しく食べた。それから、油麺筋(揚げ麩)。ハンバーガーバンズのように真ん中から半分に切って、肉、チーズ、卵などを入れて焼いてみたがダイエットにぴったりだった。トサカのついたままの鶏を手に取ったのも初めてだ。最初はお墓に埋めてあげようかと思ったが、おぼつかない手でひとつひとつバラして焼き鳥にした。初めて青椒肉絲を作った時は、間違えて辛いピーマンを使ってしまって辛くて涙がボロボロ出た。

  料理だけではない。デリバリーのお兄さんや近隣の住民からもいろいろと助けてもらった。「前にデリバリーをやっている王さんと知り合ったんですが、ロックダウンに入って家で彼とチャットし始めました。王さんが食べ物や水は足りてるかと聞くので、あんまり多くないと言ったら、彼は家に戻って卵や野菜を差し入れてくれたんです。それに、家の飲み水が足りないので仲良しの友達が私のために水を作ってくれているんだと言ったら、王さんはその友達のところへもわざわざ水を届けてくれたんです」と宇山さんは述べた。「王さんは『袖振り合うも他生の縁。飢えさせるわけにはいかないよ』と言ってくれました。なんとお礼を言ったら分かりません」。そして王さんが、当時ほとんどデリバリーの人間しか見る事ができなかった外や上海バンドの画像をその場から送ってくれたのを見た時は、普通ではない上海の様子に感無量になったという。宇山紡が住んでいるのは上海の古い住宅だ。ご近所さんはおじいさんやおばあさんで、みなよく面倒を見てくれるそうだ。 

  ロックダウンに入って最初の抗原検査キッドが配られたのは午後8時。よく分からなくて隣のおじさんの家に聞きに行った。「おじさんは使い方を一通りやって見せてくれたんですが、全然緊張していませんでした。近所にこんな親切で優しい人が住んでいるなんて、本当に幸せ」と、宇山紡は語る。 

  6月1日早暁、約2ヶ月に渡ったロックダウン生活が終わった。宇山紡は家を出るとコンビニが店を開けているのを見て入り、アイスクリームを買った。幸せを感じた。その後、広東路にある新疆料理店へ行った。あまりに美味しくて打包をしたいと言ったらオーナーが麺の元になる団子をくれて、家で作った。麺の太さはまちまちになってしまったが、作るのは楽しかったし、何よりおいしかった。「簡単に見えるけど、自分でやってみると難しい。よく勉強しなきゃ」と宇山紡は言った。外で食事をするだけでなく、時間のある時には創作料理にも挑戦している。マコモダケと明太子の炊き込みごはんはおいしくて3合も食べたそうだ。お風呂も大好きなので、念願だった極楽湯へも行った。「ロッカーを開けたらなんと30枚もの割引券が入っていたんです。店員に聞いたら『ほんとにいいんですか?貰っちゃいますよ?』」とふざけて聞いたら「いいですよ!」と言われた。「ほんとに興奮しました」。

  近現代の中国を日本人に伝えるのは上海にいる私の使命 

  食べ物について尋ねると宇山紡の話は尽きないようだった。上海に来たばかりの時から好きなのは麻辣燙、文廟菜飯、蘭州ラーメン、無錫小籠、凱司令栗子ケーキなど。最近は仙草がお気に入りだ。「この前、友達がこれおいしいよ、と言って薦めてくれたのが仙草だったんです。とてももちもちして、こんなにおいしいものだとは上海に来てから6年経っても知らなかった。夏に向いていますね」と言う。凱司令の栗ケーキは栗がいっぱいでおいしいので、日本人によく薦めるものだ。「これって凱司令という人が創ったお店なんですか?」と記者に尋ねる彼女は、上海の老舗にも興味津々のようだ。「あとでよく調べてイラストを描きます」と言った。彼女の家の屋上では、あるおじさんが鳩を飼っている。宇山紡はかねてから上海にある古い建物や家で鳩を飼う人を多く見かけたことから鳩を飼う、または中国の鳩レース文化に興味を持ち始めた。鳩やハト小屋を観察して、自分の新作に描いた。「そのうち、鳩を食べてみたくなるかもしれませんね」。 

