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外国人受刑者はどんな刑務所生活を送っているか、上海青浦刑務所を見学

2020年 10月 13日17:18 提供:東方網 編集者:範易成

 「顧繡」は上海の伝統的な刺繡の一つで、非常に細い糸を使用するのが特徴だ。次のような場面を想像して欲しい。目に見えないほど細い刺繡糸が布の表裏を行ったり来たりしている。一時間が経っても布の表には何も浮かんでこない。半日後、生き生きとした雄鶏の尾羽がようやく見えてきた。しかし、その刺繡針を握っているのは囚人服を着ている黒人だ。

 もう一つの場面を想像してみよう。舞台の上ではカラフルな衣装に身を包んだカメルーン人が、思い切り奔放なアフリカンダンスを踊っている。野性の歌声が会場に響き渡る中、別な所から英語のモノローグが聞こえてくる。「これまで私が求めていた『美しさ』というものは、虚栄と欲張りと享楽に過ぎない」。そうして鉄の扉がゆっくりと降りてゆき、英語に代わって今度は韓国語の歌が聞こえてくる。彼らはみな受刑者で、ミュージカルの形で教育改造を受けているのだ。

 ここは上海青浦刑務所である。一般に想像される刑務所とは少し異なり、ここの受刑者は「顧繡」といった無形文化遺産に登録されている伝統工芸の他、様々な芸術活動に参加することができる。

 刑務所は上海市における唯一の外国人男性犯罪者の収容施設として認定されており、年間約40か国の外国人犯罪者が収監されている。このうち9割以上の受刑者が文化や芸術などの教育改造に申し込んでいて、彼らは教育を受けながら中国の文化を感じ、中国の法治文明を展示する窓口となり、中華文化との交流のプラットフォームとなっている。

 上海青浦刑務所の外国人受刑者が収監されている八監区には、非常に優秀な人民警察官が集まっている。平均年齢は30代前半で、ほとんどが一つか二つの外国語に精通している。修士の学位を持つのは6人いて、さらにこのうち3人は海外から帰国した職員だ。上海交通大学や上海外国語大学などを卒業した優秀な人員も少なくない。彼らはどのように外国人受刑者を管理しているのだろう。

 コミュニケーションから始まる

 顧屾(コ·シェン)は警察官となって5年になる。華東理工大学の機械設計学科を卒業し、英語が得意で人と話をするのが好きだ。以前は公安局の国際協力処で110番の外国人に対応していたが、まさか上海青浦刑務所に来て自分の長所を発揮することになるとは思わなかった。彼は毎日英語の名言を収集して、外国人受刑者と共有している。「私たちの仕事はつまらなくて退屈だと思っている人がいるかもしれませんが、八監区は300平方メートルあり、40カ国以上からの受刑者がいますので、私たちの仕事はとても有意義だと思います」と語った。

 文化の違いから、中国の習慣でも外国人受刑者には分かりにくいこともある。刑務所は身だしなみに厳しく、ひげを生やしてはいけないと決められているが、ひげが自分の信仰だと考える受刑者もいる。また私服を持ち込むのは自分の権利だと主張する人もいる。イスラム教の信者はラマダーンの1ヶ月間は、日の出から日没までの間、飲食行為を断つ。しかし、刑務所では食事時間が決められている。受刑者の文化や習俗、宗教を尊重するために、特例措置が必要な場合は多い。

 もちろん、文化にも多くの共通点がある。「明月幾時有 把酒問青天(明月にはいつ会えるのか、酒杯を掲げて青天に問う)」の意味を説明する時、メロディーを通して翻訳すると、外国人でもあっても多くの受刑者がそこに共通する意味を理解し、郷愁を口にするという。

 外国人受刑者は朝と夜の訓練時間を利用して中国人と交流し、中国語の勉強に励んでいる。刑務所には中国語教室も設置されていて、ゼロから勉強を始めた受刑者でも、5年後には中国語を完全に使いこなすだけでなく、上海語の歌も覚えるようになる。中国語を話せるようになると漢字の書き方も学びたいという外国人受刑者もおり、顧警察官は「てん」「よこ」「はらい」といった基本的な筆画から授業を始めたそうだ。

 顧警察官に書籍とウェブサイトを紹介して、自分の故郷の風俗を理解させようとしたナイジェリア人受刑者がいた。顧警察官はそこで太った女性が人気があり、男性も太ってこそ尊厳があるということを初めて知った。顧警察官は、「彼らと接することがなければ私はその国のことを理解しようとしないでしょう。異文化のぶつかり合いには仕事のやりがいを感じます」と述べた。そして、「受刑者がどんなに良い人でも彼らは犯罪人である。受刑者がどんなに悪い人でも彼らは人間である」という言葉を胸に刻んで働いている。

 芸術の道

 新型コロナウイルスの感染が収束した後、青浦刑務所教学棟の3階にある講堂からは、また音楽が流れるようになった。講堂は一般的な劇場になっていて、舞台の上では小龍(仮名)が奔放なダンスを踊っている。彼は高額な報酬につられて、中国に麻薬を持ち込む手伝いを友達に承諾してしまった。中国の土地を踏んだのは初めてだったが、空港から出ることもなくそのまま刑務所に入れられた。彼を待っていたのは15年間の懲役だった。


 刑務所の教育の中で小龍は中国語と技術を勉強し、積極的に改造を受けた。彼は舞台でモノローグを言った。「『ふとした心得違いをして悔いを千載に残す』という言葉の意味が分かりました。私は積極的に改造して早く家に帰りたいです」と。これは新声芸術団のミュージカル『心路』のリハーサルだ。去年新しく発表されたこの作品の中で、多くの「小龍」が自分の心の道を語っている。

 高凡警察官はここに来たばかりだ。彼が芸術パフォーマンスが好きだと知り、芸術団の責任者である警察官が参加させてくれた。残業してシナリオを変えたり、歌を作ったり、出演者を決めたり、普段はとても忙しい。しかし、舞台に立った役者と観客が涙を浮かべているのを見ると、彼の胸には万感が迫ってくる。彼は、「彼らは受刑者ですが、真心をこめて演じることで心の中の真情を引き出しました。彼らが自己実現を果たしたことで、私たちも達成感を感じます」と述べた。

 ミュージカルといっても、歌のほかにダンスや朗読など様々な表現方法がある。警察は出演者を選ぶ時、懲役の長さ、性格、体の状況を考慮して、全体の枠組みを変えないようにしている。

 私たちは中国の警察官を代表する

 外国人犯罪者区域の副区長である斉文川警察官は、「私達の区域は対外展示の窓口です。一つ一つの言動が中国の刑務所システムの発展状況を代表しています。ですから私達は仕事の中でイメージに注意しなければなりません。上級官庁からの要求は高く、私達も自分に対して高い要求をしています」と述べた。彼は法律の執行基準が同じであるのは変わらないが、外国人犯罪者区域ではもっと細かく実施する必要があるとの方針を示している。斉警察官は、「私たちが代表するのは個人ではなく、中国の警察です」と述べた。

(実習編集:范応良)