  

  宇山紡にとって中国人の生活は魅力にあふれている。特に近現代の中国が好きで、今の中国人がほとんど使っていないものに惹きつけられることが多いという。たとえば、痰つぼや大きな花模様の棉入れ、そして彼女が今寝ているベッドだ。「昨年、引越ししようと家を探していた時に、この今いる部屋は台所とトイレが共用だったけど、民国時代のベッドがあったので即、契約したんです。割と狭いし、頭と足元の所に鏡があるのがちょっと怖いけど、歴史のあるベッドで寝るのも面白いでしょう?」と笑った。小紅書にベッドのイラストを描くと、フォロワーさんが「镶嵌的木雕雕花叫“花板”,那个才是值钱的精华(象眼された木彫りの花は「花板」と呼ばれ、それこそ価値のある精華だ)」と言っていた。 

  

  時間があれば、緑皮車(緑に塗られた旧型車両の電車)に乗って旅行に行く。これまで広州、安徽、天津、西安、桂林、雲南等に行った。旅先で中国人と縁を結ぶのも貴重な体験だ。西安に行った時は西安美術学院の先生と出会った。お互い美術が専門なので意気投合し、列車を降りてから西安美術学院に連れて行ってもらい、大学で行われていた兵馬俑についての授業で日本人の角度から話をしたりもした。兵馬俑の顔は一体として同じものがない。当時の工匠が特に心をこめて制作したに違いないと思う。記者がもうすぐ兵馬俑展が上海奉賢博物館で開かれると話すと、宇山紡は喜んで必ず見に行くと答えた。 

  中国文化への愛を、宇山紡はイラストで発信している。ウェボーでは中国の節句を擬人化して表現した。宇山紡は中国の節句をもっと日本人に知ってもらいたいと思う。中秋節のイラストでは円満の意味を込めて、月、兔、月餅を作るパティシエと月で薬を作る(玉兔捣药)ドクターを一人の女の子として表現した。国慶節のイラストは荷物を持って旅行に出る女の子だ。今の中国は国慶節が連休になるので、多くの中国人が旅行に行くからだ。擬人化で表す中国の節句の作品以外にも、宇山紡は『上海絵日記』、『日本人住在老房子』、『ロックダウン中の日本人』、『南京絵日記』などの作品を通じて、自分の今の生活を記録している。 

  そして、条件が許される限り、上海にいる日本人に上海の歴史、古き良き風景を紹介するまちあるきイベントを開催している。「白相大上海-Shanghai Citywalk-」という上海語が入った名前のイベントで、上海の歴史研究家の格里董と協力して行っている。格里董は説明担当で、宇山紡は運営担当だ。「今のところ約20コースあります。メンバーは400人以上いて、上海で生活している日本人の他に、日本語を勉強したい中国人も参加しています」。宇山紡はメンバーと一緒に下町を歩き、蘇州河の岸辺などへ行く。「みんなに上海を別の視点からも見て欲しい。ちょっと違うやり方で、日本人に上海を紹介したいんです」と述べた。「上海が好きです。特別な縁があるのでしょう。ロックダウンが終わって上海を離れた人もいますが、私はここに残ります。上海を離れるなんて想像できません。ここでの生活に馴染んでいるし、自由だから。私は日本人に向けて近現代の上海、中国、そして中国人が生活で使っている日用品を発信していきたい。これが上海にいる私の使命です」と語った。今年は中日国交正常化50周年であり、宇山紡は自分がデザインしたロゴを記者に見せてくれた。これを自由に使ってもらってみなさんの中日友好活動に役立ててくれたら嬉しいです」。

  宇山紡: 在上海の日本人イラストレーター。日本の武蔵野美術大学卒業。上海で生活して7年目。

(曹 俊 実習生竇易欣)